新型コロナで中国のテレワーク、オンライン教育企業が急成長

今年2月に中国で新型コロナウイルスの感染が拡大し、経済は大きな打撃を受けた。様々な業界が悲鳴をあげている一方、コロナにより前向きな影響を受けた企業も存在する。

テレワークの需要急増により関連サービスを提供するIT企業は急成長の時期を迎えた。リサーチ会社iiMedia Researchによると、2月中旬までで3億人あまりの中国人がテレワークを通して仕事を行なっていた。アリババとテンセントをはじめとする中国IT大手は早急に関連サービスの開発や機能追加を行った。そしてオフィスアプリの中で、アリババのDingTalkとテンセントのTencent Meetingが上位を独占している。

また学校が休校となり、家でのオンライン授業需要が急増し、「学而思」や「猿辅导」などのオンライン教育企業はもちろん、テンセントとアリババが提供するビデオ通信ツールも大量の学生ユーザーを獲得した。

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ラッキンコーヒーの不正会計が発覚、上場廃止に

今年4月に、中国コーヒーチェーンの「ラッキンコーヒー(瑞幸珈琲)」は2019年第2四半期から第4四半期にかけて、22億元(約339億円)の売上を水増ししていたと発表した。この不正会計の発覚によりラッキンコーヒーの株価は激落した。

lunkin coffeeの店舗(チャイトピ!2018年12月撮影)

lunkin coffeeの店舗(チャイトピ!2018年12月撮影)

ラッキンコーヒーは中国で店舗を増やし、スターバックスを脅かす勢いで拡大してきた。創業してまもない1年後に上場を果たしたことでも大きな話題となった。同社の不正会計の発覚により、米市場で上場する中国企業への信頼が揺らいだ。

6月に米ナスダックは同社の上場廃止を決定し、12月にラッキンコーヒーは米証券取引委員会(SEC)に1億8000万ドルを和解金として支払うことに合意した。

Tik Tokがインドで使用禁止に、米事業の買収は不透明

中国発の人気動画アプリTik Tokは6月にインド政府により、国家安全保障上の問題を理由にインド国内での使用を禁止された。その後アメリカ市場でも利用禁止か米企業への売却か、で選択を迫られた。しかし米大統領選の時期と重なったため買収案の行き先はいまだ不透明である。

新型コロナウイルスの世界的蔓延により、人々の在宅時間が増えオンラインエンターティメントが急成長した。Tik TokはQ1で3億以上のDL数を獲得し、DL数世界最大のアプリとなった。ユーザー数から見ると、インド市場はTik Tokにとって最大の海外市場であった。収益別でみると、アメリカ市場も6%の収益に貢献しており中国市場に次いで2番目の市場となる。収益貢献度から見ると、この2大市場の利用禁止の影響は限られているが、グローバル発展計画が挫折してしまえばバイトダンスの評価額への影響が著しく大きいと見られる。

ネット大手らが相次いで住宅地向け共同購入サービスに投資

住宅地向け共同購入サービスは中国ビジネス業界のホットな話題であり、投資家達から熱い視線を向けられている。同サービスは海鮮や果物、食料品を取り扱い、新型コロナ期間中の特需で急成長してきた。スマホで注文し30分で家まで届けてくれるため、一般のネット通販より物流の効率が高い。

ネット大手らの住宅地向け共同購入サービス展開(チャイトピ!作成)

今年6月からネット配車サービス・滴滴(DiDi)、EC大手・アリババ、京東、拼多多、フードデリバリーの美団などのネット大手らが相次いで市場参入を発表し、さらに業界を過熱させた。市場シェアを取るため大量の補助金を投入し、業界は価格競争に陥り、物議を及んだこともあった。

中国の国営新聞紙は「白菜、果物がもたらすユーザーを狙うことよりイノベーションに力を入れるべきではないか」とネット大手の行為を批判するようなコメントを出している。

新興EVメーカーの理想汽車と小鹏が上場

昨年、資金繰りの悪化が広がっていた中国電気自動車業界は2020年に入って情勢が変化し、なんとか生き延びた。2月にNIO(蔚来汽车)は安徽省の省都である合肥市の政府と提携協議を行い、合肥市に本部を建設すると共に、地元政府から100億元(約1567億円)の資金を調達した。NIOは資金不足という崖淵の状況下から立ち直ることができたのだ。

そして7月以降小鹏汽車(xiaopeng)と理想汽車LEADING IDEAL)が相次いで上場を果たした。さらに中国政府は2035年までにガソリン車全廃計画を発表し、エコカーの優遇がさらに進むことを受け、中国エコカー関連の株価は高騰、昨年上場し株価が低迷していたNIOも状況が一変し、BMWやゼネラル・モーターズなどを追い抜かし、世界自動車メーカー時価総額6位にまで躍り出た。

一方で、テスラの中国市場での値下げ販売は中国本土のEVメーカーに圧力をかける事態となっている。今後の資金の持続的確保、技術の向上などが中国新興EVメーカーらにとって大きな課題である。

