急拡大する中国の漢服、JK制服、ロリータ衣装市場
次の消費主力になる中国のZ世代は3.2億人もいる。個性を求め、自分の趣味にお金や時間を費やすZ世代の間では、中国民族伝統服装の「漢服」、日本のJK制服、ロリータの衣装流行り始めている。このような服を買う女性は「三坑少女」と呼ばれる。「坑」は「罠」のことで、いざ好きになるとどうしようもなくお金や時間を惜しまなくなる、というようなニュアンスで使われる。
もともとJK制服、漢服、ロリータの衣装は少しニッチ的な市場で、一部の若い女性の間で流行っているイメージだったが、2019年から人気が急上昇し市場規模が急拡大した。アリババのECモールタオバオ(淘宝)では過去1年間のJK制服、漢服、ロリータの衣装売上が100億元を超え、漢服の検索数はシャツを超えた。JK制服はタオバオが公開した「2020年10大商品」に選ばれ、2020年Q2の売上は前年同期より255%と急増している。
代表的なブランド
「三坑」市場の拡大に伴い、その需要に応じるメーカーも急増している。漢服ブランドは「十三余」、「重回汉唐」、JK制服ブランドは「兔缝缝」、ロリータ衣装ブランドは「樱洛芙」が代表的なブランドである。
30分で30万着のスカートを売った「兔缝缝」
JK制服ブランドの「兔缝缝」はweiboで145万フォロワー、タオバオで272万人ものファンを持つJK愛好者の間では有名なブランドである。2020年4月に出店したあるスカートは販売スタートから30分間で30万着も売れ、JK制服の売上記録を塗り変え、当時のSNSの急上昇話題に上がった。
同社はweiboで制服のデザインを募集しさらにそのデザインに対してファン投票を行なっている。最も投票数の高いデザインを生産に投入、各制服にはユニークな名前が付けられ、その独特な名前に惹かれるファンも多い。前出の30万着も売れたスカートの名前は「温柔一刀(優しい斬撃)」、他にも緑色のスカートには「森林来信(森林から来た手紙)」などと名付けられた。
同社は平均3ヶ月ごとに新商品を出しており、アパレル業界ではかなり遅いほうだ。しかしその代わり一つ一つの製品にユニーク感を作り出し、時間と数を限定して販売している。その希少性がファンの消費意欲を掻き立てている。同社の定価118元のスカートはダフ屋で200元に値上げて転売されるケースが多い。
リアル店舗を展開するスタートアップの「十二光年」
「三坑」業界では、オンラインのみで販売するブランドが多いが、最近リアル店舗を展開するブランドも生まれた。
「十二光年」は2020年に創業しまだ社歴は浅いが、テンセントやSequoia Chinaからの投資を獲得し注目を集めた。JK制服、漢服、ロリータの服やグッズを販売しており、「三坑」の集結店とも言える。同社は上海、杭州などの都市で7店舗を展開。年内に店を30店までに増やす計画を公開している。
中国のZ世代が成人になり収入が増加するのに伴い、「三坑」市場は今後も伸びていくと予測された。彼らのような細分化された需要に応じるブランドは今後どんどん生まれるだろう。