中国EC第2位の京東(JD.com)が8月16日にオンライン旅行最大手携程(シエチェン/国際版:Trip.com)と戦略パートナシップを締結した。両社はユーザー誘導、販売ルート、マーケティング、ECなどの分野で協業する。これから8か月以内に携程の旅行サービスが京東公式サイトで登場し販売される予定だ。
今回の協業について、京東は「京東は携程に800万のクライアントと4億の消費者ユーザーをもたらす一方、京東の業容拡大にあたって旅行分野での布石を強化できる」とコメントした。
京東の旅行分野への投資拡大
京東は2014年に中国オンライン旅行サービス「途牛(tuniu)」に出資し筆頭株主となり、旅行分野への投資を開始させていた。しかし途牛は2014年米ナスダックで上場して以降6年間、赤字経営が続いた。2019年の年間損失額は6億9500万元にのぼり前年より損失額が274%拡大したのだ。現在も株価は激落しており上場廃止寸前の状態である。
途牛への投資失敗後も京東は旅行分野への野心を諦めず、2020年4月に北京に拠点を置く旅行会社「凯撒旅游(caissa)」に出資すると同時に、京東が保有していた途牛の株式を同社に売却した。取引の完成により京東は「凯撒旅游」の第3位の株主になる。
また、東南アジア最大のオンライン旅行企業「Traveloka」にも出資しており、海外の旅行分野での影響力も強めている。
他社への出資以外にも2019年に京東は旅行子会社を創立した。しかし京東はアリババの「Fliggy(飞猪)」のような独自の旅行プラットフォームの育成には成功していない。中国オンライン旅行市場シェアは大手らに占拠されており事業の壁が高い状況下、業界最大手の携程と協業するのは1つの良い選択肢である。
▲2019年中国旅行関連アプリのMAU数(出典:iimedia )
2019年5月の利用者数データによると、携程のMAU(月間アクティブユーザー数)は7000万人で2位の「去哪儿旅行」と大差つけてトップに立つ。テンセントが支援する「同程旅游」とアリババのFliggyがそれぞれ3位、4位に並び、途牛が6位である。
業績回復に向けた携程の動き
新型コロナの感染拡大で中国旅行業界が悲鳴をあげている。アリババが支援する「百程旅行」を含め多くの旅行会社が倒産に追い込まれた。携程も損失を免れることなく、Q1では四半期ベースで過去最大の赤字を出した。厳しい局面に立たさせる中、董事長・梁建章氏は自らKOLデビューし、流行りのライブコマースを採用し自社商品のPRを行った。
▲梁建章氏のライブ配信画面(weiboより)
京東が所有する4億の消費者ユーザーは携程にとってかなり魅力的である。さらに中国は世界に先駆けて新型コロナウイルスの感染を抑え込みつつあり、7月から省を跨いだ団体旅行を解禁した。市場回復の傾向にある今、そのチャンスを掴むために携程は京東と手を組みことを決断した。