アリババの最新決算、難航状況が続く
アリババが先日、2021年10~12月期決算を公開。競争の激化や景気減速、中国当局による規制強化など、複合的な逆風にさらされ、今期も厳しい決算となった。
主な内容は下記の通り:
・売上高:2,425億元(約4兆4,300億円)、前年比9.7% 増。増収率は上場以来、過去最低を記録
・純利益:204億元(約3,700億円) 、前年比74%激減
・主力事業であるEC(B2C)の収入:前年比1%減少。初めてのマイナス成長
・クラウド事業の収入:前年比20%増。伸び率が鈍化
・海外EC事業収入:前年比18%増
これを見てわかるように、今期決算ではプラス的な部分が少なく、上場以来最低の増収率、大幅な減益と、アリババの苦境が鮮明となった。
さらに内訳を見てみると、主力事業である国内EC収入(ECサイト上の広告と手数料による収入)は前年比1%減少、初めてのマイナス成長となっている。次の成長エンジンとして期待されていたクラウド事業も伸び率が鈍化しているようだ。
実はアリババは去年、大規模な経営陣調整を実施している。その際、EC事業を国内と海外の2部門に再編し、海外市場に注力する姿勢を示したが、それでも今期海外EC事業の伸び率は18%と、高い水準とはけして言えない結果となった。
また、中国のアパレルや、デジタル製品のEC化率は30~40%で、すでに高い水準に到達している。そのため、アパレルカテゴリーが重要カテゴリーの1つであるアリババは、生鮮食品などの他カテゴリー開拓をせざるを得ない状態だ。しかし、アパレルと比べ、生鮮食品のEC化率はまだまだ低く、成長を狙うEC企業同士の激戦区となっているため、アリババの難局はしばらく続きそうだ。
政府の取り締まり強化よりも、消費減速の深刻化が原因か?
2021年は中国政府の取り締まり強化により、ネット業界が悲鳴をあげた年であった。特にアリババへの風当たりが強く、独禁法違反で前代未聞の巨額罰金を課されている。政府に後押しされ、順風満帆に成長してきた中国のネット業界であったが、新しい段階に入ったようだ。
しかし、それよりも中国の消費減速の方を気にすべきだろうか。中国ネット企業の株価が消費減速に伴い全体的にダウンする中で、アリババは最もその影響を受けている。現在の時価総額はテンセントの半分だ。
中国の国家統計局によると、2021年12月の中国社会消費財の小売総額の前年比伸び率は1.7%に止まり、過去一年で最低に。伸び率鈍化が顕著になってきている。これはコロナ再拡大の影響もあるが、中国経済減速も要因と考えられる。
新しい消費ニーズ、成長エンジンはどこにあるのか?
EC事業だけでなく、クラウド事業も成長鈍化という課題に直面する中、アリババのCEO張勇は決算発表後に「新規ユーザー獲得より、既存ユーザー維持に重点を置く」という戦略転換を表明した。しかし、顧客維持による成長にも限界があるように感じられる。
現在、中国では北京冬季オリンピックでウィンタースポーツ関連の消費が急成長しているように、アリババも新しい消費ニーズを作り出すことに意欲的である。
政府による消費喚起を期待する一方、今後はイノベーションによる新しい成長エンジンを見つけ出すことがアリババのようなITの巨人にとって、この難局から乗り切る鍵となるかもしれない。
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