中国国営テレビが毎年3月15日の「世界消費者権利デー」に合わせて放送しているテレビ番組「315晩会」で、日産自動車の高級車ブランド・インフィニティ(INFINITI)や米住宅設備大手「コーラー(Kohler)」、米自動車メーカー「フォード・モーター」などの大企業が名指しで報道された。
以下取り上げられた企業と事件のまとめ:
- 米住宅設備大手・コーラー(Kohler)、ドイツ自動車・BMW、イタリアのファッションブランドMax Maraが監視カメラを設置し、来店者の顔や個人情報を無断で収集
- 求人サイトの智联、前程无忧、猎聘が履歴書の個人情報を漏洩
- スマホ管理アプリ「手机管家pro」などがお年寄りのスマホ利用者を騙す
- UCブラウザ(アリババ傘下サービス)と360ブラウザ上の虚偽の医療広告
- 河北省青県の養殖場が赤身肉を増やすために羊に使用禁止の薬を飲ませる
- 広東省の工場が、廃棄した鉄筋を処理して新しい鉄筋として販売
- 高級腕時計の修理センターが小さな故障を誇張して顧客のお金を騙し取る
- 米自動車メーカーのフォード・モーターが車の設計上の欠陥を隠蔽し、修理代を顧客自身に払わせる
- 日産・インフィニティが顧客に対し、保証期間を伸ばす代わりに車のブレーキがきかないなどの故障をメディアにバラさないように契約させる
1991年から放送を開始した「315晩会」は企業の商品やサービス問題を暴き、世間に大きいな影響力を持っていた。以前から外資を叩くケースが多かったため世界中の企業が恐れる番組となった。報道された企業が報道から数時間以内に謝罪声明を出す事が一般的な流れとなっている。実際に、今回取り上げられた企業の1つであるインフィニティが「顧客に心からお詫びする」という声明を発表した。コーラーも直ちに監視カメラを取り外したと発表。求人サイト・智联、前程无忧、猎聘の3社もこぞってお詫びをし、指摘された問題を改善すると発表した。
一方で、中国政府は2021年の「政府活動報告」の中で、国内消費促進を今年の重要目標としている。今回の「315晩会」のテーマである「提振消费 从心开始(消費促進、心から始まる)」も消費促進を最終目的としていることが明らかである。
今回番組で取り上げられた個人情報の乱用や、以前から報告されていた虚偽広告、自動車故障など内容は消費者の消費意欲に大きなマイナスダメージを与えるような報道ではなかった。
現在消費者の苦情が特に急増しているライブコマース業界に関する直接的なマイナス報道は一切なく、番組の中でも市場監督管理局によるライブコマースを含めたEC業界管理強化の新たな規則を発表したという報道を行っただけであった。