60歳以上の高齢者が2億6000万人に、中国の高齢化が加速

中国国家統計局が先日、2020年に実施した国勢調査結果を発表した。総人口は14億1178万人で前年の抽出調査より1173万人増加した。中国の国勢調査は10年に1度実施され、今回が7回目の調査となる。前回調査した2010年からの年平均の人口増加率は0.53%と、2000年以降の10年間(0.57%)と比べ鈍化している。60歳以上の人口は2.6億人で全体の18.7%を占め、2010年の前回調査と比べて5.44ポイント上昇した。

今回の国勢調査結果発表は予定より遅れてた。総人口が水増しされ、実際の人口は減少しているのではないかと憶測を呼んでいるが、どちらにしろ、少子高齢化が加速していることが明らかである。

中国直近3回の国勢調査結果(出典:中国国家統計局)

高齢者のネット利用が拡大

高齢者の増加により中国では「シルバー産業」がホットワードとなった。高齢者は介護を必要とする層ばかりではなく、インターネットを使いこなすほど元気な人もいる。彼ら高齢者の消費市場が注目を集めた。

2020年は新型コロナウイルスで人々が在宅を余儀なくされ、ネットサービスの利用率が急増した。2020年中国インターネットの利用者数は9.89億人で、そのうち60歳以上の高齢者利用者は1億1000万人で全体の11.2%を占める。

高齢者の中国ネット利用の割合推移(CNNICのデータを基にチャイトピ!作成)

退職し時間を持て余している高齢者は、スマホでニュースや動画を見るようになった。中国市場調査会社Questmobileが発表したデータによると、高齢者が使うスマホアプリのうち、SNS、動画、ニュースアプリの利用頻度が特に高い。その中でもSNSに使う時間が全体の29%を占め、Weixinで子供や親戚と連絡することが多いのだ。ショート動画に使う時間が全体の13.4%を占め、特にdouyinとkuaishouが人気である。また、ニュースや情報アプリに使う時間が全体の9%を占めており、百度アプリを使って情報を調べる高齢者が多い。

高齢者のスマホアプリの利用時間割合
(Questmobileのデータを基にチャイトピ作成)
高齢者がよく利用するアプリ
(Questmobileのデータを基にチャイトピ作成)

また、ネットショッピングを利用する高齢者も増えている。アリババが発表したレポートによると、コロナ流行後の2020年Q3では、ECアプリ・タオバオ(淘宝)の利用者のうち、高齢者の利用頻度の伸び率が他の年齢層を大幅に上回り、消費金額の伸び率も00後に次いで年齢層別で第2位に上がった。

高齢者のオンライン消費潜在力が期待できる一方、実際のネット通販利用には課題が多い。タオバオの利用率が増えているものの、決済率は他の年齢層より明らかに低いのだ。料金の払い戻しやアプリの操作などの問題に直面する高齢者が多いのだ。

高齢者のネット通販利用でよく起きる問題:

  • 料金払い戻し(42%)
  • 商品関連問題(17%)
  • 物流(16%)
  • 支払い(8%)
  • アカウントと操作問題(5%)

ネット大手が高齢の利用者に注目

高齢化という中国社会に現状に伴い、中国ネット大手も高齢者向けにサービスの利用画面改善や利用方法の教育を展開している。中商産業研究院が発表したデータによると、douyinの高齢者ユーザーも増え続けており、50歳以上の中高齢者が全体ユーザーの8%を占める。彼らはdouyinを通して社会の出来事を見たり、生活のテクニックを学んだりしている。Douyin上のライブコマースには高齢者ライバーも現れている。3330万フォロワーを持つ高齢者ライバー「我是田姥姥」はライブ配信で150万元(約2500万円)の売上を獲得した。

douyinとビリビリで活躍している高齢配信者(チャイトピ!撮影)

今年3月にdouyinは「老友計画」を打ち出し、高齢者向けのユーザビリティ向上のため、60歳以上のサービス体験者を募集した。また、ネット詐欺に騙されやすい高齢者を配慮し、詐欺への注意喚起を促す表示機能を追加した。

さらに、Z世代の間で人気な動画アプリビリビリ(bilibili)にも高齢の投稿者が現れた。89歳のおばあちゃん「敏慈不老」はビリビリで37万のフォロワーを持つ人気者だ。ビリビリ側も高齢の投稿者の募集を行うなど、高齢者市場を意識している。

中国政府部門も高齢者向けにスマホアプリのリニューアルを推進しており、今後高齢者のネット利用がさらに拡大していくと見られる。若者世代のユーザーを囲い込む大手ネット企業の高齢者への注目も日に日に増している。高齢者の消費市場が次の激戦区になる可能性が極めて高いのだ。

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