最近、中国の大人気書店「言幾又」の閉店ラッシュが続き、かつての60店舗から3店舗にまで激減したことが話題になった。同書店はSNS映えする内装にカフェスペースが設けられており、いわゆるバズ狙いの「網紅書店」である。
閉店ラッシュの背後にいったい何があったのだろうか?
コロナ禍で資金繰り悪化
言幾又は2014年に設立されたブランドであり、カフェに雑貨などのスペースが併設された新スタイルの書店だ。日本の「蔦屋書店」が一番イメージとして近いだろう。
設立から瞬く間に注目を集め、合計で2億元(約40億円)もの資金調達に成功していた。
しかし、急成長の反面に収益難が同社を悩ませていた。中国ではネット通販と電子書籍が普及しており、紙媒体の書籍を買うにしても大半の人はネット上で購入している。中国の市場調査会社「北京開巻」によると、2021年の時点で中国書籍市場ではオンライン購入が8割近くを占めていた。
空間作りを重視する言幾又が1.4億元(約27億円)という巨額を投じ、2018年にオープンした西安の大型店舗も2年立たずして閉店となった。
また、2019年年末から始まったコロナ禍の打撃により、言幾又の資金繰りは悪化していた。その結果、サプライヤーや従業員への支払いが滞っているなどの問題が続出した。
“空間”を切り売りする書店の未来
中国ではネット通販の急激な成長により、オフラインにおける書店の生存が年々難しくなっている。
中国出版協会によると、2022年上半期では中国書籍市場規模のうち、実店舗の規模が前年同期比40%減少していた。しかし、反対にネットショップの規模は前年同期比6%上昇していた。中でもDouyin(中国版TikTok)を代表とするショートビデオプラットフォームを利用した書籍販売の規模が前年同期比60%増加と顕著である。
そのため、言幾又や鐘書閣のように美しい内装で消費者を惹きつけるスタイルの「網紅書店」が現れたが、収益化に成功しているとは言い難い。
ネット通販の脅威がある中で、いかに消費者に足を運ばせた上で、本の購入やカフェの利用などにつなげることができるかが網紅書店の生存に関わっている。