中国政府の市場監督監査総局が11月10日に、ネット企業への市場独占規制のガイドライン草案を発表した。草案の発表を受け、アリババやテンセント、京東、美団(meituan)などの中国ネット大手の株価が一斉に急落。規制強化が大手らの事業に影響を及ぼすのではないかという警戒が強まった。

この草案は、通販サイトなどのネット上のプラットフォームが市場支配権を乱用し、取引先に対して複数サイトでの販売を制限する「二者択一」問題や、既存顧客に対して価格を高く設定するなどの、現在注目されている問題が法律違反であることを明確に示している。

草案内容と規制強化の背景

同ガイドライン草案は中国政府直属で独占禁止法の執行機関である市場監督監査総局が既存の独占禁止法を元に作成しており、ネット経済分野を適用対象としている。その中でも特に、不公平な価格設定や限定取引、差別的待遇など市場支配権を乱用する複数の行為を挙げた。
以下が草案の一部を翻訳した内容である。

▲ガイドライン草案内容の一部
(チャイトピ!より中文翻訳、正確な内容は草案原文をご覧ください)

中国は2008年から「独占禁止法」を施行しているが、ネット業界の発展を推進するために政府は長年、寛容な監督管理態度を取ってきた。

しかし2020年頭に、「独占禁止法」の改正案が発表され、ネット企業の市場支配的地位判断の項目が追加された。今回のガイドライン草案はさらに規制内容を詳細化し、政府のネット企業への規制を強化する姿勢が明らかとなっている。

近年中国EC業界では、出店企業がプラットフォームから「二者択一」を強要されたり、消費者から各アカウントによって表示されている商品の価格が異なるなどの事件が多発し、ネット企業による独占行為に対する世間の注目が高まった。
今回のガイドライン草案はこうした行為を阻止する狙いがある。

「二者択一」による有名な事件として、2015年に中国EC2位の京東がアリババ傘下の天猫(Tmall)による「二者択一」行為を通報した件が挙げられる。さらにその後2017年にも、天猫が市場支配的地位を乱用したとして起訴を起こした。

他にオンライン旅行、ネット配車、フードデリバリーなどのプラットフォームでの利用者に対するデータ分析によって差別化した価格設定などの行為が複数報道されており、こちらも規制対象となる。

規制強化に協力的な姿勢を示す大手ら

ガイドライン草案に対して、複数のネット大手企業は協力的である。
アリババのCEO張勇氏は11月23日に行ったスピーチで、草案に対して「時宜にかなった必要なことである」、今後のネットプラットフォーム経済の発展についても「国家の政策と法律を積極的に学んで対応する」と述べた。
フードデリバリー大手の美団もQ3決算発表後の投資者電話会議の際、ガイドライン草案に対して「監督当局と積極的にコミュニケーションを取り、政策への理解を深め、監督要求に応じていく」と表明した。
他にもテンセントや京東などのネット大手も規制に対して支持的コメントを発表している。

同ガイドラインが今後施行されたとしても、ネット業界の特殊性と複雑性から見て、法律執行過程に様々な課題が存在するだろうと分析されている。しかし同ガイドラインの発表を受けネット大手らが自ら業務を改善していくことが予想できる。

ちなみに、ガイドライン草案発表後の11月26日、京東が天猫を起訴した案件が北京市高級人民法院による証拠検証の段階に入ったことが明らかになった。中国ECトップ2位のアリババと京東を巡るこの裁判は世間からの注目も高く、チャイトピ!も引き続き最新情報を更新していきます。

 

草案原文のダウンロードはこちら:
http://www.samr.gov.cn/hd/zjdc/202011/t20201109_323234.html