毎年「国際消費者権益デー」である3月15日に放送される中国国営テレビ番組「中国315晩会」が今年は新型コロナの理由により延期され、7月16日に放送された。
消費者権利を侵害したとして、ナイキやアップル、マクドナルドを含めた数多くの国内外の有名企業が名指しで取り上げられた。日系企業としては「無印」が2017年に商品の原産地問題で取り上げられている。「315晩会」が世論形成に与える影響力は大きく、報道された企業が数時間以内に謝罪声明を出すのはごく一般的なことである。
今年はライブコマース業界の誇大広告やサクラによる売上水増しなどの問題が取り上げられると言われていたが、結果的にEC業界に対する報道はなく、食品や自動車などの伝統のある老舗企業が多く取り上げられた。具体的に以下9つの事例が報道された。
- 山東省のナマコ養殖企業が養殖池に大量の殺虫剤投入
- 「バーガーキング」が消費期限切れのパンを使用
- 河北省のタオル製造企業が回収した靴下や下着などをタオルの原材料に利用
- 上海の「宝駿自動車」の新車の変速機故障
- 「万科不動産」の新築住宅の水漏れ
- 美容院が無料体験を餌に消費者に高いコースを買わせる
- ニュースアプリの「趣頭条」が誇大広告やギャンブル広告を掲載
- スマホアプリによるユーザーデータの違法収集
- オンライン教育の「嗨学網」の料金払い戻し問題
今回報道された事例の中でも最もSNSで話題となったのが「バーガーキング」の食品安全問題だ。店員が消費期限切れの食材を使用したハンバーガーを消費者に提供している現場の潜入取材は視聴者に大きなインパクトを与えた。
バーガーキンングは2005年に中国市場に進出し、2018年時点での店舗数は1000を超え、2021年までにさらに1000店増やす計画を公表していた。315晩会で批判を浴びた後、バーガーキングは問題が発生したのが加盟店舗であったため、管理不足が原因だと認め謝罪声明を発表した。しかし加盟店に責任を押し付けるような意図が感じられたこの声明に中国消費者の不満の声が上がった。
また、ナスダックで上場している中国ニュースアプリ「趣頭条(Qutoutiao)」が広告問題で報道され株価が激落した。「ニュースを読むだけで稼げる」と称して、地方都市を中心にユーザー獲得に成功した趣頭条は、ニュース配信業界の拼多多(pinduoduo)と呼ばれていた。しかし拼多多は上場後株価が安定成長し、時価総額がEC大手の「京東(JD)」を抜いて中国第4位のインターネット企業となる快挙を挙げたのとは対照的に、趣頭条は成長鈍化に悩まされ、株価も低迷していた。
315晩会の放送後、趣頭条はアンドロイドのアプリストアから締め出され、株価もさらに激落した。
▲2010~2019年315晩会で取り上げられた事例の分布
2010~2019年の315晩会で取り上げられた消費者の利益を侵害する企業の事例として、「品質問題」「偽物販売」「誇大広告」「プライバシー侵害」といったものが多い。そのうち品質問題が全体の28%を占め最も多かった。
過去の当番組では外資企業を叩くケースが多かった。近年そのような偏った内容は減少していたが、今回の315晩会で報道された事例の中でも米企業バーガーキングの報道は特に注目を集めた。このような現象に至った原因として米中対立の激化が背景にあると指摘された。
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