コロナ感染拡大の深刻化により、中国では一部地域でロックダウンが続いていた。行動制限がかけられている中で、企業らは他社との契約や人事での雇用・離職証明手続きなどの需要により電子署名に再び視線を向けていた。

中国のビジネスメディア「36kr」によると、電子署名サービス大手・「法大大(fadada)」の今年1~3月の新規登録ユーザー数は前年比で178%増加し、プラットフォームの1日あたりの契約数は前年比130%も増加していた。関連の問い合わせも前年の3倍と急増した。

需要の高まりを受けて、上海証券取引所と深セン証券取引所のような電子署名に対して慎重な態度を取ってきた証券、金融機関も企業が電子署名を使用することを許可していた。

また、政府も行政手続きやコロナ対策における濃厚接触者への隔離通知書などにおいて電子署名を導入し、積極的に活用する姿勢を見せていた。

中国市場調査会社「艾瑞諮詢(iResearch)」によると、中国電子署名市場規模は2020年の時点で20.4億元(約400億円)に達しており、2023年には37.2億元(約750億円)と2倍近くまで増加する見込みである。

▲ 艾瑞諮詢のデータをもとにチャイトピ!より作成

実は2000年あたりから中国では関連企業が現れ始め、2005年には関連法案も発表されていた。しかし企業、特に上場した企業らはデータの安全性などのリスク面を懸念して、電子署名を敬遠してきた。

新型コロナウイルスが現れたことにより状況は一転し、金融や不動産など様々な業界で電子署名への需要が急増していた。

こうした転機が訪れたことで、2020年の第一波を抑え込んだ後も同業界への注目は続いていた。

そして、今回コロナ情勢がぶり返したことで電子署名は再び活躍を見せた。たとえコロナ感染が収束した後でも、デジタル経済が成長している中国で電子署名業界がさらに成長する可能性は否めない。

政府も今年の2月に電子署名などの応用を推進する旨を発表し、普及に対して意欲的な姿勢を見せていた。

だが、まだ成長途上の同業界にとって新規ユーザー獲得はその発展に必要不可欠であり、関連企業はいかに電子署名の安全性を証明し、顧客を安心させることができるかが課題となる。