中国のIT業界にとって、2021年は歴史に残る一年となったことだろう。政府の規制強化により業界発展に急ブレーキをかけられたり、市場飽和により大手ネット企業の売上成長の鈍化が顕著に現れたりと、シビアな一年であった。

チャイトピは2021年を振り返り、中国IT業界の変化を代表する10大トピックを選出し、時系列でまとめたので、ぜひチェックして見てください!

独占取締強化でアリババが3,200億円の巨額罰金

2021年は、独占取締に対する罰金案件がたくさんあったが、代表的な事件と言えば、アリババの巨額罰金ニュースだろう。
出店者の出店先を制限する「二者択一」を行ったとして、アリババに対して4月に中国規制当局の市場監督管理総局が182億元(約3,200億円)の巨額罰金を科した。これは中国独占関連罰金の最高記録である。これにより、アリババは上場以来、初めて四半期に赤字となった。

その後もフードデリバリー最大手の美団(meituan)が同じ理由で、34億元(約610億円)の罰金を科されている。

2021年中国規制当局は100以上の独占関連案件を発表したが、そのうち7割はネット企業である。他にも罰金額はアリババ、美団より少ないものの、テンセント、滴滴などの企業が過去に申告なしに企業買収を行ったとして罰金を科された。

カリスマ経営者の退任が相次ぐ

近年ネット業界では、創業者が早期に引退するケースが増えている。2019に引退したジャックマーを除き、今年はバイトダンスの張一鳴、拼多多(pinduoduo)の黄峥、kuaishou(中国ショート動画2位)の宿華など、ネット大手トップの引退が相次いだ。

それぞれ、バイトダンス創業者の張一鳴は、5月にCEOを辞任し、今後は長期的戦略や企業文化、社会的責任など扱う役職に就任すると発表。
拼多多(pinduoduo)の黄峥は、3月に会長を辞任し、食品科学と生命科学研究に身を投じたいと表明した。

この背景には、中国政府が大手IT企業に対する規制を強化する中で、カリスマ経営者が政治的に標的にされる優先順位が高いということもある。また、引退後に社会的責任や、科学研究など扱う役職に就任することは、政府が謳う「共同富裕」の方針に追従しているとも言えるだろう。

DiDiが上場5ヶ月で上場廃止を決定

最盛期に9割の市場シェアを占めた中国ネット配車のDiDi(滴滴)が今年6月に米市場への上場を果たした3日後、まさかの出来事で世間を騒然とさせた。

中国人の生活の至るところに浸透しているDiDiは、それ故に大量の個人情報を所持している。そのため、その情報が海外に漏洩されかねないと国家安全保障上の懸念により、
中国当局がサイバーセキュリティー審査を開始し、新規ユーザーの受け付けを禁止。さらには、アプリ配信ストアからDiDiのアプリを削除し、ダウンロードまでも禁止した。

上場してわずか5ヶ月後、DiDiは米市場での上場を廃止し、香港への上場を準備していることを発表。当局によるサイバーセキュリティー審査は未だに終了しておらず、アプリ配信停止期間に、ライバル社がこのチャンスを利用してシェアを拡大するなど、DiDiの苦境はしばらく続きそうだ。

四、「双减」政策で教育業界が悲鳴

出生率低下の要因とされる教育費の高騰を背景に、中国政府が7月に「双减(子供の宿題と塾通いを減らす)」政策を打ち出し、小・中学校の学生向けの学習塾を閉鎖。具体的には、小中学生を対象にした塾の新設は認めず、既存の塾には「非営利の組織」に転換するよう要求した。

この政策により、中国の教育産業は大きなダメージを受け、従来の教育大手の「新东方」のみならず、オンライン教育に重点を置いたバイトダンスにも影響を及び、教育部門で大規模なリストラが報じられた。

大手ITのリストラ報道相次ぐ

上記のバイトダンス教育部門をはじめに、今年下半期では、大手IT企業のリストラが相次いだ。
動画大手のiQIYI(爱奇艺)は、管理層を含む社員20%~40%のリストラが報道され、業界を騒然とさせた。親会社で検索エンジン最大手のバイドゥもマネタイズを第一の目標とするため、ゲーム部門の300人、ライブ配信部門の9割のリストラが報じられた。

