2020年は新型コロナウイルスの感染拡大により、中国消費者のネットショッピング利用率がさらに増加した。在宅を余儀無くされ、人々は食品から生活用品に至るまでをネットで購入するようになった。これを機に「社区团购」というコミュニティ型共同購入ECモデルが急速に成長し、投資家達の注目を集めた。

コミュニティ型共同購入ECのビジネスモデル

コミュニティ型共同購入ECモデル(チャイトピ!作成)

2016年に湖南省を拠点とするコンビニチェーン「芙蓉興盛」が集客を目的とした、地元の人がスマホで共同購入し、店頭で商品を受け取るサービス「興盛優選」を始めた。コンビニ店長がグループリーダーとして近隣住民を集めたwechatグループを作ってお得な商品情報のシェアなどを行った。2020年、「興盛優選」は湖南省、湖北省、江西省にサービスを拡大し、GMV(流通額)は400億元に達すると見込まれた。

コミュニティ型共同購入ECはまとめ買いにより低価格で購入できるため、地方市場の消費者の間で人気を集めた。販売される商品は食料品や日用品などの低単価で購買頻度の高い商品である。

従来のECモデルと比べると、コミュニティ型共同購入ECは人間関係と信頼で市場を切り開くモデルで、グループリーダーの役割はかなり大きい。「興盛優選」の場合は自社のコンビニ店長がグループリーダーとして、集客と納品の役割を担う。また、副業でグループリーダーをやる人も存在し、住民が注文した商品をプラットフォームがリーダーの家に送り、翌日に住民が取りにいくパターンとなる。

地方市場での住宅密度は都会より低く、ECを展開するには物流のコストが高い。コミュニティ型共同購入ECモデルではグループリーダーの存在により、物流コストを大幅に削減できるメリットがある。

生鮮食品ECとの違い

コミュニティ型共同購入ECと生鮮食品ECの比較(チャイトピ!作成)

現在中国ではこのようなコミュニティを中心とする細分化されたEC市場の競争が激化している。生鮮食品ECも代表の1つであり、どのECも地域コミュニティの住民をターゲットに食品や日用品を提供している。

しかコミュニティ型共同購入ECが予約販売を行い、グループリーダーが注文を管理し、配達が翌日になるのと違い、生鮮食品ECはリアル店舗や消費者の近くに設置した小規模倉庫「前置倉庫」を展開し、配達時間を30~60分に抑えている。

都会でサービス展開している毎日優鮮、フーマーと比べ、コミュニティ型共同購入ECは地方部住民の買い物習慣の変革が期待できる。

ネット大手らが相次いで市場参入

ネット大手のコミュニティ型共同購入EC展開(チャイトピ!作成)

「興盛優選」を追う形で、「十薈団(nicetuan)」や「食享会」などのスタートアップもサービスを開始している。

2020年に入り新型コロナの恩恵を受け、コミュニティ型共同購入ECがさらに注目を集めたことによりる中国ネット大手のコミュニティ型共同購入ECへの参入が相次いだのだ。

アリババは「十薈団」に投資し、デリバリー大手・美団や総合EC・拼多多、ネット配車・滴滴は自社コミュニティ型共同購入ECブランドを打ち出した。

中国政府が監督を強化

コミュニティ型共同購入ECが盛り上がりを見せる中、ネットではこの新しいビジネスモデルのせいで個人の小売業者が仕事を失ったと批判の声も上がった。

中国規制当局の市場管理監督局は去年12月に、アリババ、テンセント、京東、美団、滴滴、拼多多6社を呼び行政指導会議を行い、価格ダンピングなどの行為を禁止する規則「9不得(9つの禁止)」を打ち出した。

ネット大手が市場シェアを獲得するために大規模な補助金を投入し、低価格販売で利用者を獲得し、ライバルを市場から排除した後に値上げをすることも国営新聞紙で批判された。

さらに2021年3月に、DiDiの「橙心優選」、拼多多の「多多買菜」、美団の「美団優選」、アリババが支援する「十薈団 」、テンセントが支援する「食享会」5社に対し、価格ダンピングによる総額650万元の罰金を科した。

また、コミュニティ型共同購入EC業界の売上水増し問題も報道されている。少なくとも6回の資金調達に成功し、業界の上位プレイヤーとも言える十薈団の、月間売上200万-2600万のスーパーリーダーが売上を水増したと報道された。

中国のコミュニティ型共同購入ECの発展はまだ初期段階にあり、ユーザーロイヤリティーの低さなど、課題はまだまだ多い。市場の可能性を切り開く、優位性を定着させるには時間がかかるだろう。

🔗中国EC大手がこぞって展開するC2Mビジネスモデルとその課題