景気悪化する中国ネット業界

10年ほど前から爆発的に成長してきた中国のネット業界は、2021年に転換点を迎えた。IT大手の株価がこぞって暴落し、リストラを行う著名企業が続出。事前に何の知らせもなく、リストラを告げられ、当日会社を離れることとなったケースも少なくない。

この2021年の1年間、ネット関連企業の少なくとも35社以上がリストラを実施。これらの企業は、公式発表では大規模なリストラを否定し、正常な範囲内の人員調整と説明しているが、リストラされた社員からの苦情が後を絶えず、ネットで散見する状態だ。

以下は、筆者が現地の報道や、ネット上の書き込みを基にリストラを行った企業をまとめたものである。

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▲現地の報道を基に作成したリストラ報道一覧(チャイトピ作成)


業界では知名度のある企業だけでも、35以上の企業がリストラを行ったが、実際はこの数をさらに上回ると考えられる。

リストラについて、考えられる要因は主に2つである:
・政府の取り締まり強化で一部の企業が存続危機に直面
・経済減速および、ネット市場の成長鈍化により戦略転換する企業が続出

中国政府が2021年から行った一連の規制強化により、教育、ゲーム、エンタメなどの関連企業がダメージを負った。特に教育分野では、小中学生向けの学習塾が非営利組織へ転換すると命じられたことで、ビジネスとして致命的打撃を受けたことは言うまでもないだろう。教育大手の新東方は、全体の過半数を占める6万人の大規模リストラを行い、業界を騒然とさせた。

また、政府が新作ゲームの承認を中止したことで、ゲーム会社においてもリストラが相次ぐ結果となった。バイダンスも例外ではなく、同社もゲーム事業の人員削減を行っている。

このような規制策によるリストラはどうしようもないと感じるかもしれないが、実は中国ネット業界の成長鈍化が顕著になったことも、リストラの要因と考えられる。

というのも、2010年あたりから中国ネット業界は、成長が見込まれ、VCから投資を獲得したことにより、赤字経営にも関わらず、ひたすら規模を拡大してきた企業が多い。しかし、市場が頭打ちとなり、VCからの資金調達が難しくなったことで、コスト削減が生き延びるための手段となったのである。

動画サイトのiQIYIは、利益の確保よりも規模拡大を最優先にしたことで、競争の激しい中国動画市場から勝ち上がり、市場シェアでトップに立ったが、創業から11年たった今でも黒字化できず、最終的に全体の20~40%の人員リストラに至った。

さらには、2020年からコロナ禍を追い風に成長してきた生鮮食品ECも2021年後半からリストラを展開。当時は成長を見込まれ投資のホット分野となったが、収益化できるビジネスモデルが確立できず、人員削減に追い詰められたようだ。

中国リストラの経済補償金制度「N+1」

リストラされた場合の退職金支払いは会社ルール次第の日本と異なり、中国では会社の都合で社員を解雇する場合経済補償金制度があり、具体的には「N+1」と「2N」の2つの補償プランを設けている。

違法なリストラ、つまり合法的な理由なしに解雇された場合、2Nプランが適用される。直近12ヶ月の平均給与×勤続年数見合いの月数×2を補償金として支払う。

また、経営破綻や経営困難など合法的な理由があってのリストラ(整理解雇にあたる)は、直近12ヶ月の平均給与×勤続年数見合いの月数の補償金が支払われる。ただし、1ヶ月前に事前に社員に通知していない整理解雇は、追加で1ヶ月分の給与を支払う必要があり、これがいわゆる「N+1」と言われるものである。

つまり
勤続年数1年以上2年未満:2ヶ月分
勤続年数2年以上3年未満:3ヶ月分
のように勤続年数が1年増える毎に1ヶ月分追加される

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▲(出典:智联)

法律上の補償基準とは別に、人事部が社員と一対一の協議を行い、補償プランを決めることもある。しかし、前出のグラフを見てわかるように、多くのネット企業はN+1の補償金案を採用している。ただ、協議の結果、N+2、N+3などの補償案を採用する会社もあるようだ。

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