米中対立が激化する中、中国発の人気動画アプリTik Tokは米政府から個人情報流出の懸念を理由に利用禁止の強硬策を検討されている。一方では米国にいる6500万人もの利用者からの反発リスクを避けるためか、トランプ大統領は9月15日までに米企業による買収を容認すると表明した。
アメリカ政府が中国企業を締め出すのはファーウェイについで2社目となる。しかしTik Tokの件では、中国政府がすでに前から米国発のフェイスブックやユーチューブ、グーグルの検索サービスの国内利用を禁止しており、ネット分野で反発するための措置が少ないと見られる。
Tik Tokの運営会社である「バイトダンス(字节跳动/ByteDance)」にとって、米国での利用を禁止されるか、米企業に現地事業を売却するか、どちらの選択肢をとっても会社のグローバル的発展計画には大きなダメージである。インド市場でもすでに利用を禁止されており、米国市場までも失ったら、バイトダンスはこれからの成長戦略を見直さなければならない。
バイトダンス海外事業の現状
国内市場で事業を成長させてから海外市場へ進出する一般的な中国企業と異なり、バイトダンスは会社成立当初から海外市場を重要視していた。2016年に中国で「抖音(Tik Tokの中国版)」をリリースすると、2017年には海外市場進出を始めた。アメリカ、日本、韓国、インド、ブラジルなど複数の国でTik Tokをリリースしたのだ。瞬く間に若者の間で流行し、急速な発展でユーザーを増やした。何度もアプリストアのDL数ランキングのトップをとっている。
2020年に入り新型コロナウイルスの世界的蔓延により、人々の在宅時間が増えオンラインエンターティメントが急成長した。Tik TokはQ1で3億以上のDL数を獲得し、DL数世界最大のアプリとなった。現在Tik Tokは100ヵ国以上の国でサービスを提供しており、総DL数は20億回を超えている。
▲2020年上半期Tik Tok海外市場DL数割合(出典:Sensor Tower)
▲2020年6月Tik Tokと抖音の収益割合(広告収益除く)(出典:Sensor Tower)
米調査会社「Sensor Tower 」によると、Tik Tokの2020年上半期のDL数は前年同期より88.7%急増した。そのうち、インド市場が全体の27.5%を占めており、Tik Tokにとって最大の海外市場であった。次いでブラジルとアメリカが9.6%、8.2%でそれぞれ2位、3位に並ぶ。
収益別でみると、2020年6月の89%の収益は中国版の「抖音」が貢献している。アメリカ市場は6%の収益を貢献しており2番目の市場となる。
利用禁止されたインド市場、売却か利用禁止の選択に迫られているアメリカ市場はバイトダンスにとって最も重要な海外市場である。収益貢献度からみると、利用禁止され全体収益への影響が限られるが、グローバル発展計画が挫折してしまえばバイトダンスの評価額への影響が著しく大きいと見られる。
中国国内と欧州市場へ注力か
インド、米市場の他にも、Tik Tokは14歳以下の利用者のデータ収集で韓国政府に罰金を科され、低俗動画の配信でインドネシアに一時的に利用を禁止された。海外市場で大いなる成長をしているが、現地政府による規制など課題が多い。
CEOの張一鳴氏は近頃内部メールで心境を語った。米事業を売却するプレッシャーを認めながらもあらゆる可能性のある解決案を模索することと、Tik Tokを諦めたくない気持ちを表明した。
ブルームバーグの報道によると、ドイツとフランス政府はTik Tokを禁止する計画はないようだ。ロイターの報道によると、バイトダンスはTik Tokの運営本部を北京からロンドンに移す計画だ。この報道に対して、バイトダンスもアメリカ以外の主要市場でTik Tok運営本部を建設することを検討していると表明している。
また、バイトダンスは中国事業の拡大に注力すると投資家達に表明した。具体的には新しい分野で新しいアプリを開発する計画だ。バイトダンスの中国国内収益は「抖音」と「今日頭条」の広告収益がメインであった。
中国経済減速による広告主の予算削減の背景がある今、バイトダンスは広告以外の収益源の模索に努めている。特にECとオンラインゲームの2つの方向で可能性を見出そうとしている。中国版Tik Tokである「抖音」はEC機能もあり、ライブコマース分野でGMV(取引額)2位のプラットフォームまでに成長した。さらに、モバイル分野で最も収益の多いゲーム市場への参入に備えている。その為オンラインゲーム開発部門を立ち上げ、人材採用を積極的に行っている。
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