急成長する花西子

2019年から中国コスメが日本でも話題を呼んだ。美しいデザイン、発色の良さ、コスパの良さで人気を集めた。

代表的なブランドといえば、創業から4年で米市場に上場を果たしたPerfect Diary(完美日記)が挙げられるだろう。しかし、Perfect Diaryとほぼ同時期に創業したブランドの花西子(florasis)が今、Perfect Diaryを追い越す勢いで成長している。近日は資金調達と上場準備の動きが報道され、中国新興コスメ上場会社2社目となる可能性がニュースで取り上げられた。

2018~2021年花西子のバイドゥ検索指数推移

花西子は2017年に創業し、2018年の売上は4319万元にとどまったが、2019年の売上は11億元を突破し、25倍激増した。2020年の618セールではPerfect Diaryを超えてTmallコスメカテゴリー首位の座を手に入れた。

日本で起きた中国コスメブームにあやかり、2021年3月に日本上陸を果たし、アマゾンに出店した。人気商品の「同心錠口紅」が初日のアマゾン口紅カテゴリ売上ランキングのトップ3に入った。

花西子のアマゾンジャパン店舗

美しいデザインが特徴、「東方美」をアピール

花西子の製品は上品で高級感のあるデザインが特徴である。牡丹や鳥などが繊細に描かれたアイシャドウパレットと彫刻リップはその美しさから日本国内でも話題を呼んだ。アジア人の肌質に合わせ、アイテムのメイン成分はフラワーエッセンスと漢方薬エキスだと宣伝しており、「東方美」のコンセプトを強調している。広告塔に起用するモデルの杜鹃さんも中国古風な顔立ちと気質を醸し出しブランドのイメージにぴったりだ。同社は他にも中国風の歌を歌う実力派歌手の周深とコラボしブランドと同名の曲をリリースするなど「東方美」というブランドの独特なコンセプトを込めたマーケティグを展開してきた。

花西子の人気商品(weiboより)

値段も格安路線を走る他の中国コスメブランドと異なり、花西子の製品価格は欧米の高級ブランドよりは安いが、中国国産ブランドよりは高い。Perfect Diaryの口紅が50~100元で販売されているのと比較して、花西子の口紅定価は 100~200元で販売されている。

中国コスメKOLの李佳琦の紹介で人気急増

花西子がこれだけの人気を獲得したのには美しいデザインはもちろん、中国コスメKOLであり口紅王子と呼ばれる「Austin(李佳琦)」の貢献が大きい。2019年3月からAustinがライブ配信で花西子のパウダーを紹介し、さらに2019年9月に「花西子」の「首席推荐官(最高紹介責任者)」となり、ライブ配信での宣伝販売はもちろん、彫刻リップの広告にも出演した。

Austinがライブ配信で花西子の製品を紹介

関連データによると、2020年1月~7月の間で、Austinが行った118回のライブ配信のうち、45回が花西子の製品紹介であった。Austinの強い影響力が花西子に売上をもたらしたのだ。彼のライブ配信映像は録画されdouyinやタオバオなどのプラットフォームでも使われた。

急成長する裏に課題も

Perfect Diaryが上場後初の通年決算で27億元の巨額赤字を出し、販売費が売上の65%を占めたことから花西子も販売費高騰と商品の品質問題を懸念されている。

Perfect Diaryと同じく、花西子も過剰なマーケティングと製品の品質問題が露呈しているのだ。花西子は自社の工場を持っておらず、製造を他社に委託している。委託生産を採用してコストを削減できる一方、製品の品質管理が懸念されたのだ。ネットでは花西子の商品は見た目だけが綺麗で、使い勝手が悪いなどマイナスなユーザーレビューも流れている。

2020年1~7月花西子の新製品の販売数とAustinに紹介された回数(出典:品観)

また、Austinの紹介が花西子の売上増加をもたらしたが、その分Austinへの依存も経営リスクとなっている。2020年1月~7月の間に同社が発売した新製品のうち、Austinがライブ配信で紹介したパウダーの月販売数は26万に達したが、紹介してないメイク落としやアイシャドウの販売数は1000ぐらいにとどまっている。

オンラインのマーケティングに注力し有名KOLの影響力を生かして花西子は急成長を果たしたが、これらの課題をどう解決して行くか注目だ。