近年、中国では架空の殺人事件の犯人を推理する体験型ゲーム、「劇本殺(マーダーミステリー)」が人気を馳せている。しかし、一部の店舗では内容に暴力・ホラー・ポルノ要素などが含まれており、中国当局は青少年に悪影響を与えるとして同業界を問題視していた。

近日、中国規制当局より初めてマーダーミステリーに対する規制政策が公開され、業界への取り締まりに着手した。

マーダーミステリーとは?

日本ではまだ知名度があまりないマーダーミステリーだが、中国ではZ世代(1995~2009年生まれ)を中心にブームが巻き起こっていた。

遊び方はシンプルであり、複数の人で渡された脚本の役を演じ、犯人が誰かを当てるというものだ。感覚的には人狼ゲームに近い。

また、脚本によってテーマや舞台は様々である。ホラー要素の強い内容やギャグ要素に富んだ内容、伝統衣装に身を包み時代劇のような舞台で楽しむこともできる。

新鮮かつ刺激があり、非日常感を味わえる所が人気のポイントとなったようだ。

中国市場調査会社「艾媒諮詢(iiMedia)」によると、2020年の時点では同分野の市場規模が117億元(約2,400億円)に達しており、2022年には239億元(約4,867億円)と倍に膨れ上がる見込みだ。

▲ 出典:艾媒諮詢

ホラー要素などが問題に

ブームになったことでマーダーミステリー業界に足を踏み入れる人々は増え、脚本の種類も急増していた。しかし、一部で内容にホラーやポルノ要素など不健全な内容があり、未成年者の心身を害するとして中国政府は取り締まりに乗り出した。今年3月には上海市政府が一足先にマーダーミステリー取り締まり規定を実施した。今回5つの政府部門より発表された政策は中国全土に適応され、マーダーミステリー事業の運営に対して厳しい制限が設けられていた。

 今回発表された条例の一部内容:

 ◇マーダーミステリーを提供する店舗は、営業開始日より30日以内に店舗所在地、提供する脚本の名前・作者・概要・対象年齢などの情報を政府機関に自主申告し、登録しなければならない。 

◇脚本は健全かつ明るい内容でなければならない。また、社会主義理念に沿った明るい内容の脚本を奨励する。 

 ◇提供する脚本の対象年齢を設定し、明示しなければならない。未成年者の依存防止のために、祝日や休日、夏休み、冬休み以外の期間中に未成年者へサービスを提供してはならない。 

また、 正式な施行は2023年6月30日からとなっている。

 今後について

中国のコロナ感染拡大が収まり、夏休みが近づくにつれてマーダーミステリー店に足を運ぶ若者が増えるだろう。業界はそうした未成年者の利用に対する政府の意向を念頭に、脚本の内容や年齢制限などに注意を払わなければならない。 

こうした背景から、突破口として、最近では現地にある博物館、映画館などと連携して、観光スポットを舞台にする一味違うスタイルのマーダーミステリーサービスが現れ始めた。 

今後、中国マーダーミステリー市場がどのような変遷を辿るのか、チャイトピは引き続き注目していきたい。