IPとは

IP(Intellectual Property)は直訳すると「知的財産」になる。中国では映画やマンガ、アニメ、ゲームだけでなく、ブランドや人物、イベントなども含まれるため、その範囲は非常に広い。

一定のファンと知名度を持つIPとコラボすることで、ブランドに新規顧客の獲得や認知度向上、売り上げ増加などの効果をもたらすことができる。

中国ではそうしたIPコラボが若者を中心に人気を博しており、ファッションやコスメ、飲食品など様々な業界でみられるようになった。

前回に引き続き、チャイトピ編集部は直近数ヶ月の面白いIPコラボ事例を10個選出し、ご紹介したいと思います。

前回の記事:

サンリオ × 陰陽師

数多のかわいいキャラクターを世に送り出した日本の「サンリオ」と中国の人気スマホゲーム「陰陽師(Onmyoji)」のコラボ企画。

画像
▲   コラボイベントの宣伝ポスター(陰陽師wechat公式アカウントより)

「ハローキティ」や「シナモロール」、「バッドばつ丸」、「ぐでたま」が期間限定でゲーム内に登場。様々なコラボアイテムを手に入れることができる。

今回が二度目のコラボとなり、SNSなどでは多くのユーザーがシナモロールなどに対して熱烈なコメントを送っていた。 

サンリオ

日本の大手ブランドであるサンリオ、自社のハローキティなどの人気キャラは世界中で支持されてきた。中国も例外ではなく、タオバオなどのECサイトでは関連のコラボグッズが散見する。

 また、同社は海南島でハローキティのテーマパーク建設を進め、中国各地でイベントの開催も行なっており、積極的に事業を展開している。 

陰陽師

中国ゲーム大手のネットイース(NetEase)が開発・運営するRPGスマホゲーム。日本の平安時代を背景としており、登場キャラも日本の声優にアフレコを依頼している。それらのキャラは中国のゲーマーらに広く支持され、現地のイベントなどでコスプレする人も見られる。

デイリークイーン × 電力寵物公司

米アイスクリーム大手の「デイリークイーン」と中国ペットサービスブランド「電力寵物公司(D&L PETS COMPANY)」がコラボし、ペット向けのアイスハットを打ち出した。 

画像
▲ 限定アイスハット(DQ wechatアカウントより)

もふもふのまん丸いアイスの形をした帽子は多くの飼い主を惹きつけた。

近年、中国では犬や猫などのペットを飼う人が増加しており、そこにデイリークイーンは目をつけたと思われる。

また、イベント期間中に同ハットをかぶったペットとのツーショットをweiboで投稿したユーザーに対して同社は抽選でクーポンなどをプレゼントしていた。

デイリークイーン

1940年に設立された同ブランドは日本を含めて海外進出に意欲的である。1992年には北京にて中国一号店をオープンし、中国市場への進出を果たした。

現地メディアによると、同社はすでに中国で1000店舗以上を展開しており、その規模は本国のアメリカに並ぶという。

電力寵物公司

ペット美容、グッズ販売、預かりサービスなどを提供し、いくつものブランドを寄せ集めた総合ブランドである。ファッショナブルを売りとしており、店舗もデザイン感あふれる仕様となっている。

コカコーラ × ポップマート

「コカコーラ」と中国人気フィギュアブランド「ポップマート(POP MART)」がコラボし、限定版「SPACE MOLLY」のフィギュアを打ち出した。

コカコーラが宇宙の味を感じることができるという新商品「スターライト」の缶デザインに合わせたものとなっている。

画像
▲ 限定版MOLLY(コカコーラweibo公式アカウントより)

コカコーラが中国のフィギュアブランドとコラボしたのは今回が初めてだ。現地では若者を中心にこうしたフィギュアが人気を馳せており、コカコーラは若年層の獲得に尽力していると思われる。

コカコーラ

中国で絶大な人気を誇っており、現地では「快楽水(喜びをくれる水)」とも呼ばれている。特に上海ロックダウンの時には箱買いで溜め込む人々が続出したことでも話題となっていたほどだ。
また、コカコーラは中国事業の拡大にも力を注いでおり、7月上旬には第46件目の工場が稼働をスタートした。

ポップマート

日本進出も果たしているポップマート、商品の特徴は「アートトイ」という少し年上向けの芸術的なフィギュアであることだ。また、日本のガチャや一番くじと同じ「ブラインドボックス(盲盒)」の販売スタイルも有名である。

