中国ゲーム最大手のテンセントが近頃、ゲーム動画配信プラットフォーム「Huya(虎牙)」と「Douyu(闘魚)」間での株式交換による合併を提案した。筆頭株主が両社共にテンセントであり、以前からこの両社の合併は時間の問題だと言われてきた。両社合わせて8割の市場シェアを持つHuyaとDouyuの合併により、3億ユーザーを持つゲーム動画配信の新大手の誕生が期待されている。
テンセントは現在 Huya 株式の36.9%、議決権50.9%を、Douyu 株式の38%、議決権38%を保有している。

▲Huyaの超人気配信者の実況配信画面(チャイトピ!よりキャプチャー)

合併による競争コスト削減

近年の中国ゲーム業界の発展に伴い、2013年からゲーム動画配信業界は成長を見せており、たくさんの配信プラットフォームが誕生した。厳しい競争下のもと、「pandaTV」や「触手(chushou)」など2階級の企業は倒産またはサービス停止に追い込まれた。テンセントの支援を得たHuyaは46%、Douyuは37%の市場シェアを占めトップ2プレイヤーにまで成長した。
新型コロナによる巣ごもり消費の成長でゲーム業界は一段と注目を浴びた。HuyaとDouyuは第二四半期の売上では前年同期比伸び率30%を超えていずれも好調な業績を出した。

▲中国ゲーム動画配信市場シェア(出典:Mob研究院)

中国ゲーム動画配信業界では、以前から人気配信者を巡る引き抜き合戦が多発した。人気配信者がもたらす利用者成長を狙い、プラットフォームが手厚いお金で配信者を勧誘する。HuyaとDouyuの合併によりこのような同業競争コストを削減させ、利益を引き上げる狙いがある。

bilibiliと快手がゲーム動画配信に参入、後ろにテンセントのゲーム布石

後発者として、アニメ配信サイトからの多角化発展を図る「bilibili(哔哩哔哩)」、中国ショート動画2番手の「快手(Kwai)」がゲーム動画配信業界に参入した。この両者は後発者とは言えど、得意分野で抱える多くの利用者をゲーム動画配信に誘導することが可能であるため、HuyaとDouyuにとって無視できない脅威である。

bilibiliは資金を惜しまず人気ゲーム競技の独占放送権を取得し、ゲーム動画配信へ注力している。一方で、快手は今年5月まででゲーム動画配信のMAU(月間アクティブユーザー数)が2億2000万人達成したと発表しており、利用者ではHuyaとDouyuを上回る。

bilibiliと快手はゲーム動画配信分野ではHuyaとDouyuの競合とはいえ、同じくテンセントの出資を受けているため、テンセントが主導する巨大ゲーム圏に含まれる。
「王者栄耀(オナー・オブ・キングス)」や「PUBG モバイル(和平精英)」など人気タイトルを持つテンセントの著作権授与はこれらのゲーム動画配信プラットフォームの存続に関わるため、テンセントと親しい関係を維持するプラットフォームが多い。

▲中国ゲーム業界勢力図(チャイトピ!作成)

また、テンセントにライバル視されるTik Tokの運営会社「バイトダンス(字节跳动)」も近年、ゲーム市場進出に積極的だ。すでにカジュアルゲームを出しており、絶対的であったテンセントのゲーム市場王者の奪取に挑んでいる。
バイトダンス傘下の動画アプリ「西瓜視頻」は以前、テンセントの人気ゲームを配信したことで起訴され、関連動画配信が禁止された。その後バイトダンスは自社ゲーム開発に挑んだ。北京、上海など4都市でゲーム開発チームを成立し、大規模な人材採用を行っている。
今回の一件はこのようなバイトダンスの攻勢に備え、テンセントが自身の地位を固めにいった狙いもあるのだ。