アリババがサンアートに追加投資、72%の株式取得
中国ECシェア1位のアリババが19日、大型スーパーを運営するサンアート(SUN ART/高鑫零售)に36億ドルの追加出資を行い、直接的、間接的に含めて出資比率を約72%に高めた。残りの株式も今後買い取る意向を発表している。これを受けサンアートの株価は一時的に30%高騰した。
▲サンアート傘下のブランド(ホームページより)
サンアートは「Auchan(欧尚)」や「RT-mart(大潤発)」といったブランド名の大型スーパーを運営しており、中国の232都市で486店舗を所有している。中国経営連鎖協会が売上を基準にランク付けした「2019年中国スーパーマーケットランキング」では、RT-martが2位、Auchanが14位と共に上位にランクインを果たした。
▲2019年中国スーパーチェーントップ15
(中国経営連鎖協会のデータに基づきチャイトピ作成)
アリババは2017年に初めてサンアートに投資し同社の26%の株式を取得した。これはアリババが提唱する「ニューリテール戦略」の一環だと注目を集めた。両社はリアル店舗のデジタル化、在庫共有などの各方面での協業を展開し、サンアートの店舗はアリババ系のデリバリーサービスeleme(餓了麼)やネットスーパー「天猫超市(Tmall Mart)」に登録した。
さらに2018年に両社は共同で海鮮食料品の即時配送サービス「淘鮮達」を打ち出した。現在同サービスはサンアート全店舗まで拡大している。
2020年上半期のサンアートの業績報告では、既存店売上高が前年同期比5.7%増加、会社の純利益は前年同期比16.8%増加し、デジタル化戦略の成果が現れ出している。
地域密着型の小売サービスがニューリテールの新たな着眼点に
中国のEC市場は世界中から注目を浴びるほど、毎年発展しているが、EC市場とオフライン市場との差はまだまだ大きい。2019年の中国EC小売額が社会消費財小売額を占める割合は24.7%に留まっている。ECの伸びが鈍化しつつある現状下、アリババや京東などEC大手はオフライン市場に目を向けた。
▲アリババのニューリテールの主要サービス(投資、買収、自社開発含)
(作成:チャイトピ!)
アリババは2016年にオンラインとオフラインの融合を果たし、リアル店舗の効率を高める「ニューリテール(新しい小売)」戦略を提出し、中国小売業界に新しい風を呼び込んだ。その後百貨店やスーパー、家具専門販売店への投資を行い、オフライン市場での影響力を強めてきたのだ。
また、個人経営の小規模小売店のデジタル化改造をサポートする「零售通(LST)」サービスを打ち出し、現在では全国150万店に導入された。
2020年に入り、新型コロナウイルスという予想外の出来事で消費者は在宅を余儀無くなれ、オンラインで食品や日用品を購入し、デリバリーで家に届けてくれるサービスの利用率が急増した。2019年に資金難で多くの企業が倒産に追い込まれた、海鮮食料品に特化した新型スーパー業界は予想外の発展期を迎えた。
新型コロナウイルスをきっかけに「半日内配送」、「一時間内配送」といった即時配送を展開する地域密着型小売サービスがEC大手の争点要因の1つとなっている。
今回アリババがサンアートを傘下に収めた事も、サンアートの強みであるサプライチェーンを地域密着型の小売事業に活用させる意図があるのだろう。
アリババは今年4月に、傘下の天猫超市事業グループを地域小売事業グループに格上げしたと報道された。さらに9月に天猫超市がelemeからでも利用できるようになり、アリババのニューリテール関連事業の統合が着々と進んでいる。