かわいらしいデザインのフィギュアにワクワク感のある販売スタイルで、同社は中国の若者を中心に支持されている。

李寧 × BAYC

中国スポーツ用品大手の「李寧(Li-Ning)」はサルが描かれているNFTアートの「BAYC(Bored Ape Yacht Club)」とコラボし、コラボグッズを打ち出した。

NFTについてはこちらの記事をご参考に:

画像
▲ コラボしたNFTアート(李寧weibo公式アカウントより)

よく見ると、李寧のロゴと「中国」の文字が入った服を着た仕様になっている。

同サルが描かれたシャツや帽子などのコラボ商品を打ち出し、北京ではBAYCの立像を設置をしたポップアップストアをオープンした。

画像
▲ BAYCの立像(李寧のweibo公式アカウントより)

NFTに興味を持つ若年層へのアプローチとして、同社は知名度の高いBAYCに着目し、プロモーションに活用していた。中国でもNFTがブームであるとはいえ、こうしてNFTアートを広告活動に利用するブランドは少ない。

李寧

中国の体操アスリートが1990年に設立した同名のスポーツブランド。主にスニーカーやスポーツウェアなどの製品を販売している。

近年では中国国内ブランドを支持する国潮などにより、同社は急成長しているようだ。英市場調査会社Euromonitorによると、2021年では中国市場における同社の市場シェアは8.2%へと上昇し、4位にランクインしていた。

BAYC

BAYCはアメリカに拠点を置く「Yuga Labs」が発行しているNFTアートコレクションの略称だ。作品の数は一万件以上にも上る。

同コレクションの特徴は様々な表情や服装をした斜め向きのサルが描かれているところだ。また、これらの表情や服、アクセサリーなどは全て別々のアーティストがそれぞれ作成し、プログラムによって一つの作品として作り出している。

李寧が今回コラボしたのは#4102という作品であり、NFTアートを使った本プロモーションは現地で話題となった。

マクドナルド × 希加加

マクドナルドとバイドゥ傘下のバーチャルヒューマン「希加加(xijiajia)」がコラボ。成都、大連では大型ビジョンに希加加が登場し、同社の新作バーガーを宣伝する裸眼3D広告に多くの人々が足を止めた。

画像
▲ 大型ビジョンに登場した希加加(マクドナルドweibo公式アカウントより)

マクドナルドがバーチャルヒューマンを広告に起用したのは今回が初めてであり、3D広告もあって現地のネットでは話題となっていた。

近年、中国ではメタバースが注目を集めており、NFTやバーチャルヒューマンなどの関連分野にも焦点が当てられた。今回マクドナルドの企画も話題作りとして成功を収めたようだ。

マクドナルド

マクドナルドは中国のビジネストレンドに敏感であり、2021年10月には数量限定で従業員などに記念品としてNFTを発行していた。

また、今年7月には新作バーガーの販売に合わせて、一般消費者向けに同商品のNFT作品も発行した。

希加加

中国IT大手のバイドゥが今年2月に正式発表したバーチャルヒューマンであり、AI技術を応用したことで作曲や作画などが可能だ。

希加加は現在同社のプロモーターとして活躍しており、EVモデルの宣伝役や発表会の司会サポートなど色んな場面で見かける。

星の王子さま × アリペイ

フランスの名作小説「星の王子さま」と中国モバイル決済サービス最大手の「アリペイ」がコラボし、アリババのNFTプラットフォームを通して限定版NFTを発行。

画像
▲ 星の王子さまのNFT(星の王子さまweibo公式アカウントより)

星の王子さまをテーマとしたNFT4種類が発行され、アリペイの支払いQRコードのスキンとして使う買うことができる。

合計で9万6000件となっており、4回に分けて販売された。1回目の販売はスタートから1分で売り切れとなった。

星の王子さま

200カ国以上の国と地域で出版されている名作。中国でも多くの人々から愛されており、フランスによる2015年の同名アニメ映画も現地で高い評価を受けた。

IPとして中国市場ではweiboの公式アカウントを開設しており、NFTやブラインドボックスの販売なども手がけている。

アリペイ

中国の代表的なモバイル決済プラットフォームであり、現地の人々にとっては生活に欠かせない存在となっている。

王者栄耀 × 久石譲

テンセントが運営する大人気スマホゲーム「王者栄耀(Honor of Kings)」に新登場するキャラクターのイメージソング「The Road of Glory」を久石譲氏が作曲。 

