C2Mとは
C2MとはCustomer-to-Manufactoryの略で、製造者が消費者から直接注文を受けて商品を製造するビジネスモデルを指す。必要な量だけ生産し在庫を持たず、中間の流通プロセスを縮小できるメリットがある。
従来の小売業では、商品が生産から消費者の元に届くまでに代理販売店、小売店という流れがある。消費者が購入する商品の最終的な価格は工場を出た時の約5~6倍となる。完全なC2Mモデルであれば高品質商品の低価格購入が可能となるのだ。
ireseachが発表したデータによると、2018年中国C2M+F2Cの取引額は約175億元で、EC市場での浸透率はわずか4.1%だった。しかし2020年には420億元に拡大すると予測されており、市場の伸び代は大きい。
ここでC2MとF2Cとの違いを少し説明しておきたい。F2C(Factory to customer)とは「工場から消費者へ」という、工場で生産される商品を直接消費者に売るモデルで、取り扱い商品は低価格帯のモノが多い。
一方で、C2Mは単に商品を生産して消費者に売るのではなく、消費者需要に基づいで、必要な量だけを生産するため、製造業にとって大きいな変革となる。
中国の95後、00後の若い世代が消費の主力となりつつあり、個性を求める彼らの存在がC2Mの発展を促進している。
C2Mの現状と代表的事例
C2Mのコンセプトは中国ECプラットフォーム「必要商城」の創業者・毕勝が提出した。「必要商城」はC2Mのコンセプトを揚げたECプラットフォームである。コスメ、アパレル、デジタル製品、家具など多種多様な商品を提供している。製造会社は有名ブランドの商品を受託生産している会社ということを売りにしており、なおかつ値段も比較的安い。人気商品のシートマスクには「Decorteと同一原材料製造会社」と表示されており、10個79元で販売している。同商品の消費者レビュー数も17万を超えている。
また、中国EC大手も相次いでC2Mを展開している。アリババはC2M事業部を成立、2020年3月に「スーパー工場計画」を発表し、工場直販に特化したECアプリ「淘宝特価版」をリリースした。さらに消費者需要に基づきスマート製造プロジェクト「犀牛智造」を公開した。
京東(JD)は2018年から家電のC2Mを開始、ブランドのヒット商品開発を支援する。
拼多多(pinduoduo)は2018年に「新ブランド計画」を打ち出し、1000箇所の工場と消費者を繋げる支援を行う。
また、アパレル企業「量品(iOrder)」もC2Mの代表格企業である。同社は2015年に創業し、メンズファッションのオーダーメイドに特化している。同社には1000人の「サイズ測定員」がおり、お客さんの家に訪ね、身体やサイズ、好みなどのデータを収集し、その人の体に合わせた服装を作る。同社の董事長・朱家勇氏によると、以前の大量生産では納品期間が3~6ヶ月必要だったが、C2Mモデルを採用してことにより7~15日に抑えられるようになった。
一方で、同社にとって「サイズ測定員」の管理が課題である。新人のサイズ測定員が成果を出すまでに人脈、経験の積み重ねが重要なのだ。
中国で熱気溢れるライブコマースとC2Mの連携も話題を呼んだ。家庭用テキスタイルブランド・梦洁家纺(MENDALE)が2020年5月に有名なライバー薇娅(Viya)と提携を発表、薇娅がライブ配信で同社商品を販売するだけではなく、ファンのニーズを梦洁家纺に伝え、商品のデザインと品質管理を支援した。
課題
C2Mは流通プロセスを縮小し、消費者と製造者を直接繋げることによって流通全体のコストを削減し、パーソナライズされた商品提供が可能になるなどのメリットがあるが、完全なC2Mを実現するにはまだまだ時間が必要で、製造者のC2M転換にはいくつかの課題が存在する。
消費者の需要データ収集
C2Mは消費者の需要に応じて生産する。しかし製造側が消費者の需要データを得ることは現段階では難しい。製造者と消費者には直接的な接点がないのだ。アリババなどのEC大手は自社のB2Cビジネスを通して大量のユーザーデータを得られ、市場のトレンドを分析できるが、パーソナライズされた商品でないと消費者の支持を得ることが難しい。
柔軟な生産体制の構築
現在中国の製造業は大規模生産が特徴で、製造者が小ロット生産へ転換する事はリスクが高い。柔軟な生産体制の構築にはまだまだ時間を有する。
製造者の役割が急増
C2Mモデルが販売代理店、小売事業者のプロセスを削減したと同時に、製造者が開発、生産、物流、販売、アフターサービスなど一連の役割を担うことになり、裁量が大きいのだ。