最近、中国の大手学習塾「新東方」がDouyin(中国版TikTok)で英語、中国語を交互に使ったバイリンガルライブコマースを打ち出しことで人気が爆発した。たったの三日でDouyin のフォロワーが700万人以上増え、16日には1000万人を突破。現地メディアによると、一日の販売額はトップ10入りを果たした。
当局より双減政策(学習塾禁止令)が発表されたことで事業転換を強いられた新東方、ついにライブコマース事業に転機を訪れたようだ。
業界への規制が強まり、Austin(李佳琦)やViya(薇娅)などのトップライバーらが姿を消している中で、同社が注目を集めた理由は以下の三つだと考えられる。
■斬新なライブコマーススタイル
英語だけを使ったライブ配信やボイスチャットなどはDouyin上では決して珍しくない。ただ、ネット通販のテレビショッピングとも言える「ライブコマース」 + 「英語」というスタイルは新鮮であり、視聴者の関心を引きつけた。
■実力派の教師陣
教育業界最大手の同社には様々な分野で実力と経験を併せ持つ教師らが所属している。英語も例外ではなく、Douyin上における競合らとは大きな差がある。視聴者からすれば高レベルな授業を無料で受けたことになる
■Douyinで学習コンテンツが近年ブーム
プラットフォームの変化も人気の一因である。Douyinが去年10月に公開したデータによると、ライフハックや科学分野に関するコンテンツが急増しており、人気を見せていた。Douyinでは英語だけでなく、日本語で語り合うボイスチャットルームのライブ配信もあり、語学勉強に興味を持つ者は多い。
新東方のライブコマースは長い間Douyin上で思うような成果を挙げることができなかった。動画のハート数から見ても、ライブコマース自体よりも事業転換に至った裏話の方が人気だった。
バイリンガルライブの成功により同社への注目度は急騰し、元英語教師だったライバーにも視線が集まっていた。また、こうしたブームを受けてバイリンガルライブに着手する競合も増えていた。
今回の人気上昇は新東方にとっては事業拡大のまたとないチャンスだ。そのため、同社は月給5~6万元(約100~120万円)でバイリンガルライバーの人材募集をかけた。その上、自社サプライチェーンの構築にも意欲的だ。
ライブコマース事業の人気を受けて、傘下のオンライン学習塾企業「新東方在線」も急騰を見せた。しかし、それと対照的に株主であるテンセントは15、16日に7.2億香港ドル(約125億円)で大半の保有株を売却した。米大手投資機関のモーガン・スタンレーやJPモルガンらもそれに続いた。
投資側からすれば、今回のブームは転機ではなく、双減政策で株価が暴落した保有株を手放す最大のチャンスとなったようだ。