快手が香港で上場申請

中国国内ショート動画2位の快手(kuaishou、国際版:Kwai)が近日、上場に向け香港で目論見書を提出した。バイトダンスが国内版Tik Tokの douyin(抖音)上場を検討するこのタイミングで快手が先に動き出した。

ローエンド市場向け動画サービスというイメージが強く、将来性が懸念されていた快手だが、近年はライブコマース事業の成長が著しく、頻繁にメディアに取り上げられた。

▲快手の株主構成(出典:目論見書)

2011年に創業した快手は今までに9回も資金調達を果たし、2019年12月には評価額286億ドルにのぼった。投資会社にはテンセント、Sequoia Capital、バイドゥなど有名な会社が名を重ねた。そのうちテンセントは21%の株式を保有する大株主である。

主な収益源はライブ配信による課金

▲2017~2020年上半期・快手の売上推移(億元)
(出典:目論見書)

▲快手の収益構成(億元)
(出典:目論見書)

公開した目論見書のデータによると、直近3年の売り上げは年々伸びており、2020年上半期の売上が253億元で前年同期比48%増加した。
広告事業が主な収益源となっているDouyin(抖音)とは異なり、ユーザーがバーチャルアイテムを買って好きな配信者に送るいわゆる投げ銭課金のライブ配信が快手の収益の柱となっている。全体売上のうちの占める割合が高く、2017~2019年で95.3%、91.7%、80.4%と占めてきた。2020年上半期は68.5%までに下がったが、ライブ配信の投げ銭課金への依存度はまだまだ高いのだ。

売上は伸びているものの、快手は直近3年間、赤字経営が続いていた。2017~2019年の純損失はそれぞれ200億元、124億元、196億元である。さらに2020年上半期は680億元(調整後の赤字額は63億元)の巨額な赤字を出した。これについて快手は販売費の増加が赤字に繋がったと分析している。

快手はdouyin(抖音)より先にショート動画サービスを開始したが、後発のdouyin(抖音)が瞬く間に世界中でユーザーを獲得し、6億人(DAU)のユーザーを持つ巨大アプリに成長したのだ。そんなdouyin(抖音)の勢いをみて快手もユーザーを増やすKPIを設定しdouyin(抖音)を猛追した。快手は目論見書で今後も販売費を増やしていくことを想定している。

▲快手とdouyinのユーザー数(億人)
(公開資料に基づきチャイトピ!作成)

そんな快手の販売費の高騰は功を奏し、利用者数(DAU)は3億200万人に達した。さらに、アクティブユーザーの1日の平均利用時間は85分を超えており、動画のクリック回数やコメント数は1兆を超え、ユーザーエンゲージメントが高いことをアピールしている。

GMVが急成長するも、低いライブコマース事業売上への貢献度

収益化の手段を増やために快手は2018年にEC事業を開始した。動画アプリとしての優位性を生かしたライブコマース事業の成長が目立つ。
快手上のEC取引額(GMV)は2019年の596億元から2020年上半期には1096億元に急増した。GMVを基準にすると、快手はタオバオライブ(淘宝直播)に次いで第2位のライブコマースプラットフォームとなっている。

しかし一方、この高いGMVが快手の収益に繋げるかというとそうでもないようだ。2020年上半期のEC事業を含めた「その他サービスの収益」は8億元と、売上を占める割合はわずか3.2%だった。

収益源多様化の一環として、快手は今後も引き続きEC事業に注力していく姿勢を表明した。ライバルのDouyin(抖音)も今年6月にEC事業部を最高部門に昇格させるなど自社ECに力を入れている。ショート動画2強がライブコマース分野で対決するのは今後も注目である。

 

快手の目論見書原文はこちら:
https://www1.hkexnews.hk/app/sehk/2020/102806/documents/sehk20110501766_c.pdf

関連記事はこちら:
【TikTok・快手】中国ショート動画2強の戦略、ユーザー層を比較