BYTONが事業停止を発表、従業員に自宅待機を命ずる
中国新興電気自動車(EV)メーカーの「BYTON(拜腾:バイトン)」は7月1日から6ヶ月間の中国国内での事業を停止し、従業員に自宅待機させた上で、自主退職を促すことを発表した。資金調達がうまくいかなかった上に、新型コロナの影響を受け会社経営が困難になったことが要因である。
BYTONは2017年に創業し、南京を拠点に電気自動車の開発を展開してきた。今まで計4回の総額84億元(約1300億円)の資金調達に成功し、丸紅やテンセントを含めた数多くの有名企業の融資獲得で注目を浴びてきた。同社は2020年にモデルM-Byte SUVを量産に投ずる予定だったが、資金繰りが悪化し量産化は難航、賃金未払いなどのトラブルも発生した。
中国電気自動車業界の再編加速
▲2019年のCES・ASIAでの中国電気自動車メーカーのブースの賑やかな光景はまだ記憶に新しい(撮影:チャイトピ!)
中国では2014年からインターネット技術を電気自動車に活用するコンセプトを台頭に、電気自動車メーカーへ投資家達から熱い視線が向けられた。NIO(蔚来)や車和家(CHJ Automotive)などの有名なスタートアップらはみんなこの時期に創業している。しかし自動車の製造チェーンには大規模な資金が必要となっており、新興メーカーにとって持続的な資金調達が会社存続に大きく関係してくる。資金調達がうまくいかず、コンセプトカーを量産する直前で倒産に追い込まれる企業がいくつも存在するのだ。
▲中国電気自動車関連企業数と増加率(出典:天眼査)
リサーチ会社の「天眼査」によると、中国の電気自動車関連企業は14万社にものぼる。そのうち83%の企業が直近5年以内に創業したスタートアップだ。ピーク時の2016年に増加率は50%を超え、その後成長は鈍化し、2019年には31%までに下落した。今日までですでに約1万6000社が会社登記を抹消しており、業界の熱気は落ち着きを見せている。
数多くの企業が誕生する中、勝ち上がったのはNIOや車和家などのわずか数社である。その数社でさえ資金問題に悩まされている。「NIO」は去年資金難に陥り会社経営が懸念され、その後安徽省政府からの資金調達に成功し生き延びた。
また、米EV大手のテスラが中国で製造工場を建設し低価格で車販売を行う中国市場進出は、中国本土の新興メーカーにさらなる追い討ちをかけた。コロナの影響により世界規模で経済は落ち込み、1~5月中国電気自動車販売台数は前年より45%も減少した。そんな背景下でもテスラは中国市場での販売台数トップの座を手に入れた。1~5月テスラのモデル3の販売台数は3万台を突破しNIOの約3倍に当たる。
▲1~5月中国電気自動車販売台数トップ10のモデル(出典:CPCA)
“数多くの新興電気自動車メーカーのうち、最終的に生き残るのはわずか3社に過ぎない”と専門家は予測している。
近頃、注目を集めたBYTONから博郡(bordrin)などの業界下位メーカーまで、資金繰り悪化、賃金未払いトラブルといった否定的な報道が相次いでいる。
中国電気自動車の業界再編は加速しており、今後市場のリソースが一部のトップ企業に集中し、下位企業の存続はさらに厳しくなるだろう。
*アイキャッチ写真はBYTONのホームページより