新型にコロナを追い風、京東ヘルスがIPOへ
中国EC大手京東(JD.com)傘下のヘルスケア企業「京東ヘルス(京東健康/JD Health)」による香港証券取引所でのIPO計画が明らかになった。京東ヘルスはこれまでに合計18億ドルの資金を調達しており、フージワーフが発表した2020年世界ユニコーンランキングでは、500億元の評価額で35位に並んだ。
京東ヘルスはデジタル関連事業を展開する京東数科(JD Digits)、物流子会社の京東物流(JD Logistics)と共に京東グループ傘下の3大ユニコーンと呼ばれている。新型コロナを追い風にオンライン医療業界が急速な成長期を迎え、京東ヘルスはこのタイミングを期にIPOを決断した。
京東は2013年から保健品のネット販売を開始し医療・健康業界に足を踏み入れた。2016に医薬品EC事業を開始し、2019年に京東ヘルスを成立、子会社として独立した運営を始めた。現在は医薬品EC、オンライン医療、ヘルスケアサービスなどのサービスを提供している。2019年の収益規模は100億元を超え、黒字化を果たした。さらに今年には、コロナが感染拡大する中オンライン診療サービスを開始し、4月までの3ヶ月間で延べ1000万人がこのサービスを利用した。
中国オンライン医療市場の現状
中国は進む高齢化社会に伴い、医療関連需要が増えている。2018年から中国政府が関連政策を打ち出し、オンライン医療業界の発展を後押しした。新型コロナの世界的な感染拡大により、オンライン医療がさらに多くの注目を浴び、投資家から熱い視線を向けられた。
▲中国オンライン医療の利用者数と浸透率(出典:MOB研究院)
リサーチ会社のAnalysis易観が発表したデータによると、2019年中国オンライン医療の市場規模は1337億元にのぼり、2020年はコロナを追い風にさらに市場規模が伸びると予測されている。
MOB研究院のデータによると、利用者数が2019年4月の時点では約4500万人で、浸透率は6.6%に留まっている。中国オンライン医療の発展はまだまだ初期段階にあり、伸び代に期待ができる。
▲有力なオンライン医療プラットフォーム(チャイトピ!作成)
現在消費者向けのオンライン医療サービスは大まかにオンライン診療と医薬品ECの2種類に分けられる。
代表的な企業として、中国保険大手「平安保険」傘下の「平安好医生」やアリババ傘下の「アリヘルス」が挙げられる。平安好医生はオンライン診療から医薬品ECを展開し、中国オンライン医療業界の実力者である。アリヘルスはアリババが持つEC分野での優位性を生かし、医薬品のネット販売を展開している。
また、京東ヘルスはアリヘルスより業界進出は遅れたが、近年の成長は著しくアリヘルスより先に黒字化を実現させた。
▲アリヘルス(左)と京東ヘルス(右)の医薬品ECサービス
(チャイトピ!よりキャプチャー)
アリババや京東のほかにも、テンセントや百度などのIT大手もオンライン医療分野へ進出しており、市場競争は日々激しくなっている。新型コロナウイルスという予想外の出来事が業界発展に火をつけたが、アフターコロナのユーザー維持がこれから各企業が直面する課題である。