NIOに次いで理想汽車が米市場でIPO
中国新興電気自動車(EV)メーカーの「理想汽車(LEADING IDEAL)」は10日、米市場での上場申請を提出した。IPOにより最大1億米ドル(約106億円)の資金調達を目指す。成功すれば「NIO(蔚来)」に次いで米市場でIPOを果たした中国新興EVメーカーの第2社となる。
今年、コロナ禍の影響を受けたにも関わらず、市場は電気自動車業界に積極的な反応を示した。テスラの時価総額がトヨタを超え、世界自動車メーカー首位の快挙を果たし、NIOの株価も安定した上昇を見せる中で理想汽車は比較的恵まれたIPO環境だった。
理想汽車(旧社名:車和家)は電気自動車創業ラッシュ最中の2015年に創業された。最初は家庭用小型電気自動車SEVの開発をしていたが、市場環境と政策変化でSUVの開発へと戦略転換した。2019年には初めて量産モデル「理想ONE」の発売を開始した。
理想汽車の目論見書によると、創業者の李想は25.1%の自社株を所持しており、70.3%の議決権を持っている。
フードデリバリーやO2Oサービスを展開する「美団(meituan)」の董事長王興氏とその関連会社は23.5%の株を所有し9.3%の議決権を持つ第2位の株主である。
理想汽車は2019年に美団から投資を受けており、2020年6月にはさらなる追加投資を獲得した。
ハイブリッド車開発に注力する理想汽車の懸念
テスラやNIOなどEVメーカーが採用している純電気動力と異なり、理想汽車はガソリンと電気の混合車の開発を展開してきた。中国の充電スタンドの整備不足に加え、電気自動車開発にかかる高いコストは理想汽車がハイブリッドを選んだ要因である。関係データによると、2019年までの中国1線都市において充電設備を設置できる駐車スペースを持つ家庭は25%に及ばなかった。一方アメリカは70%を超えた。
開発コストが比較的低いため、理想汽車の損益状況はNIOより良いが、環境志向の高まりでEV市場の拡大が見込まれるなか、ハイブリッド車の将来に対して投資家達は懸念を生じている。北京市ではエコカー専用のナンバープレートはEVのみ申請できる。そのため理想汽車の量産モデル「理想ONE」はガソリン車のナンバープレートを使用する他ないのだ。エコカーへの補助政策も適用されず、消費者の車購入に影響を与えてしまう。
さらに、中国政府は近年充電スタンドの建設を支援しており、充電問題が解決すれば、ハイブリッド車の需要が減少する可能性は極めて高い。
NIOより先に粗利率プラス転換を実現
赤字状態が続いていたが、2020年Q1では理想汽車の粗利率が8%と、初めてプラス転換を果たした。納車台数ではNIOとまだ差があるが、粗利率のプラス転換はNIOより先に実現させた。さらに、NIOが上場前の2017年に50億元の赤字を出している一方、理想汽車は2018年から2019年の2年間に及ぶ赤字額を40億元に抑えている。
好調な成長見せる理想汽車とは対照的に、中国電気自動車業界では「バイトン(BYTON)」が事業停止を発表するなど、複数のメーカーが資金繰り悪化、量産化の難航に陥り、経営危機に直面している。
NIO、理想汽車、威马(WM Motor)、小鹏(xiaopeng)の4社が資金を確保しなんとか生き延びているが、今後この4社の競争は激化することだろう。
*アイキャッチ写真は理想汽車のホームページより
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