中国EC祭典である独身の日(ダブルイレブン、双十一)セールイベントは今年で14年目の開催を迎えた。毎年驚愕な流通額を叩き出してきたこの国民的イベントは、まさに中国人の消費力を反映しているとして、日本では「爆買い」の象徴と見られていた。
しかし、そんな独身の日にも異変が起きているようだ。長引くゼロコロナ政策の影響などで経済が低迷し、消費の冷え込みを受けたことで、今年の独身の日の売上は低迷している。
中国で最も活気のあるECイベントだった独身の日に何が起きたのか、現地メディアが公開したデータを基に、カテゴリ別の売上から消費動向などを分析していく。
EC大手2社は売上を公表せず
例年、アリババとJD(京東)はイベント後に競って取引額(売上)を公開していたが、今回アリババは「前年実績並みだった」と発表。京東も「昨年を上回った」とだけ発表し、具体的な金額の公開を控えた。
これは政府のIT企業規制に対する配慮だとの見方もあるが、それ以前に個人消費の低迷、そしてEC市場の伸び率が鈍化する中で、EC大手が売上の成長を追求しなくなったとも言える。
さらに中国郵便局によると、11月1日から11日までの11日間、全国宅配企業の宅配便処理件数は前年同期より10.6%減少し、11月11日当日は前年比21%減少。このように物流量の低下からも売上が低迷していることは間違いないようだ。
ただ、中国経済が減速し、個人消費が冷え込んでいる状況を加味すると、アリババが発表した「前年実績並み」もまだ良い業績と言えるだろう。
好調続きのライブコマース
アリババとJDは売上データを非公表にしたが、現地の市場調査会社星図によると、アリババ、JD、pinduoduo(拼多多)を含む、伝統的な総合ECプラットフォームの売上は9,340億元(約18兆5,120億円)で、前年比2.9%微増している。アリババが「前年比横ばい」と発表したことを考えると、この数字は嘘ではなさそうだ。
総合ECプラットフォームが伸び悩む一方、Douyinを含むライブコマースプラットフォームの売上は、1,814億元(約3兆5,950億円)で前年比146%増加。売上規模では、まだまだアリババやJDらが絶対的な優位性を持つものの、ライブコマースが中国EC市場を牽引する存在であることがわかる
独身の日のセール期間は各社によって異なるが、大体10月末から予約販売をスタートし、決済を11月の1~3日と11日の2回に分けて実施している。
10月31日から11月3日までのDouyinとTmall、各カテゴリ伸び率を比較すると、Tmallはヘアケアでは20%以上の成長を果たしたが、アパレルや化粧品といった従来強みとしていたカテゴリはマイナス成長に。
一方、Douyinはアパレル、化粧品は高い伸び率を維持。特に美容機器の売上は前年比229%増加しており、今やライブコマースを通じた購入が主流であることを裏付けている。
また、ライバー別の売上ランキングでは、タオバオのトップライバーAustinは336億元(約6,640億円)という桁外れの売上を叩き出し、2位と大きな差をつけた。
Austinは今年6月に製品の宣伝中に政治的な地雷を踏んだとして配信を中止。トップライバーからの転落が懸念されたが、独身の日を目前に見事復活を果たした。今回の売上を見ると、Austinという存在は依然としてファンから支持を得ているようだ。
カテゴリ別売上から見る消費動向
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