ライブコマース事業が急上昇しているDouyin(抖音、Tik Tokの中国版)は、10月9日からライブ配信にタオバオや京東、Tmallの商品リンクの貼り付けができなくなることを発表した。
今回のライブコマースの管理強化はDouyinの自社ECプラットフォームである「抖音小店」への出店を促し、自社EC事業を促進したい意図がある。

実際、Douyinとタオバオの提携関係の亀裂の兆候は以前から囁かれていた。
2019年末にDouyinは抖音小店をリリースし、様々な優遇措置を執り販売者に出店を促した。さらに今年8月からサードパーティ由来の商品には20%の手数料、抖音小店の商品には5%の手数料を徴収するという差別化を図り、タオバオ商品の制限を強化した。

▲Douyinライブで販売される商品、タオバオ由来(中)、抖音小店(右)
(チャイトピ!よりキャプチャー)

サードパーティへのユーザー誘導を取りやめ、Douyin内で取引完結

Douyinは2018年5月からタオバオと提携し、配信者がDouyinで商品を紹介し、視聴者が商品リンクをクリックすると、タオバオ店舗へ移動し商品を購入できる機能をリリースした。その後京東や蘇寧など他のECサイトの商品もDouyinの買い物リンクからアクセスできるようにした。

Douyinのライブ配信で販売される商品中、74%がタオバオ商品で、21%が抖音小店商品。残りの5%が京東やコアラ、蘇寧、VIPshop(唯品会)などのサイトの商品だ。タオバオ商品はDouyinで販売される商品全体のおよそ7割以上を占めており、主要なサードパーティ由来の商品リンクである。

▲Douyinで販売される商品サードパティ由来の割合(出典:CAASDATA)

中国のライブコマースは近年急成長しており、新型コロナウイルスの期間中でより多くの企業に活用されさらなる成長期を迎えた。現在、有力のライブコマースプラットフォーム「タオバオライブ」をはじめとするEC企業と、Douyinや快手をはじめとする動画サイトの2勢力に分けられる。
当初EC経験のなかったDouyinはタオバオへユーザーを誘導する形でライブコマースを始めたが、サプライチェーンの構築に力入れ自社EC事業の模索をしてきた。そして今回ついにタオバオなどの他社サイトへのユーザー誘導を取りやめ、取引をDouyin内で完結させ、リソースを抖音小店に集中させることを決断した。

中国メディアの報道によると、Douyinは2020年のGMV(取引額)目標を2000億元と設定しており、(タオバオライブは2019年のGMVが2000億元突破したと発表している)ライブコマース分野でECの巨頭ともいえるアリババを追う決意が見られる。

EC分野ではまだ新人であるDouyin、タオバオ締め出しに懸念点も

しかし、Douyinが他社サイトへのユーザー誘導を取りやめることは、Douyin自身のECサービス整備への挑戦ともいえる。アリババや京東のサプライチェーン、物流、決済などのECインフラの備えと比べると、Douyinは動画アプリであり、ECビジネスに必要なサプライチェーン構築やアフターサービスの整備などの分野ではアリババより信用が劣っている。タオバオのリンクを削除することは、消費者離れを起こしかねない。

抖音小店は現在検索機能がなく、消費者は買い物リンクからしかアクセスできない状態だ。EC機能もタオバオより弱いため、販売者もタオバオ店舗運営をメインとし、Douyinをユーザー誘導のツールとして利用する者が多い。今回のポリシー変更でこれらの販売者がDouyinの利用を断念する可能性もある。