中国最大の家電見本市・AWE「Appliance & Electronics World Expo 2021」が3月23日~25日の3日間、中国・上海で開催される。新型コロナウイルスの感染拡大により2年ぶりの開催となる。

2020年は新型コロナ禍で中国家電市場が打撃を受け、年間売上は8333億元で前年より6.5%減少した。アフターコロナの今、消費促進が家電市場の課題となっている。今回のAWEでは家電のスマート化、ハイエンド向け、細分化ニーズ対応、健康的、デザインが、ホットワードとなっている。

家電のスマート化進む、テレビのハイエンド市場狙い

ハイアールのスマートホーム(撮影:チャイトピ!)

近年AIとIoT技術が家電業界でも活用され、スマホ操作や音声指令に従って稼働する家電がたくさん登場した。中国家電大手のハイアール(海尔)はスマートホームを展示。エアコンや電子レンジなどの様々な家電をアプリ1つに繋げる。

SONYと京東が新型テレビを発表した(撮影:チャイトピ!)

SONYは中国EC2位の京東(JD)と連携して新型テレビのXR-X91Jを公開した。音も画質も拡張して没入感を高める新チップを搭載した。さらにゲーマー向けの「ゲームモード」では低遅延のゲーム体験ができる。同商品の開発には京東がビッグデータを提供し支援したという。

TCL(左)とハイセンス(右)の新型テレビ(撮影:チャイトピ!)

テレビのディスプレイを工夫するメーカーは少なくない。中国テレビ大手のTCLはミニLEDを採用した液晶テレビや、高い解像度の8Kテレビを発表した。同じくテレビ大手のハイセンス(Hisense)は「OLED+8K」のテレビを発表し正確でリアルな画質を追求している。

細分化したニーズへの対応

中国は家電大国とはいえ、近年家電市場の成長が鈍化しており、細分化されたニーズへの対応が新たな突破口とされている。ハイセンスとTCLが揃って打ち出した回転式テレビを見ればわかるだろう。この回転式テレビは映像内容が横型なのか縦型なのかによってディスプレイが回転して調節してくれる。Tik Tokなどの視聴にぴったりなのだ。ショート動画などの需要が高まり、スマホでの動画撮影が増え、縦型動画が増えている現代のニーズに特化したテレビである。

健康を追求

消費者の健康に対する意識が日に日に高まる中、家電メーカーもそれに合わせて商品開発を展開している。今回の展示会では健康と環境に関わる家電の展示がかなり増えてきて、全体の6分の1を占める。

新型コロナウイルスにより、空気清浄機のニーズも増えた。中国家電メーカーのGalanz(格兰仕)は空気除菌清浄機を公開。ハイアールなどのメーカーも複数の空気清浄機製品を出した。

ハイアールの空気浄化機(左)と糖分を減らせる炊飯器(右)(撮影:チャイトピ!)

また、健康意識が強まる中国では糖分摂取を控える食品や飲料も流行した。ハイアールは米の糖分を減らせる炊飯器を公開、消化澱粉の54%を減らし、ダイエットに有効だという。

デザインの工夫

中国消費の主力になる90後や95後の若者世代は個性を強調し、品質だけでなく、商品の外観に対する要求も高い。

HCKがコカコーラとコラボ(撮影:チャイトピ!)

冷蔵庫メーカーのHCK(哈士奇)はコカコーラやスポンジ・ボブとコラボし、おしゃれな小型冷蔵庫を打ち出した。前出のGalanzは「国潮」に合わせて赤い冷蔵庫、電子レンジ、オーブンのセットを打ち出した。

Galanzは「国潮」家電(撮影:チャイトピ!)

オンラインでの販売に注力

2020年中国家電市場の販売経路(出典:中国電子情報産業発展研究院)

中国電子情報産業発展研究院が発表したレポートによると、2020年は新型コロナ禍で中国の家電市場のリアル店舗の売上は4134億元で前年より21.13%減少した。一方でオンラインの売上は4199億元前年比14.48%増加し、初めてリアル店舗の売上を上回った。今後中国家電のオンライン販売がさらに伸びていくと見られる。

AUXのエアコン新製品(撮影:チャイトピ!)

実際、今回の展示会では、京東と連携して製品を発表するブランドが複数あった。SONYの他に、中国大手エアコンメーカーのAUX(奥克斯)も京東と協業し、新品エアコンを京東で発売する。

中国家電市場の成長が鈍化しつつあり、打開策としてメーカーらが商品のイノベーション、ユーザービリティの向上に注力している。販売経路もオンラインへ転換する傾向があり、今後の中国家電市場の動向に注目していきたい。

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