EC大手が売上新記録を、ライブコマースが活躍
中国EC最大のセールイベント・ダブル11(独身の日)は中国でコロナウイルスが落ち着きつつある今年も盛り上がりを見せ、EC大手2社のアリババと京東それぞれが売上記録の塗り替えを発表した。
コロナ禍の影響により今年の売上が去年を超えることは困難だと懸念されていたが、アリババはセール期間を拡大させ、11月1日~11日を集計対象にした。累計取引額は4982億元(約7兆9184億円)で去年の11月1~11日の売上と比べ、26%増加したことを発表した。昨年のセール期間は11月11日のみで取引額は2684億元だった。
EC2位・京東の取引額は2715億元(約4兆3153億円)で前年同期比32%増加した。
▲EC3社の売上と成長率(チャイトピ!作成)
アリババによると、イベントのピーク時には58.3万/秒の注文数が殺到。2009年第1回ダブル11の1457倍であった。物流方面では、1日~11日の物流件数は23億件で、2010年の中国全国の物流件数に相当する。今回は物流会社が予約販売の商品を正式販売開始前に、購入者の住む場所付近の拠点に配送し、イベント開始後すぐに消費者の元に届ける措置をとり、殺到する注文による物流の圧力を緩和させた。
2年間も続いてきたこのイベントは注文処理能力、配達システムなど各方面で着実に進化している。
また、今回のダブル11でライブコマースが引き続き活躍を見せた。セール期間中に3億人の消費者がアリババのライブ配信プラットフォームであるタオバオライブ(淘宝直播)の配信を視聴。30を超えるライブ配信アカウントの合計取引額は1億元を突破した。トップKOLの李佳琦(Austin)と薇娅(viya)は予約販売でさえ一夜で合計70億元を売り上げSNSで話題となった。
アリババはライブコマースの最終取引額を公開していないが、天猫総裁の蒋凡氏は去年同期より大幅に増加したと発表している。
続く伸び率鈍化
▲アリババ・過去のダブル11取引額推移
(公開資料に基づきチャイトピ!作成)
年々増えている売上の傍ら、実は様々な課題も存在する。
アリババの過去の売上データを見てみると、近年のダブル11の成長が鈍化していることがわかる。伸び率は2010年の1772%から2019年には26%に降下した。今年は集計期間が拡大され過去の数字と比較することは難しいが、11日間の合計取引額が去年同期比26%という数字から見て、去年の数字とほとんど変わらず横ばいである。
また、ライブコマースが今年も最もホットなビジネス手法であったため、アリババや京東などのEC企業だけでなく、ライブコマース機能を実装したショート動画・Douyin(抖音)や快手もダブル11に参戦したことにより、業界競争は一層激化している。今回のダブル11のDouyin(抖音)の取引額(10月25日~11月11日)は187億元で、アリババと比べるとまだ規模は小さいが、今後の成長に注目だ。
政府による独占の規制強化で株価が急落
ダブル11が成功を見せる一方、中国市場監督管理総局がダブル11の直前にECプラットフォームの独占行為を規制する新たな草案を公開したことを受けアリババの株価は9.8%も急落した。
これにより、プラットフォームによる、出店者に複数サイトでの販売を規制する「二者択一」問題や、既存顧客に対する高い価格を設定するなどの問題が取り締まられた。
以前から多くのブランドがプラットフォームの「二者択一」行為を非難してきた。特にダブル11のような大型イベントの直前に「二者択一」行為は多発したようだ。しかし今後政府の規制強化でEC大手側の利益に影響することが懸念されている。
2009年にアリババが始めたダブル11は12年間も続いている大型イベントであり、アリババだけのものではなく、中国経済の指標とも言える。今後もこのイベントについてチャイトピ!は注目していきたい。
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