中国Z世代(1995~2009年生まれ)は約2億6000万人おり、2018年の全国人口の19%を占める。1981年以降生まれのミレニアル世代と比べ、Z世代は高速インターネット、スマートフォン、そしてSNSが当たり前のように存在する時代で育てられ、独特な価値観を持っている。彼らが成人を迎える年齢になる今、世界中のブランドが注目している。
既存のルールにとらわれず自身の個性をアピールし、自分の趣味に躊躇なくお金と時間を費やす彼らは中国の「ブラインドボックス経済」や「二次元経済」、「アイドル経済」の盛り上がりに助力している。テンセントが発表した調査レポートによると、中国のZ世代の平均月収は3501元(約55500円)で、全国の平均値である2344元(約37000円)を大幅に上回っている。さらに彼らはネットクレジットサービスなどを活用し、消費能力が日々成長している。
今回チャイトピは中国Z世代である女性、しゅさんに密着してみた。しゅさんは湖南省出身広州育ちの21歳。今年7月に大学を卒業し上海の会社に就職した。そんな彼女が使うアプリを分析し、中国Z世代の生活や消費実態を見ていこう。
スマホに入っている100弱のアプリ、かなり個性的なアプリも
▲しゅさんがよく利用するアプリ
しゅさんのスマホには95個のアプリが入っており、中国人の平均アプリインストール数(63個)を超えている。日常生活の中で頻繁に利用されるSNSアプリの他に、お水を飲む時間をアラームしてくれるような、かなり細かい需要に対応するアプリも入っている。また、同じカテゴリーのアプリを複数所持していたり、DL後1度しか利用したことのないアプリもある。
▲しゅさんのアプリ利用時間割合
しゅさんのアプリ使用習慣には以下の4つの特徴がある:
1、SNSとエンターテイメントに費やす時間が最も多い
しゅさんの平均スマホ使用時間は1日6時間、そのうちSNSアプリに費やす時間が全体の43%を占める。使用時間が最も長いのがwechatとweiboである。また、仕事用のチャットアプリとして钉钉(DingTalk)の利用時間も長い。
次に動画や音楽などのエンターテイメントアプリの利用時間が全体の24%を占める。Douyin(Tik Tokの中国版)に費やす時間は全体の18%を占める。他に韓国や日本のドラマを視聴するアプリも複数所持していた。
2、REDやweiboで情報をキャッチしタオバオで購入
Z世代が使うECアプリはミレニアル世代とさほど変わらない。しかしZ世代は直接ECアプリで欲しいものを検索するのではなく、RED(小紅書)や大衆点評などのアプリで情報を見て、最終的にタオバオ(淘宝/taobao)などのECアプリで購入するパターンが多い。彼らの購買行動にはKOL(インフルエンサー)のおすすめやユーザー口コミの影響が大きい。
▲フォローしているKOL(左図)のおすすめのスカートを購入したしゅさん(右図)
しゅさんもweiboで自分とスタイルや身長が似ているインフルエンサーをフォローし、その人たちがおすすめする服をタオバオのお店で購入する事が習慣化している。化粧品を買う時もRED上の配信者が書いた化粧品の使用レビューを閲覧してからECアプリで買うことが多い。REDとweiboはよくSNSアプリに分類されるが、若者にとっては買い物するための重要な情報ツールにもなっている。
3、安く買うために様々なアプリの価格を比較
しゅさんのスマホにはフードデリバリーを含め買い物関連アプリが23個も入っている。タオバオや京東、拼多多など中国主流のECアプリの他に、フリマアプリの「xianyu(闲鱼)」やスニーカー販売専門アプリ「得物(dewu)」、ポイントを集められるアプリ「一淘」も利用しているのだ。同じカテゴリーのアプリを複数インストールし、同じ商品の価格を比較し、安く買うのだ。
また、飲食関連アプリでは、eleme(餓了麼)と美団(meituan)で昼食を頼んだりしているが、ブランド独自のアプリで発行しているクーポンを目的に、KFCやスターバックス、火鍋チェーン「海底捞」などのブランド独自のアプリもあった。
旅行関連アプリも同様に、fliggyや携程(Trip.com)などのホテル予約から航空券販売までを展開する総合旅行アプリを入れる一方、航空券のキャンペーンを常にチェックできるように航空会社独自のアプリもあった。
4、とにかく写真加工が好き
Z世代はSNSの投稿や近況のアップデートを通じて自己表現することが習慣化しており、日々の出来事をwechatやweiboで投稿している。そしてそのために使用する写真は綺麗に加工されている。しゅさんは写真加工や美顔カメラアプリを10個も所持している。その中でも特に人気があるのは加工アプリ・醒图(シントゥー)と日本でも人気のある美顔カメラアプリ・轻颜相机(Ulike)である。数多くのフィルターやメイク補正、整形機能があるビューティーカメラが搭載されており、若者の間で流行っているのだ。
1ヶ月の給料の使い道
▲11月のしゅさんのアリペイ経由支出構成
95~99年生まれの社会に出たばかりのZ世代はまだ給料は高くないにもかかわらず、消費するお金は比較的多い。しゅさんも貯金ゼロで毎月の給料の半分をアリババのクレジットサービス「花唄(ANT CHECK LATER)」への支払い(約3000~5000元)に使っている。
11月のアリペイ消費統計を見ると、しゅさんは化粧品に最もお金を使っており、1010元(約16000円)もかかっている。次いで日用品、飲食と衣類に使ったお金がそれぞれ679(約10700円)、578(約9100円)、561元(約8900円)であった。化粧品などの肌に直接つけるものは単価800元(約12600円)でも買うそうだ。一方、洗剤やティッシュなど低単価の消耗品の場合、時間をかけて複数のアプリで価格を比較しクーポンも利用して、1元の差でも1番安いところで買う。
彼女の友達の多くも1998~2000年生まれで、学生か社会人になったばかりの子が多い。彼女たちのほとんどが一人っ子で楽観的に今の生活を楽しむ考え方を持つ人が多い。新しいものを受け入れやすく、好きなものに時間とお金を惜しまない。フィギュアやファッショントイなど、趣味に月1000元(約15800円)費やす女性もいる。
新たな消費の主役となりつつあるZ世代はこれから、企業がマーケティング活動をする上で無視できない大きな存在に成長していくだろう。