中国のライブコマース利用者数は2020年12月時点で3億8800万人にのぼり、そのうち66%の利用者がライブコマースを通して商品を購入した。コロナ禍が人気に火をつけた中国のライブコマース市場は盛り上がりを見せる一方、視聴者数や売上水増し、製品の品質問題、アフターサービスである返品や交換が保証されないなどの問題点も存在する。
ライブコマースへの消費者苦情が激増
中国の消費者クレームプラットフォーム「12315」では、2020年の1年間でライブ配信に対する苦情や報告が25,500件もあった。そのうちライブコマースへの苦情が8割を占め、前年より358%激増している。
中国消費者協会によると、消費者の苦情は主に以下の五つとなる:
1、誇張や誤った宣伝問題
製品の虚偽の説明や宣伝、製品の機能と有用性の誇張、重要な情報の回避、本物ではない製品の表示と販売、低品質製品の低価格での販売、約束された割引やプレゼントを果たさない、プラットフォームではなく個人間の支払いに誘導するなどである
2、一部の電子商取引事業者による、契約上の合意の履行の遅らせや拒否
故意的に注文をキャンセルしたり、商品の配送を拒否、表示とは違う商品の販売など
3、一部の電子商取引事業者がアフターサービスの義務を放棄
「7日間理由なしの返品可能」の規制や「3つの保証」義務の不履行など
4、オンラインショッピング契約に隠された不公正な条項
最初の登録またはソフトウェアの更新後、消費者は経営者の契約に同意する必要があり、同意しない場合はログインできない仕様になっていたりするため、契約の具体的な内容を完全に理解しないまま利用する消費者が存在する
5、個人情報漏洩や、販売店のプロモーションメッセージの煩わしさ
タオバオ上の有名なライバー李佳琦(Austin)がノンスティック フライパンを宣伝販売し、現場で機能を実験してみせる際、フライパンに卵がこびりついたり、Kuaishou(快手)上で有名なライバー辛巴のチームが砂糖水を燕の巣(中国で高級食材扱い)として宣伝販売したなど、トップ級のライバーによる「事故」が相次いだ。
ライブコマースでは、ライバー(インフルエンサー)やライブコマースの場を提供するプラットフォーム、メーカーなどといった多くの関係者が存在するが、消費者が購入した製品に問題が出た時、誰に責任を問うべきかは明確にされていない。
政府の管理の動向
中国政府は国内消費促進のため、ライブコマース業界の発展を支援する一方、消費者の苦情を受け、規制や監督を強化している。既存のEC法や広告法の他に、2020年からライブコマースを制限する新たな規則を打ち出した。
現在ライブコマース業界に適用する法律や規則は以下:
- 電子商取引法
- 消費者権利保護法
- 広告法
- ライブコマース営業行為規範
- ライブコマース監督管理指導意見
- ネット取引監督管理方法
この中の「ライブコマース監督管理指導意見」はライバーの実名登録を求める。「ネット取引監督管理方法」はプラットフォーム側の管理責任を明確にし、ライブコマースの映像を放送後3年以上保存することを義務付けた。
ライブコマース業界への法整備が整う傾向にあるが、法律の執行力や強制力の不十分さにより、実際の管理効果は低い可能性もある。それを含めて今後の中国ライブコマースの発展に注目して行きたい。