中国の代表的音楽配信プラットフォームといえば、テンセントミュージック傘下の「QQ音楽」、「Kugou音楽」、ネットイース傘下の「網易雲音楽(NetEase Cloud Music)」が挙げられる。
テンセントミュージックは世界三大レコード会社のUniversal Music Group、Warner Music Group、Sony Music Entertainmentと著作権提携をしており、中国音楽配信市場シェアの約7割を手に入れた。後発者である網易雲音楽は音楽コミュニティを構築し、「音楽+ソーシャル」の路線で一定のユーザーを獲得した。さらに2019年に網易雲音楽(NetEase Cloud Music)はアリババの投資を受け、アリババ傘下の「xiami音楽(虾米音楽)」と同一陣営となり、中国音楽配信市場に「テンセント」と「ネットイース+アリババ」の2大勢力が形成された。
一方、Tik Tokなどの音楽が重要な役割を果たすショートムービーアプリも音楽分野への進出を行い、中国の音楽配信市場に新たな革命を起こした。
中国音楽配信市場の現状
無料のネットサービスに慣れていた中国消費者は近年、音楽有料化を受け入れつつあり、音楽配信の市場環境が改善されてきている。
テンセントミュージックのQ2決算によると、音楽サービスの収益は前年より65%増加し、有料ユーザーの伸び率が50%を超え過去最高を記録した。
▲2019年12月中国音楽配信アプリのMAU(万人)(出典:iiMedia)
月間アクティブユーザー数をみると、テンセントミュージック傘下の「QQ音楽」、「Kugou音楽」と「kuwo音楽」がトップ3に名を連ねた。網易雲音楽が4位で、アリババのxiami音楽が5位に並ぶ。
テンセントは豊富な音楽コンテンツを目玉に、たくさんのユーザーを囲い込んだ。網易雲音楽も近年、著作権方面の不足を補うため、ジブリスタジオやUniversal Music Groupなどと提携関係を結んだ。
著作権を買い取ることでユーザーを増やしてきたものの、多額なコストとレコード会社との契約更新に至らない場合のユーザー離脱のリスクが高いのが難点だ。そのためテンセントやネットイースらは音楽製作者を支援し、オリジナル音楽作品を増やしている。
ショートムービーが音楽配信に参戦
近年、Tik Tok(中国版:抖音/douyin)、快手(kuaishou)などのショートムービーの急成長が音楽配信業界にも影響を与えている。Tik Tokで流れた音楽全曲を聞くためユーザーは音楽配信アプリを開く。Tik Tokで流行ったBGM(背景音楽)が音楽配信アプリの人気ランキング上位に上がることは珍しくない。
2019年テンセントミュージックが快手と提携、今年8月には網易雲音楽がTik Tokと提携し、ショートムービーによる音楽配信アプリへのユーザー誘導、音楽配信アプリによるショートムービーアプリへの良質な音楽提供の協業を図られた。
▲網易雲音楽ではTik Tok音楽ランキングが掲載されている
(チャイトピ!よりキャプチャー)
しかしTik Tokは網易雲音楽と協業する一方、自社の音楽配信展開も進めている。超人気歌手のJay Chou(周杰倫)と契約し、新曲とそのMVの配信権を取得したり、オリジナル音楽の製作者を支援するなど音楽分野へ注力している。
さらに、近日Tik Tokはアプリ内で全曲聞くことができる音楽機能の内部テストを行なっていると中国メディアに報道された。Tik Tokを一動画アプリから、音楽配信アプリ機能を備えた動画アプリへ進化させる方針なのだ。
今後の中国音楽配信市場ではショートムービーの参戦により業界再編が起き、動画アプリと音楽アプリの境界が薄れていくだろう。