フードデリバリーや口コミサイトなどを展開する「美団点評(MeituanDianping)」が社名を「美団(Meituan)」に変更する計画を発表した。
美団点評はO2Oサービスを展開する「美団」と「大衆点評」が2015年に合併し設立された会社である。5年経った現在では、大衆点評の存在感が薄れ、実質美団の管理チームが会社の経営権を握っている。世間も会社を「美団」と略称して呼んでいる。

社名変更の理由について、美団点評は統一された会社イメージを構築し、ユーザーの会社サービスへの認識強化と、「フード+プラットフォーム」の戦略に注力しながら新業態の模索を推進するためだと述べている。
美団点評は2019年にブランドカラーを黄色に変更し、主力のフードデリバリーサービスの色と統一させた。シェア自転車のmobike買収後も自転車の色をオレンジから黄色に変更した。

美団が主導権を握り、大衆点評が消滅

大衆点評は2003年、美団は2010年に設立した会社で、O2O業界で両社がトップ2位に勝ち上がっていたが、補助金作戦で美団は資金繰りが悪化、大衆点評も成長鈍化の課題に悩まされた。さらに百度とアリババらIT大手もO2O市場に進出してきた。そんな大きなプレッシャーの元、美団と大衆点評は2015年に合併に踏み出し、80%の市場シェアを持つ大手O2O会社を誕生させた。

合併当時、美団点評はダブルCEO制度を採用し、両社のトップである王興氏と張涛氏が共にCEOに就任、両社のサービスともに独立した運営を続けることを発表した。しかし2015年10月に張涛氏がCEOを退任し、会社管理層から姿を消した。張涛以外の大衆点評管理者の離職も相次いで、大衆点評の存在感はますます弱まった。
今回の社名変更により、大衆点評は完全に社名から姿を消し、今後は口コミサービス名として使用されていくことになる。

中国ネット企業の有名な合併案

▲中国ネット企業の合併案まとめ(チャイトピ!作成)

中国ネット企業業界では、美団点評の他にも複数のネット企業の合併案が発生した。
動画サイトのYouku(优酷)とTudou(土豆)は2012年に合併し、新しい会社「Youku Tudou Inc.(优酷土豆)」を設立した。米ナスダックで上場していたTudouは上場廃止した。YoukuとTudouの新会社の持ち株比率は71.5%:28.5%である。
両社は合併を通して一時的中国動画サイト市場シェア1位の座を手に入れたが、百度が支援するiQIYI、テンセント傘下の「テンセントビデオ(騰訊視頻)」など後発の動画サイトが良質なコンテンツを買い取り、ユーザーを囲い込むうちに、Youku Tudou Inc.は衰え、2015年にアリババに買収された。

配車サービス大手のDiDi(滴滴)もkuaidi(快的)と2015年に合併した。こちらもダブルCEO制度を採用し、各自サービスの独立した運営を続けると発表した。両者の合併により市場シェア9 割を占める配車サービス大手が誕生した。その後kuaidiのブランドは消滅し、DiDiが会社の主導権を握ることとなった。

生活情報サイトの「58同城」と「赶集網(ganji)」も2015年4月に合併し、ダブルCEO制度を採用したが、同年11月に赶集網のトップがCEOを退任し、中古車販売サイト「瓜子二手车」を起業した。

女性向けECサイトの蘑菇街(mogujie)と美丽说(meilishuo)は2016年1月に­­合併し、「美丽联合」という新会社を設立した。両社のサービスは酷似しており、競争コストを削減するため合併の道を選んだ。近年中国EC業界では、アリババ、京東の2大手の他に、小紅書や唯品会などのライバルが差別化戦略で一定のユーザーを獲得しており、美丽联合は没落しつつある。

2014~2016年の間で中国ネット企業の合併案が多発した。市場の飽和により新規顧客の獲得が困難になり、合併による競争コストの引き下げは会社にとって良い選択肢となる。しかしこれらの合併企業のほとんどが一社が主導権を取得し、もう一社は消滅している。
合併により、ネット企業の中で時価総額4位までに成長した美団点評のような巨大な企業も生まれれば、Youku Tudou Inc.のような成長が鈍化し他社に売却されるような企業も生まれる。市場環境が変化する中、中国ネット業界の勢力図も大きく変わっている。

 

関連記事はこちら:
デリバリーサービスelemeに注力、アリババが美団と攻防戦
美団の手数料値上げに苦情殺到、中国デリバリーの課題