スマホの普及に伴い、中国消費者が情報を仕入れるルートは昔ながらのテレビや新聞から、SNSへ転換を遂げた。とりあえずテレビでたくさんCMを流せば知名度を一気に引き上げられ市場を打開できる、といった時代はもう過ぎたようだ。

特に若者はSNSで影響力を持つインフルエンサー(またはKOL)の推薦を参考に買い物する傾向にあり、中国市場ではインフルエンサーマーケティングが避けられない存在となった。

そこで、今回インフルエンサーたちが広告依頼を受ける際に考える要素や、商品・ブランドの選出方法を中国のweibo(中国版ツイッター)、douyin(中国版Tik Tok)、ビリビリ(動画共有サイト)、RED(口コミサイト)で活躍しているインフルエンサーの2人にインタビューし、インフルエンサー視点のインフルエンサーマーケティングや、事業者がインフルエンサーマーケティングを展開する際の注意点について、質問を行った。

■インフルエンサー視点のインフルエンサーマーケティング

コンテンツ配信とマネタイズのバランスが重要

インフルエンサーがインフルエンサーになれた理由は、紛れもなくその人の発信に惹かれたファンが応援しているからである。そのため、ファンを増やす、または維持するための安定した発信がまずは必要である。

しかし、趣味ではなく、専業でやっているインフルエンサーは、生活のために商業化する必要があるが、商業化しすぎると、コンテンツのクオリティが下がり、ファンの反感を買う恐れがある。そのため、コンテンツ配信と広告のバランスを意識しなければならない。

配信の中で、ストレートに商品をひたすら褒めるインフルエンサーもいるが、今回インタビューに応じてくれた2人は、広告でありながらも、一つの作品として投稿するという方法で宣伝を行っている。

「私がファンに伝えたいことや、自分の価値観などをこのアカウントを通して発信しています。撮りたい動画を家で撮影し、(カメラや三脚などがあれば、家で簡単に撮影が可能)、初期編集も自分で行います。会社は基本的に干渉せず、ただ色々な意見や編集の手助けをしてくれるだけです。

また、ファンのことを友達、または読者として考えています。自分の価値観を曲げるような広告をファンに押し付けることはしたくないですね。
私のファンは高校生から大学生の女性が多いので、まだ経済的に自立していない彼女たちに手頃な値段の良質なコスメ商品をお勧めするようにしています。初心を忘れ、お金だけを考えるインフルエンサーは、ファンが離れていくと思うので」(那个娜扎

良いコンテンツを作れる優秀な人こそが時代に淘汰されず、必要とされ続けると確信しているので、自分のコンテンツを大事にしています。広告依頼を受けても、広告としてではなく、自分の一つの作品として作ってきました。初めは売上だけを狙うブランドに気に入ってもらえませんでしたが、暫くして私のコンテンツスタイルを気に入ってくれるブランドから声をかけられるようになりましたね」(小智Tommy

▲映画のように作られた動画作品の中でコートを宣伝
(小智Tommyのビリビリアカウントより)
▲韓流スターの顔真似メイク動画で化粧道具を宣伝
(那个娜扎のREDアカウントより)

ビリビリやdouyin などのプラットフォームでは、商品をひたすら褒め、ブランド名や商品名を出し過ぎると、プラットフォームに広告だと認定され、閲覧回数が制限される。そのため、「那个娜扎」のように顔真似メイク動画を先に公開し、再生数が伸びてから、文章を再編集し、商品名を追加するパターンが多いようだ。

選びたい商品とそうでない商品の違い

お金を出せば必ずインフルエンサーが広告依頼を受けてくれると思ったら大間違いだ。インフルエンサーにも選びたい商品とそうでない商品があるのである。

「インフルエンサー個人は、ブランドと直接接触しません。会社が広告依頼を行ったブランドと商品を一度選定し、評判の良い商品と悪い商品を選別します。それから私が残された候補リストの中から最終的にブランドと商品を決める流れです。

選んだ商品は、本当に推薦する価値のあるもの、あるいは自分の一貫したスタイルに合うものでないと、ファンに違和感を与えることになります。私は依頼を受ける前に、まずその商品の評価を確認し、あまりにも評価が悪い商品だったら、すぐに断っています。あと、商品を選定したとしても、まずは自分が実際に試用して自分の肌に合うものだったら、依頼を受けます。そのため、こちらの試用要求を断るブランドからの依頼は基本的に受けないです。また、今後のインフルエンサーとしてのキャリアを続けていくために、私は今コスメ商品の成分など、専門的な知識を学んでいるところです。」(那个娜扎)

「自分も信用できる商品なのか、まずネットで調べます。それから私のコンテンツとの相性を見ますね。商品の値段とかはあんまり見ないです。もちろんファンの性質(経済力など)も考慮しますが、本当に自分が気に入った服だったら値段が少々高くてももっと多くの人に知ってもらいたいと思っています。一つ一つの動画を自分の作品として一生懸命作っているので、自分のファッションに対する感覚を優先しますね。」(小智Tommy)

商品の選出もせず、あっさりと広告依頼を受けるインフルエンサーもいるが、それが長く続けばファンの信頼を失い、実際の宣伝効果もブランドの期待を裏切る可能性がある。そのため、自分の個性を保つインフルエンサーの方が広告の効果が高いようだ。

MCNと契約するか、それとも一人で仕切るか

インフルエンサーを語る上で避けられない存在であるMCN会社。たくさんのインフルエンサーと契約する、いわゆる芸能事務所のような存在だ。

中国では、どれくらいのフォロワーを集めれば、インフルエンサーになれるか定義はないが、weiboではフォロワー数2万人以上で一定の影響力を持つと見なされ、このタイミングでポテンシャルのあるアカウントとして、MCN会社から契約の話を持ちかけられることも多いようだ。

「那个娜扎」もその一人である。彼女はたくさんのMCN会社から声をかけられたが、当時まだ大学生で学業を続けたかったため、この面で比較的寛容な会社を選んだ。

もちろん一人でもインフルエンサーとしての活動は可能であるが、さらに影響力を拡大し、マネタイズするなら必ずチーム、あるいは会社の力が必要となってくる。そのため、インフルエンサーはコンテンツ制作に専念し、ビジネス方面はMCN会社に任せるパターンが多くなっている。

「一人でコンテンツ制作から、営業までやるのも不可能ではないですが、身体的にも、精神的にも負担が大きいので、MCNと契約することが多いです。会社からのリソースの支援を受け、収入も比較的安定しています。今の会社は月給制+ボーナスで、月収は1万元(約19万円)を超えることが多いです。」(那个娜扎)

「収入は不安定で一銭も入って来なかった月もありますが、今の平均月収は4万元(約76万円)ぐらいです」(小智Tommy)

■ブランドがインフルエンサーマーケティングを展開する際の注意点

インフルエンサー探し

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