中国ライブコマース業界が2019年から成長の軌道に乗り、2020年は新型コロナウイルスの感染により、より一層市場が拡大した。商品を生配信で紹介するライバーも、KOL(インフルエンサー)や人気タレントから企業家、地方政府の役員、中国国営テレビの看板アナウンサーにまで広がった。
拡大する中国ライブコマース市場
中国の経済成長の減速を受け、ブランドの広告支出規模も減少している。そのため従来の広告よりライブ配信やショート動画といった新しいマーケティング手法に注目が集まったのだ。
iresearchが公開したデータによると、2019年中国ライブコマースの流通額は4168億元となり、2020年は1兆元を超える見込みで、今後の5年間も成長していき、2025年には6兆元を超えると予測された。さらにライブコマースの売上が中国ネット通販小売総額を占める割合も2019年は4.2%、2020年には11.2%となり、2025年には23%に拡大していくと予測された。

2020年はコロナ禍で人々が在宅を余儀なくされ、ネットサービスはその恩恵を受け利用者数を伸ばした。2020年12月時点で中国のライブ配信利用者数は6億人に達した、その中でライブコマースの利用者数は3億8800万人でネット民の39.2%を占める。さらに、66.2%の利用者はライブコマースで商品を購入し、17.8%の利用者はライブコマースの消費金額が自身のネット通販消費額の3割を占める。

主なライブコマースアプリ
ライブコマースの産業チェーンはメーカー、プラットフォーム、ライバー、MCN(ライブコマースサービス提供)で構成される。
ライブコマースを提供するプラットフォームは主にECプラットフォームとコンテンツプラットフォームの2種類に分けられる。タオバオライブ(アリババ提供)、kuaishou(快手)、douyin(Tik Tokの中国版)3社が主なライブコマースアプリである。そのほか京東や拼多多などのEC大手やSNSアプリ・weiboもライブコマースサービスを展開している。
タオバオとdouyinのライブコマース利用者のうち6割以上が女性であるのと比べて、kuaishouの場合58%が男性ユーザーである。また、エリア別で見ると、3線都市以下のユーザーが全体を占める割合が4割を超えており、地方市場がライブコマースの重要市場となっている。


人気なライバー
ライブコマース展開には商品やサービスをライブで紹介するライバーの存在が重要である。ファンの多いKOL(インフルエンサー)のトップ達がもたらす売上はかなり驚異的である。2020年6~12月の売上トップライバー100のうち、タオバオライブとkuaishou上のインフルエンサーの数が圧倒的に多く、kuaishouは45人、タオバオライブは40人ランクインした。一方でDouyinは15人にとどまった。

さらに売上トップ10のうち、タオバオライブ、kuaishou、douyinのインフルエンサーはそれぞれ5人、4人、1人だった。
紹介商品はアパレルが首位 の多さ
ニュースで見ると、映画チケットから商用ロボットまでライブコマースで販売される商品の種類は幅広く、どんな商品でも販売可能というイメージが強いが、実際にどんな商品が販売されているかみてみよう。
アリババが行った調査では、ライブコマースで販売される商品の中でも、アパレルが圧倒的に多い。特に婦人服が全体の27.6%を占める。次いでカバン、食品、コスメがそれぞれ19.6%、19.6%、14.6%だった。

政府がライブコマース業界への監督強化
2020年中国ライブコマースが盛り上がりを見せた一方、裏では偽物販売、誇大表現など課題も存在する。そのため返品率も高く、業界全体の返品率は30%~40%にも達した。
中国政府はライブコマース業界の発展を推進しながら、監督強化もしている。2020年7月に中国広告協会は「ライブコマースマーケティング規範」を打ち出し、視聴者数や売上の水増し行為を禁止することを明確化した、さらにその後メディアを管轄する国家広電総局はライバーと視聴者の実名提示を要求した。2020年12月にはKuaishou上で有名なKOL・辛巴と彼のチームが偽物販売の容疑で当局から90万元の罰金と60日間の業務停止を命じられた。
コロナの収束と政府の監督強化により中国ライブコマース業界の熱気は落ち着き、市場の成長は減速すると見られる。
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