トップライバーのAustinが復活
タオバオ(淘宝)で6,500万人のフォロワーを持つ中国No.1ライバー、「口紅王子」ことAustin(李佳琦)が3ヶ月半ぶりに復活した。
Austinがライブ配信を中止されたのは、今年6月のことである。ライブ配信で戦車の形をしたケーキを画面に映した後、配信が中断。それ以後、ほぼ毎日行われていたライブ配信が停止となった。理由については、天安門事件を暗示したとして、政府の検閲に引っかかったと言われている。
当時この1件は、中国ライブコマース業界を震わす出来事となった。もちろんAustinがトップライバーだったということもあるが、ちょうどこの事件の半年前にもう1人のトップ級ライバーが脱税で巨額な罰金を課され、ネットから姿を消したばかりだったからである。
そして今回Austinの復活に、ファンから「やっと帰ってきた!」、「お久しぶりです」と応援の声が絶えず送られた。ライブ配信初日の累計視聴者数は6,231万人を達成し、彼の人気と経済効果は3ヶ月半がたった今も変わらないようだ。
ただ、放送事故を経て、Austinは今回のライブ配信において何度も「理性的に消費しよう」とファンに呼びかけるなど、以前よりも慎重な一面を見せている。
タオバオライバー3人の転落により、業界の勢力図が急変
ようやく復活したものの、Austinがいたライブコマース業界ではすでに大きな変化が起きている。
1年前の618セール(独身の日に次ぐECセールイベント)では、ライバー売上ランキングにタオバオライブ所属のviya(薇娅)、Austin(李佳琦)、Cherie(雪梨)がトップ3位を獲得。この時はDouyin(Tik Tok中国版)やkuaishou(快手)所属のライバーと圧倒的差を付け、絶対的な影響力を持っていた。
しかし1年後の2022年、この3人は何らかの事件で(viyaとCherieは脱税事件で配信を中止)一夜にしてその座から転落。それ以降、トップ級のライバーは世に出ていないものの、3人の不在により、タオバオライブがライバルのdouyinやkuaishouに追い越されることになった。
絶対的な地位を持つトップライバーはこれから誕生できるか?
中国ライブコマース業界を振り返ってみると、2019年から急成長し、次々と驚愕的な売上を打ち出したことで、荒稼ぎの業界と言われた。
しかし、2021年から中国政府がインフルエンサーの脱税の取り締まりを強化し、数多くのライバーが脱税したとして摘発。トップ級のライバーほど、その風当たりが強かったことは容易に想像できるだろう。
また、Austinやviyaがブランドと交渉し、「最安価格」を武器に大勢のファンを集めたことで、ライバー・ブランド・プラットフォームとの3者関係において、トップライバーが主導権を握る存在となっていた。
こうした状況からの脱税摘発。トップライバーの転落は、まさに今までのライバー主導である3者関係を崩す出来事となった。これを受け、フラットフォームもトップ級ライバーの依存から脱却するため、現在は中級レベルのライバー育成に注力しているようだ。
中国のライブコマース業界は急成長を経て、今は成長安定期に突入した。今後、新しいライバーが絶えず誕生しても、影響力という面で第二のAustinやviyaと呼ばれる存在になるのはもう難しいのかもしれない。
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