テンセントが運営する国民的チャットアプリwechat(微信)が近日、バージョンアップを行い、グループチャットの機能を調整。
具体的には、複数のグループを一つにまとめ、そのグループに新しいメッセージが送られて来てもグループがチャット履歴のトップに上がってこないというもの。つまり、あまり見たくないグループを見えない場所に管理できるようになった

バージョンアップを行った背景として、中国政府によるIT大手業界への圧力がある。
現在、テンセントやアリババなどIT大手が他社サービスへのブロックを解除しつつあり、今後ユーザーが他社サービスに流れるリスクが高い。そのため、今回のwechat機能調整は、その防衛策でもあると分析されている。

とはいえ、ユーザーにとっては、煩わしい広告を送ってくるグループを見えないところに管理できるようになったため、ユーザーの満足度向上に繋がるだろう。

一方で、wechatを利用してマーケティング活動を展開する企業にとっては、このアップロードは悲報になったようだ。

というのも、12億人のユーザーを持つwechatは、今や単なるメッセージアプリではなく、企業のマーケティングツールの1つになっているのである。

2019年から中国マーケティング業界では、ブランドが直接ユーザーに接触できる、もしくは宣伝費を使わなくても自らユーザーがアクセスしてくれるとして、いわゆる「私域流量」(アカウントフォローや、EC店舗の会員になった人に表示するマーケティングページ)に注力されてきた。

これによりWeChatは、中国最大の私域流量プラットフォームとなり、多くのブランドがwechatグループや公式アカウントを利用して消費者コミュニティを形成している状態にある。

そのため、今回のwechatグループ機能調整は、このような「私域」マーケティングへの影響を懸念せざるを得ないだろう。

チャイトピ!編集部より

テンセントが以前wechat上の公式アカウント表示の仕組みを調整した際も、マーケティングを展開するアカウントからの懸念の声が上がった。
この調整により、ユーザーが最も読んでいるアカウントが先に表示されるようになったため、よほど優秀なコンテンツでないとユーザーに見てもらえなくなったのである。

今回の調整も含め、テンセントのこのような一連の動きから、ユーザビリティ向上の意図が見て取れる。

中国のネット利用者数の成長が頭打ちになりつつある状況に加え、ユーザーファーストの調整が行われている現在、ネットサービスの新規ユーザー獲得がますます難しくなることは容易に想像できる。そのため、優秀な商品、優秀なサービス、優秀なコンテンツを提供しない限り、今後「私域」マーケティングで他社に勝つことは難しくなるだろう。

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