中国IT業界はかつて急成長を遂げてきたが、アリババやテンセントの大規模リストラの噂により、業界が揺れている。ここ1年間、中国IT企業を巡るリストラの報道が途絶えず、9割以上カットするなど、過激なリストラも噂されたが、実際はどうなのか。
今回、企業の実際の従業員数の変化、そして現地メディアの報道を基に中国IT業界のリストラ事情を探った。
IT企業のリストラはここ1年間、ネットで拡散され話題になったが、実際のところ、2019年の段階からすでに中国IT企業で人員カットが行われていた痕跡がある。当時シェア自転車大手のofoは資金繰り悪化に陥り、人員カットを余儀なくされた。
振り返ってみると、ofoは中国IT企業の成長と転落の過程を反映したと言えそうだ。黒字化よりも、とにかく低価格で市場シェアを獲得することを最優先し、事業の拡大とともに増員。それを繰り返した結果、収益化できず経営危機になった時にはすでに人員カットをせざるを得ない状態であった。
その後、中国政府のIT規制がさらに追い討ちをかけ、2022年にはアリババ、テンセントなどの大手が相次いで人員をカット。このリストラ騒動は、業界に大きな衝撃を与えたのは言うまでもない。
下記、2022年リストラを報道された企業のリストと実際の従業員数変化である。
■アリババ
全体の30%をカットしたと報じられていたが、2022年9月末時点の従業員数は24万人と、実際には2021年12月末時点の約6%に当たる1万5,000人が減少。30%はあくまでも噂であり、事実とは異なるようだ。
また、人員カットの部門分布をみると、フーマー、コミュニティEC、eleme、Fliggy(旅行)などの部門で人員カットを行っており、コア事業であるEC、物流、クラウド事業は対象外となっている。これは事業の多元化により膨張していたコストの削減や、コア事業へリソースを集中させるためだと考えられる。
■テンセント
2022年の3月にPCG (プラットフォームおよびコンテンツ事業)、CSIG (クラウドとスマート化事業)を中心に人員をカットし、リストラ人数は全体の10%~30%にあたると噂れた。さらに5月には、収益の柱であるゲーム事業にもリストラを展開し、10%の人員カットが報じられた。
しかし、実際は2022年9月時点での従業員数は2021年12月の3%減少に留まっており、これもまた誇張された報道であったようだ。
■バイドゥ
過去数年、新事業に積極的なイメージがあったが、これらの新事業がリストラの対象に。ゲーム、ライブ配信、教育部門などを中心にリストラを行ったと報じられた。
■バイトダンス
速いスピードで世界最大のユニコーン企業にまで成長したバイトダンス社のリストラが話題となっている。関連報道によると、頭条、Tik Tok、douyin(Tik Tok中国版)、飛書(海外版:lark)など、複数の事業で全体の10%に当たる人員をカット。以前にも教育やゲームなど、比較的新しい事業における人員カットを行っていたが、今ではコア事業もリストラの対象に。
CEOの梁汝波氏は、今後の方針について「会社の売上成長が鈍化しており、今後も「去肥增瘦(ぜい肉を落とす)」を継続する」と内部会議で表明した。
■京東(JD)
上記4社がリストラを展開する一方、一部の事業で人員カットはしているものの、全体的には従業員数が増加している企業も存在する。
その筆頭に立つのがEC大手の京東(JD)である。中国EC市場が鈍化する中、比較的に高い成長率を保ってきたEC大手の京東(JD)は、2022年の9月までに約7万人増加。しかし、それでも強い危機感を抱えており、上層部の減給を行うなどコスト削減の措置をとっている。
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中国のインターネット普及率が上昇したことで、ネット利用者の成長が頭打ちになりつつある。かつてのように低価格で市場シェアを獲得し、事業を拡大していく戦略は通用せず、人員カットやコア事業への回帰が行われている状況だ。
しばらくの間、中国IT企業のリストラや事業縮小の動きが続きそうだが、中国政府は2022年末からIT規制の態度を一変し、IT企業の合法的経営、雇用創出をサポートすると発表。
少なくとも二年以上続いた政府によるIT規制逆風の終結が見えてきたと言えるだろう。これにより、IT業界は元気を取り戻せるか。今後も中国IT業界の最新動向を追って行きたい。
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