618セールが長期化し、1日のセールが1ヶ月に

毎年、1年の真ん中あたりに行われる中国ネット通販の大型セール618が先日終了した。このセールは元々大手ECシェア2位の京東(JD.com)の開店記念日である6月18日に始まったことがきっかけだったが、他のECプラットフォームも便乗して、今では独身の日(ダブル11)と共に中国EC業界の2大行事となった。

セール期間も当時1日限定だったのが現在は長期化した。プラットフォームによってセール期間はバラバラだが、5月下旬から予約販売を開始し、6月18前後にピーク期を迎えるのが主なパターンである。中国EC市場の競争が激化し、GMV(流通額)のプレッシャーに追われるEC各社が期間を延ばして売上の数字を引き上げて行く狙いが見られる。

EC企業は全体の売上を出さずに成長をアピール、Douyinが初めて618に参戦

今回の618セールでは京東だけが全体の売上数字を発表した。他のプラットフォームは成長をアピールするデータのみ出している:

  • 京東:取引額は3438億元(約5兆9000億円)で前年比27.7%増加。
  • Tmall(天猫): 18日のイベント開始から1時間で取引額が前年より100%増加。
  • douyin(抖音):ライブコマースの合計視聴者数が延べ372億人。
▲618セールと独身の日のGMV推移(出典:星図)

データ会社・星図によると、今回の618でEC業界全体のGMVは前年比26.5%増の5785億元だが、伸び率は前年より下落している。

今回のセールでは、伝統的なEC大手はもちろん、ライブコマース事業で注目されているdouyin(抖音/Tik Tokの中国版)やkuaishou(快手)などのショート動画企業も参戦した。正式発表によると、Douyinで618イベントに参加したお店の数は昨年同時期の2.9倍となった。

さらに618の直前には、ライブコマースへの進出が少し遅れている京東がdouyinと協業を達成したと報じられた。EC大手とdouyinのようなライブコマースプラットフォームがライバルでありながらもこのように連携して両者が利益得るような関係性を築くケースも増えている。

また、今回の618セールは中国政府が独禁法違反としてアリババに巨額な罰金を科して以降、初めての大型セールである。出店者の出店先を規制する「二者択一」行為が厳禁され、ブランドは複数のプラットフォームでイベントに参加できるようになった。

新興ブランドの成長が目立つ

今回の618セールでは新興ブランドの成長が全体の売上成長に貢献している。Tmallが公開したデータによると、459個の新興ブランドが細分化されたカテゴリの売上1位を獲得した。これらのブランドは大体2017~2019年に創業されており、初めて618セールに参加し1位の好成績を獲得したブランドも存在する。Z世代といった若者消費者の個性的な需要に合わせて商品を打ち出し急成長してきたのだ。

Tmall自身も新興ブランドの成長を支援し、3年間で1000の新興ブランドを年間売上1億元を超えるブランドに成長させる計画を発表している。

▲618でTmallの細分化カテゴリで1位を獲得した新興ブランド(Tmallより)

チャイトピ!編集部

今回の618セールは取引額が伸びているものの消費者からは、昔にような大型ECセールに対する期待値はあまりないという声が挙がっている。1日限定だったセールが長期化しているため、セールへのワクワク感が消失したのだ。いつの間にかセールが始まり、いつの間にか終わる感覚にあり、昔のように徹夜してセールのスタートを待つ事は減っているようだ。

さらに、618セールと「独身の日」の2大セールの他に、中国のEC業界では近年セールイベントがかなり増えており、規模を問わず1年間で100以上のセールイベントが開催されているという統計も出ている。そのため618セールの影響力は今後も減っていく可能性があるだろう。

一方、細分化した市場を開拓する新興ブランドや新しい商品カテゴリの成長は著しく、設立から4年間で上場を果たしたコスメブランド「完美日記(perfect diary)」や無糖を売りにする飲料水ブランド「元気森林」などのような新興ブランドが若者の消費スタイルの変化に合わせて商品開発や独特なマーケティング手法を行い瞬く間に人気を集めた。このような新興ブランドは618のような大型イベントでも大手ブランドを打ち負かし好成績を獲得している。今後そのような新興ブランドの成長に注目である。

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