コロナが中国ライブコマース発展に火をつける
2016年からアリババのタオバオがライブコマース展開の先駆者となり、その後京東、蘇寧などのEC企業の他にも、TikTok、Kwai(快手)などのショート動画企業が相次いでライブコマースに進出した。2020年に入り、新型コロナ禍によるオフラインのマーケティング活動が困難となり、ライブコマースがさらに注目されるようになった。
中国商務部によると、第1四半期では業界全体で約400万回のライブコマースを行った。KOL(日本でいうインフルエンサー)がライブ配信を行うのが代表的だが、Ctripの董事長など企業のトップもライブ配信に出演し、自社商品のPRを行っている。
リサーチ会社のiiMedia Researchは2020年中国ライブコマース市場規模を9610億元だと予測している。
感染者が減っている中国では消費喚起効果で期待されたEC業界の大型セール「618セール」を盛り上げるため、中国EC各社がライブコマースを積極的に行っている。
天猫(Tmall)は300人以上のタレントのライブ配信への招待、京東(JD.com)は30万回以上のライブ配信を行うと宣告した。
▲消費者がライブコマースを利用する理由(出典:中国消費者協会)
2020年3月まででライブ配信の利用者数は5億6000万人に達し、中国人口の4割を占めている。消費者がライブコマースを利用する1番の理由が「商品のコスパの良さ」である。メーカーが普段より低価格に設定しKOLにその商品を紹介してもらうことで、KOLと消費者の間に生まれる信頼感が消費者の購買意欲を促進させる。
急速な発展に伴い、偽物商品、不十分なアフターサービスなどの問題多発
ライブコマースが急速に発展している反面、偽物商品やアフターサービスの不十分さなどの問題が露呈した。中国消費者協会が発表した調査結果で、37%の消費者がライブコマースを利用する際にこのようなトラブルに見舞われている。
Tik tok上の有名のKOL・羅永浩があるブランドの生花を宣伝したが、消費者の手元に届いたのは枯れた花だった。またタオバオのライブ配信の看板KOLである李佳琦(Austin)が、あるブランドのカニを宣伝する際カニの産地を間違えるミスを起こした。
ライブコマースを利用しない消費者の1番多く寄せられた理由が「商品品質の不安」だ。そして、直接手にとって見ることができないため購入後の「アフターサービス」に対する不安が2位に並んだ。KOLによる過度な商品宣伝、返品ができないなどの不安定な保証の多発はライブコマース業界の発展に不利に働いた。
▲消費者がライブコマースを利用しない理由(出典:中国消費者協会)
メーカーが自社ライブコマースを模索
ライブコマースは、利用したメーカーがKOLに高い宣伝費と手数料を払った上に普段より低い価格で商品を提供することで、一時的に大幅な売上成長を実現させた。
しかし低価格作戦を活用させすぎるとブランドイメージに悪影響を与えかねない。
低価格を理由に商品を購入した消費者のブランドへの愛着と忠誠信は低い。いざ安価というメリットがなくなれば、顧客離れは免れないのだ。
KOLの二極化が深刻化する中、一部のメーカーはトップKOLへの依存度を引き下げるために、自社のライブコマースを展開した。一時的な売上成長よりもブランディングを重要視した自社ライブコマースは今後さらに多くの企業に活用されるだろう。
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