中国代表コスメであるPerfect Diaryが失速

Perfect Diary(パーフェクトダイアリー)は、創業してわずか2年で欧米大手ブランド抑え、中国最大ECイベント・ダブル11(独身の日)のメイクアップランキング1位に輝いた中国新興コスメである。この業績は海外勢の独壇場となっていた中国コスメ市場に大きな衝撃を与えた。

同ブランドが成功を収めた背景として、お手頃価格でSNS映えするアイシャドウや口紅といった特徴に加え、KOLマーケティングへの注力が挙げられる。また、有名なIPとのコラボを積極的に展開し、次々と話題を作り出したことも流行に敏感な若い女性を惹きつけ、成功した要因だろう。このようにして、運営会社のYATSENは2021年に米市場への上場を果たしている。

▲2019年ダブル11と2022年618のTmallメイクアップブランド売上トップ10(筆者より作成)

しかし、そんなPerfect Diaryも今年の618セールイベントでは、Tmallのメイクアップメーカー売上トップ10から姿を消した。

成長が早いと勢いを失うことも早いとは、誰も予想できなかっただろう。

マーケティングに注力し、ブランド力の確立が課題に

▲Perfect Diary運営会社の売上高と伸び率の推移 (公開資料を基に筆者作成)
▲Perfect DiaryのタオバオとTmallにおけるGMVと伸び率推移(出典:国金証券)

現在、中国のコスメ市場はどうなっているのだろうか。

まずPerfect Diaryの売上推移を見てみると、運営会社のYATSENは2021年Q3から売上の伸び率が6%にまで減少。さらにQ4はマイナス成長に転換し、今年のQ2まで売上はマイナス成長が続いている。

Perfect Diaryのタオバオと天猫におけるGMV(取引額)も2021年下半期から今年の9月までマイナス成長が続いる。

また、業績の低迷に伴い、同社の株価も値下がりし、時価総額は2021年のピーク時から約9割も減少している。

このPerfect Diaryが売上低迷に陥った原因を調査してみると、ロイヤリティの低さが課題として見えてきた。

そもそも中国化粧品市場はEC化率が高く、新興ブランドはオンラインチャンネルの開拓を優先するのが主流であった。本来ブランドとして行うべき商品開発を後回しにし、オンラインマーケティングにリソースを投入。それで売上が上昇した一方で、今になって顧客ロイヤリティの低さが課題となっているようだ。

実際にPerfect Diaryのマーケティング費用は売上の48.2%(2018年)から68.6%(2021年)に引き上げているが、それでも売上成長の鈍化が止まらない。ブランド力の弱さがここにきて長期的な成長の足かせになっている。

打開策として、同社のCEOは2021年末から事業を見直し、商品力とブランド力の強化に取り込むことを発表。さらにコスメ分野からスキンケア分野への事業転換を決定したが、果たして挽回は見込めるだろうか。

現在のスキンケア市場を見てみよう。

スキンケア分野ではWINONA、PROYAの成長が目立つ

マスクをつけることが人々の日常となった現在、メイクアップブランドは苦境に立たされている。その一方で着実に成長を遂げている市場、それがスキンケア市場である。

その中でも特に国産ブランドのWINONA(薇诺娜)とPROYA(珀莱雅)が飛躍的に成長している。

この鍵として、中国では近年、肌の悩みを改善する機能のある成分を含んだスキンケア商品、いわゆる「機能性スキンケア」の販売が好調である

敏感肌をターゲットに商品開発するWINONA、深海の天然成分に着目してブランドを展開するPROYAの2021年のGMVは、それぞれ70.3%と54.6%成長。

▲WINONAのタオバオ・TmallにおけるGMVと伸び率推移
(出典:国金証券)

コスメ分野のPerfect Diaryとは対照的にWINONAの今年9月のGMVは20%の伸び率を記録した。

かつて急成長を遂げたPerfect Diaryはランキング上位から転落したが、商品開発力の高いWINONAとPROYAは近年スキンケアのトップ10にランクイン。中国コスメの新しい代表格となっている。

中国コスメは試行錯誤する中でマーケティングとスピード重視から、商品力とブランド力を磨くことに重点を転換し、これが今生き残るための戦略となったようだ。

海外勢は比較的安定したシェアを確保しているが、中国コスメ市場は常に競争が激しく、現地の新しいブランドが目まぐるしく入れ替わっている。今後も中国コスメ市場のトレンド、そして各メーカーの最新動向に着目してきたい。

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