画像
▲ コラボ宣伝ポスター(王者栄耀のwechat公式アカウントより)

本人は王者栄耀による公式インタビューにて「ピュアな、イノセントな主人公が段々成長していく過程を描く音楽を作ろうと思いました」と曲への思い入れについて語った。

ジブリの音楽を手掛けてきた久石譲氏は中国でも広く支持されており、今回のコラボは現地のファンを沸かせた。

王者栄耀

2015年にテンセントよりリリースされた本対戦ゲームは中国で絶大な人気を誇っている。

米調査会社のSensor Towerによると、今年6月のスマホゲーム売上高世界ランキングでは王者栄耀がトップに鎮座。

王者栄耀はオフライン事業にも着手しており、以前では北京・ユニバーサル・スタジオとコラボしたイベントを開催した。

ロレアル × 黒猫警部

フランス化粧品大手の「ロレアル(L’Oréal)」が中国の国民的アニメ「黒猫警部(MR.BLACK)」とコラボしたメイクキープミストの限定ギフトボックスを打ち出した。

画像
▲ 限定ギフトボックス(ロレアルRED公式アカウントより)

また、同社は広告に現地の俳優を起用し、SNS上で宣伝することで拡散効果を狙った。

黒猫警部は80後(80年後生まれ)や90後(90年後生まれ)の中国人にとっては幼少期の思い出であり、今の若い世代にも知名度が浸透している名作のため、ネット上では懐かしむ声が続出した。

ロレアル

1996年に中国進出してから、その事業拡大に尽力してきた。現地のコスメ業界ではでは広く支持されており、今年の大型ECセールスイベント「618」ではコスメブランドの売り上げランキング1位を獲得していた。

黒猫警部

1957年に設立された歴史あるアニメ制作会社「上海美術映画製作所」より作られたアニメ。主人公の黒猫警部が謎の事件を解き明かし、犯人を追い詰めるというものだ。作画や音楽、ストーリーの完成度は高く、1984年に放送されて以来現地の人々から愛されてきた。

ラッキン × INTO YOU

中国コーヒーチェーン大手の「ラッキンコーヒー(Luckin Coffee)」と若手コスメブランドの「INTO YOU」がコラボし、リップグロスとインスタントコーヒーのギフトボックスをネットユーザーにプレゼントしていた。

画像
▲ ギフトボックス(INTO YOUのweibo公式アカウントより)

リップグロスはピーチ&ライチフレーバー、コーヒーは花やフルーツ味とテーマの夏が伝わってくる。また、色もカラフルであり南国のトロピカルを連想させる。

さらに、期間限定で成都のショッピングモールにてポップアップストアをオープンした。

業界を跨いだ異色のコラボとなり、色鮮やかなプレゼントは人々の関心を一気に惹きつけることになった。

ラッキン

中国コーヒーチェーン市場の王者であるスターバックスを脅かすポテンシャルを秘めた強敵とも言われているラッキン。かつては粉飾決算により、米国株式市場からの上場廃止を余儀なくされ、経営ピンチにまで陥っていた。

しかし、最近では債務整理を進め、価格調整やヒット商品への注力により、事業は好調を見せていた。

INTO YOU

2019年に設立された中国のコスメブランド。主にリップグロスやアイシャドーなどを取り扱っている。

特徴としてはユースとファッショナブルを売りとしており、若い女性をターゲットとしている。SNS上での評判は高く、今年の618では売り上げ5,000万元(約10億円)近くを達成し、前年同期比314%と大幅に伸びた。

NOC须尽歓 × 紫禁城

中国アイスクリームブランドの「须尽歓」が紫禁城とコラボし、中華風の扇子をモチーフとした限定模様のアイスを打ち出した。

画像
▲ 扇子をモチーフとした中華風の彫刻アイス(NOC须尽歓weibo公式アカウントより)

最近、こうした彫刻が施されたアイスは写真映えするため、REDなどのSNS上で人気を寄せていた。特に中国の歴史的な建築物や桜をモチーフとしたアイスなどが話題となっていた。

NOC须尽歓

中国牛乳メーカー大手の「伊利(yili)」傘下の高級アイスブランド。中華風のデザインをしたアイスが特徴であり、以前にも同じ扇子の彫刻が施されたアイスを打ち出したことがある。