中国EC大手「京東(JD.com)」が先日ショート動画「Kwai(快手)」との協業を発表した。消費者はKwai上で京東の商品を直接購入することができる。
ショート動画企業がECを通じて収益化を図る一方、EC企業はショート動画を通してユーザー誘致を行っている。中国ではこのようにECとショート動画が提携するケースが増えている。京東の他にもアリババ傘下のタオバオがTik Tokとも提携を結んだ。

京東がKwaiと提携、地方消費者向けの販売促進

京東とKwaiの協業は今回が初めてではない。2019年6月にKwaiは京東への接続リンクを設置している。当時消費者はKwaiの動画で紹介された京東の商品を購入する際、リンクを押すと京東の画面に直接飛べる仕組みだった。
今回の協業では、リンク経由ではなく、消費者がKwaiのアプリ内で購入決済を済ませることができ、両社の関係はいっそう深くなった。

Kwaiが保有する地方市場ユーザーは京東にとって大きな利益を与えてくれる存在なのだ。京東は近年EC新勢力「拼多多」の脅威を感じており、地方市場の開拓を積極的に行なっていた。そのため地方市場向けのECアプリ「京喜」を打ち出し、さらにwechatから「京喜」へのユーザー導入を図った。昨年のダブル11直前には元々wechat上に設置されていた京東のプラットフォームへのリンクが「京喜」に変わっていたのだ。
2019年Q4の決算報告書によると、京東の新規ユーザーのうち7割が地方ユーザーである。

▲Tik TokとKwaiのユーザー比較(出典:caasdata)

Kwaiは中国ショート動画分野ではTik Tok に次いで2番目に有名なアプリである。現在のDAU(一日あたりのアクティブユーザー数)は約3億人。国際的に知名度を持つTik Tokと異なり、Kwaiは中国地方市場のユーザーが多いのが特徴である。
リサーチ会社caasdataによると、Tik Tokのユーザーは全体の52%を1~2級都市のユーザーが占めている。一方Kwaiのユーザーは全体の65%を3~4級都市のユーザーが占めており、地方ユーザーが圧倒的に多い。

618セールを控え、Kwaiのライブコマース優位性を活用したい京東

熱気が溢れるライブコマースへは、EC企業だけでなくショート動画企業の市場参入も多い。2019年タオバオのライブコマース取引額(GMV)は2500億元で市場全体の58%を占める。Tik Tok は400億元、Kwaiは250億元でそれぞれ2、3位に並ぶ。

▲2019年中国ライブコマース市場シェア(出典:国泰君安证券)

京東もライブコマースを展開しているが、李佳琦や薇娅などトップクラスの配信者(KOL)を育てたタオバオと比べると、影響力のある配信者が1人もいない。
今回のKwaiとの提携を通じてKwaiの配信者がもたらす販売促進効果は大いに期待できる。京東は618セールの期間中にライブコマースの投入を増やし、30万回以上のライブ配信を行うと宣告している。

京東の支援でKwaiは商品の品質問題を改善

Kwaiは2018年から収益化の手段として、アプリのEC機能「快手小店」を打ち出した。さらに「辛有志」「散打哥」など人気な配信者を発掘し、売上を伸ばした。

しかしKwai上で販売する商品の多くは他のECサイトからだ。Kwai自身はこれら商品の品質を把握できていないため、偽物が出回り、返品ができないなどの問題が続出し、消費者からのクレームが寄せられた。
そんなKwaiにとって、京東のサプライチェーン、物流、カスタマサービス面の支援というあらゆる面でのサポートはこれらの問題解決、ユーザー体験の向上に大いに期待できる。

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