テンセント、アリババが「共同富裕」に投資

8月に中国当局が「共同富裕」という目標を大々的に打ち出した。共同富裕は、所得格差などの急速な経済発展によって生じた歪みを是正し、高すぎる所得を合理的に調整し、高所得層と企業が社会にさらに多く還元することを奨励したものである。所得の高い人や大手企業からの寄付などを促進している。

「共同富裕」という言葉はすぐにトレンドとなり、今年に入り起きている「大手IT企業叩き」の根本的原因もこれにあると分析されている。

テンセントとアリババが「共同富裕」の方針に応じ、それぞれ1,000億元を共同富裕に投じると発表。他にも美団など大手IT企業がこぞって「共同富裕」の方針に追従する姿勢を示した。

中国政府はその後「共同富裕」は「富裕層からお金を奪って貧困層にあげることじゃない、寄付も本人の意思次第」だと強調したが、今後大手企業が成長を求める上でこのような社会的責任は無視できない課題となるだろう。

メタバースが大ブームに

メタバースの世界的ブームが中国にも到来。今年9月に中国の株式市場で、メタバース関連の株が急騰したことをきっかけに、メタバースという言葉が一夜にして話題となった。

その後、バイトダンス、テンセント、アリババをはじめとする中国のIT大手がメタバース関連の商標申請を提出。これにより、さらにメタバースの人気に火をつけこととなった。現在VR/AR、バーチャルヒューマン、ゲームなどメタバース関連と思われる業界もホットな投資分野となっている。

タオバオ、wechatの相互リンク遮断解除へ

独占に対する取締強化の状況下、9月に中国工業と情報化部はアリババやテンセントなどIT企業に、サービスの「リンク遮断」の解除を求めた。特にタオバオ、wechatのリンク相互リンク遮断の解除進捗は世間から注目された。

中国のネットサービスは、大まかにアリババ、テンセントの2陣営に分けられる。基本的に相手陣営のサービスのリンクを自社サービス内で開くことはできない。

当局の指導を受け、アリババとテンセントがリンク遮断の解除を進め、現在はwechatでタオバオのリンクを開くことができるようになり、将来的にはタオバオでテンセントのモバイル決済サービスであるwechatpayの導入も検討されているようだ。

アリババが経営体制を刷新

独占取締強化で巨額罰金を食らったアリババは12月に大規模な組織調整を行った。「多元化」管理を目指し、中国デジタルビジネスに創業メンバーの戴珊、国内ネット通販事業のトップだった蒋凡は海外デジタルビジネスのトップ、副CFOの徐宏はCFOに任命された。
経済減速や、より激しい市場競争への対応として、決裁権限を各部門に授けることで、決裁のスピードを上げる狙いがあると分析されている。

アリババの7~9期決算では、売上は市場予想に届かず、国内B2C事業の売上成長は3%に止まり、Tmallにおける実物商品の流通額(GMV)も、伸び率は前年と比べ1桁まで減少した。このような国内市場の成長鈍化及び当局の規制強化を受け、今後は海外事業の開拓に力を入れていく可能性も視野に入れてのことだろう。

ライブコマースの女王viyaが脱税で巨額罰金

タオバオで9,000万人フォロワーを持つ中国トップインフルエンサーの薇娅viya(薇娅)が脱税により、滞納した分に加え、追徴金と罰金で合計13億4,100万元(約239億円)の支払いを命じられた。その金額はかつて脱税で世間を騒然させた女優のファンビンビンをさらに上回り、過去最大の額となった。

罰金だけでなく、viyaのタオバオ、weibo、douyin、店舗およびSNSアカウントまでもプラットフォーム側により凍結され、ネットから抹殺されたため、ライバー復帰は当分難しいと思われる。

viyaの脱税事件は雪梨cherie(タオバオ売上3位の人気ライバー)に次いで有名インフルエンサーの2件目の事件となる。中国政府の脱税取締強化は、タレントからついにインフルエンサーにも及び、今後もより多くのインフルエンサーの脱税事件が公開されていくと思われる。

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以上、中国IT業界の2021年を語る上で欠かせないトピックをまとめた。規制強化、株価低迷、成長鈍化、リストラなどがキーワードとなっており、全体的に見ると、2021年は中国IT企業にとって辛い一年だったと言える。

政策の変化が激しい中国、2022年は引き続き規制強化するのか、それとも緩和するのか、まだ不明だが、大手企業は規制強化を受ける分野を避け、海外市場や政府が支持する農村市場、エコカー、コア技術開発などに転換していっているようだ。