チャイトピでは、IT企業を中心に注目されている中国企業の業績を定期的に分析している。
前回でも取り上げられてきたアリババやテンセントといった大手IT企業と、MINISO(雑貨)やYatsen(コスメ)など日本のビジネスマンの間で知名度が上昇している中国企業16社の10~12月期決算をまとめた。
2021年の締めくくりとなる第四四半期では、中国政府によるIT企業への持続的な規制強化とコロナ感染再拡大により業界は冷え込み、リストラする企業が相次いだ。
中でもコミュニティ型EC事業は採算が取れない上、赤字拡大にも影響が及んでいるため、京東(JD)や美団(meituan)では関連事業部門でリストラが重点的に行われていたようだ。
また、中国国内の市場競争激化や規制政策を受けて、海外市場での発展に注力する企業も多く見られた。
テンセント
・売上高:1,442億元(約2.7兆円) 前年比8%増 市場予想を下回った
・純利益:950億元(約1.8兆円) 前年比60%増
純利益(Non-GAAP):249億元(約4,811億円) 前年比25%減
・wechatのMAU:12.7億人 前年比3.5%増
中国政府のIT業界への規制強化に影響を受けて、第四四半期と通期決算の売上高(前年比16%増)はともにテンセント上場以来最低の伸び率を記録した。
さらに、独禁政策が推し進められている中、2021年12月に同社は中国EC2位である京東(JD)の持ち株をほとんど配当に出した。そうして生まれた譲渡益は純利益に計上され、前年比60%増加となったが、Non-GAAPベースの純利益では249億元(約4,850億円)と前年より25%も減少していた。
事業別の売上を見てみると、国内ゲーム事業の売上は296億元(約5,753億円) と前年比1%微増した。一方で、海外ゲーム事業の売上は132億元(約2,567億円) と前年比34%も増加していた。中国ではゲーム事業への規制が強まっており、今年1月、2021年7月以降にゲーム関連会社が約1万4,000社も閉鎖されたと報じられた。そうした背景の中でテンセントは海外ゲーム市場に注力し、海外ゲーム開発企業の買収を進め、去年末には海外向けのゲームパブリッシング部門・「Level Infinite」を設立した。
テンセント・ビデオやテンセント・ミュージックなどのコンテンツ課金事業の収入は291億元(約5,690億円)と前年比4%微増。
広告事業では収入が215億元(約4,100億円)と前年比13%減少し、教育業界やゲーム業界、ネット業界の広告に対するニーズの低下が反映される形となった。
フィンテック/toB事業(企業向け決済サービスなど) の収入は480億元(約9,384億円)と前年比25%伸びていた。
第三四半期から続く中国政府の関連規制政策の影響を受けて、テンセントの業績は低迷の様相を呈している。ゲーム事業では今後も海外市場を中心に発展していくと思われる。
アリババ
・売上高:2,426億元(約4.4兆円) 前年比10%増 市場予想を下回った
・純利益:204億元(約3,727億円) 前年比74%減
アリババもテンセント同様に増収率が上場以降の最低を記録した。成長鈍化の原因として「市場競争激化」や「消費者の購買意欲の低下」などが挙げられた。
純利益はさらに74%と大幅に減少しており、減益の理由について同社は成長段階にある事業への投入増加、新規ユーザー獲得のためのコスト増加及びEC出店者への支援によるものだと示していた。
事業別の売上を見てみると、コア事業であるEC(BtoBtoC、広告や手数料による収入を含む)事業の収入は前年比1%減少しており、初めてのマイナス成長となった。タオバオやTmallなどにおける実物商品の流通額(GMV)の伸び率は第三四半期と同じ1桁にとどまっていた。中国EC市場全体が冷え込んでいることが原因であり、2021年のアリババ・「独身の日(ダブル11)」の取引高伸び率も2009年に始まって以降最低となった。
越境EC事業では収入が前年比18%増加していた。詳しく見てみると、BtoC事業の収入が前年比14%増加しており、東南アジアEC大手の「ラザダ(Lazada)」の収入が伸びたことが原因である。BtoB事業では収入が前年比29%も増加しており、企業向けの取引プラットフォーム「アリババドットコム(Alibaba.com)」の有料会員規模が拡大したことと、越境ビジネス関連の付加価値サービスの収入が43%増加したことが原因。
また、直営事業の収入では前年比21%増加していた。しかし、大手スーパーマーケットの「サン・アート(高鑫零售)」や「Tmall Mart(天猫超市)」、「フーマー(盒馬)」などへの投入により営業コストがかさばり、利益を圧迫していた。
クラウド事業の収入は前年比20%増加と2020年同時期の伸び率50%から落ち込んでいた。メディア/エンタメ事業は依然として成長が停滞していた。
2021年12月の初めに、アリババでは大きな組織再編が行われ、EC事業を中国国内と国外の二つに大きく分けた。国内EC事業の成長および規制強化を受け、海外市場に目線を向けていた。
京東(JD)
・売上高:2,759億元(約5.4兆円) 前年比23%増 市場予想を上回った
・純損失:52億元(約1,000億円) 前年の純利益243億元から赤字転落
・年間アクティブユーザー数:5.7億人 前年比21%増
アリババの競合相手である中国EC市場シェア2位の京東、EC事業では出店者数が1~9月の合計を上回り、増収につながった。出店者への運営サポートと独自の物流システムが魅力的であることが原因のようだ。
しかし、第三四半期からさらに損失が拡大しており、決算が発表された当日に同社の株価は一時16%近く下落した。
また、年間アクティブユーザー数は第三四半期に比べて1,800万人と3%微増となり、ユーザー規模拡大に低迷が見え始めた。
売上について見ていくと、直販事業の収入は前年比22%増加しており、広告や物流を含むサービス事業の収入は前年比28%増加となった。
一方で営業損失の部分では、共同購入ECの「京喜」などを含む新規事業の営業損失が前年から233%拡大していた。さらに、従業員への持ち株配当を含む一般経費などのコストや、投資損が跳ね上がったことが赤字拡大につながったと思われる。
IT業界でアリババやテンセントなど、リストラを噂されている企業が相次ぐ中で、京東もコミュニティ型共同購入ECのような不採算事業を中心にリストラを決行すると報じられていた。今後は損失縮小に向けて調整が行なわれていくと思われる。
また、物流企業を買収したこともあり、物流事業がさらに強化されるだろう。
美団(meituan)
・売上高:495億元(約9,500億円) 前年比31%増
・調整後純損失:39億元(約760億円) 前年より174%拡大
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