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「世界最大のIPO」と期待されたアントグループのIPOが延期に

11月3日、アリババの関連会社でネット金融サービスを展開するアントグループはIPO寸前で中国当局に阻止された。同社の上場による調達額は350億ドル(約3.7兆億円)に達し、世界最大のIPOになると期待されたが、まさかのIPO延期に世界が驚いた。

アントは貸金業者と協力して、リスク管理ソフトウェアを用いた与信を行い、発生した利息収入の一定割合を自社の利益としている。月間アクティブユーザーが7億人を超える急速な拡大に当局は懸念を高めており、オンライン小口融資業者を対象とした一連の規制案を発表、アントのようなプラットフォームが貸し出し資金の30%以上を負担することを提案した。

当局の規制強化を受け、12月にアリペイはアリペイを通じて銀行に預金ができる個人向けのサービスを中止すると発表した。アリペイが提供するクレジットサービス「花呗」も近日、ユーザーの利用限度額を引き下げた。

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中国政府はネット大手の独占規制草案を発表

11月10日に、中国政府の市場管理監督総局はネット企業への市場独占規制のガイドライン草案を発表した。草案の発表を受け、アリババやテンセント、京東、美団(meituan)などの中国ネット大手の株価が一斉に急落。

草案では通販サイトなどのネット上のプラットフォームが市場支配権を乱用し、取引先に対して複数サイトでの販売を制限する「二者択一」問題や、既存顧客に対して価格を高く設定するなどの、現在注目されている問題が法律違反であることを明確に示している。

中国は2008年からすでに「独占禁止法」を施行しているが、ネット業界の発展を推進するために政府は長年、寛容な監督管理態度を取ってきた。しかし2020年頭に、「独占禁止法」の改正案を発表、ネット企業の市場支配的地位判断の項目が追加された。今回のガイドライン草案はさらに規制内容を詳細化し、政府のネット企業への規制を強化する姿勢が明らかとなっている。

🔗中国がネット大手への独占規制強化、アリババらが協力的な姿勢

ダブル11でEC大手らが新記録を、ライブコマースが活躍

中国EC最大のセールイベント・ダブル11(独身の日)が今年も盛り上がりを見せ、EC大手2社のアリババと京東それぞれが売上記録の塗り替えを発表した。

コロナ禍の影響により今年の売上が昨年を超えることは困難だと懸念されていたが、アリババはセール期間を拡大させ、11月1日~11日を集計対象にした。累計取引額は4982億元(約7兆9184億円)で昨年の11月1~11日の売上と比べ26%増加したことを発表した。昨年のセール期間は11月11日のみで取引額は2684億元だった。

2位の京東の取引額も2715億元(約4兆3153億円)で前年同期比32%増加した。

ライブコマースが今年も最もホットなビジネス手法であったため、アリババや京東などのEC企業だけでなく、ライブコマース機能を実装したショート動画・Douyin(抖音)や快手もダブル11に参戦したことにより、業界競争は一層激化している。今回のダブル11のDouyin(抖音)の取引額(10月25日~11月11日)は187億元で、アリババと比べるとまだ規模は小さいが、今後の成長に注目である。

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ファーウェイが低価格スマホブランド・honorを売却

11月17日に中国通信機器大手・ファーウェイ(華為/HUAWEI)は格安スマホブランド・honorを深セン市のIT会社「智信新」に売却したと正式に発表した。売却先は今年9月に深セン市政府の国有資産管理委員会とファーウェイ製品の代理販売会社によって設立されたIT会社である。

ファーウェイは2019年から米政府に部品禁輸制裁を下された。中国国内市場での販売は好調で全体の売上の成長を維持していたが、チップの在庫はどんどん少なくなり、スマホ事業は大きい挑戦に直面している。苦境に陥ったファーウェイはサブブランド・honorを売却することを決心した。

完美日記がIPOを果たす

中国人気コスメ・完美日記(Perfect Diary)を運営する「YATSEN(逸仙電商)」が11月19日に米SECで上場を果たした。初日の株価は高騰し、時価総額は122億ドルにのぼった。

YATSENは2016年に創業され、2017年に完美日記ブランドを打ち出した。RED(小紅書)などの若者の間で人気なネットコミュニティを利用したマーケティングが功を奏し、2019年のダブル11では国内外の有名老舗ブランドを打ち負かし、コスメカテゴリーの売上ランキング1位に輝いた。

2019年の完美日記の売上高は31億元で前年比377%激増した。一方で、販売費の高騰と研究開発の能力の弱さが懸念点である。

🔗人気コスメ・完美日記の運営会社が上場へ、目論見書を解析してみた

 


今回の2020年中国のビジネストレンドニュースはいかがでしたか?

今年は世界的に新型コロナウイルスの影響受け、ビジネスや生活の仕様が大きく様変わりしました。

来年はコロナも収束を迎え安定した日常が戻ってくることを願います。

チャイトピ!は来年も更なる有益な情報を皆様に届けられるよう精進致しますので、今後も何卒よろしくお願い致します。

では皆様、良いお年を!