中国の語学・文学雑誌「咬文嚼字」より読者からの募集、ネットでの投票、専門家の選考などを経て、2022年度の中国流行語トップ10が選出された。同雑誌は2008年から毎年流行語トップ10を発表しており、その年の政治・経済・トレンド・トピックなどに関連するキーワードを選出している。

チャイトピは2022年度の流行語トップ10を翻訳し、解説を加えてご紹介したいと思います。

原文はこちら:

https://baijiahao.baidu.com/s?id=1753261270445086648&wfr=spider&for=pc

大白(白い防護服を着た作業員)

元々はディズニー映画「ベイマックス」の同名キャラクターの中国名であるが、今ではコロナ対策で真っ白な防護服を着た医療スタッフやボランティアの人々などを指すようになった。

▲ PCR検査中の大白(チャイトピより撮影)

中国では昨年12月よりコロナ規制を全面的に緩和し、実質上ゼロコロナからウィズコロナへと舵を切った。これにより、役目を終えた大白たちは今後減り続けると思われる。

烟火气(活気)

中国の古文からきた単語であり、本来は「食べ物を焼く、煮る時の匂い」を指したものだが、現在では「生気と活気に満ちあふれた日常」を表現する場合に使われることが多い。

2022年ではロックダウンなどのコロナ規制による打撃で個人消費に落ち込みが見られた。景気低下が強まる中で当局は経済回復に着手し、その代名詞として「烟火气」を強調した。その一環として、上海など一部の地方政府では露店営業への規制を緩和し、夜間経済に注力するなど消費促進を目指した。

天花板(トップ、頂点)

「天花板」は中国語で「天井」を指すが、さらに「トップ」「頂点」といった意味へと派生した。こうした意味の広がりは英語から来ているという見方がある。

使用例としては社交スキルが非常に高いことを「社交天花板」、バスケやサッカーの強いフォワード選手を「前峰天花板」などとある能力がずば抜けている、ある分野における最高峰であることを指す際に使われている。

 拿捏(コントロールする)

「手で物をつかむ・つまむ」ことを意味し、「拿捏时机(タイミングをつかむ)」など物事を掌握・コントロールすることを指す際にも使われる。

「拿捏了(掌握した、把握した)」と書かれた中国版スタンプが一時期バズったことにより、様々な場面で「拿捏」が使われるようになった。物事だけでなく、「誰かをコントロールする」や「雰囲気をつかむ」など、活用範囲は広い。

▲ 「拿捏了」の中国版スタンプ(咬文嚼字より)

雪糕刺客(アイスクリームアサシン)

「雪糕刺客」は造語であり、コンビニなどのアイスコーナーで廉価アイスに紛れている高額アイスのことを指している。

昨年の夏ごろ、中国ではアイスクリームに値札がなく、安いと思ったものが実は高かったとのSNS投稿に多くの人が共感した。レジで気付いてもメンツを気にして購入してしまうため、高級アイスをひっそりと攻撃をしかけるアサシンに例えた。

話題は徐々にある中国の高級アイスブランドへの批判へとエスカレートし、果物などほかの分野にも飛び火していた。

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精神内耗(精神エネルギーの浪費)

「内耗」とは字の如く、内部の消耗を意味する単語であり、エネルギーの無駄遣いをも指すようになった。

昨年の7月に、あるネットユーザーが「逆境の中で生きるおじを見て前向きになれた」とされる動画がSNSで大きな反響を呼び、タイトルにある「精神内耗」もこれを受けて注目を集めた。競争社会の中でストレスを抱えながら生きる中国の若者たちから共感を得て流行した。

 沉浸式(没入型)

近年、中国では「視覚」「聴覚」「嗅覚」など五感を通した、没入感のある体験が人気を見せている。その種類は多岐に渡り、AR(拡張現実)やVR(仮想現実)などのデジタル技術を利用したものもある。中国国民の消費力が高まるにつれて、より新鮮感が味わえるサービスを求めるようになったといえるでしょう。

▲ 武漢にあるARを活用したストリート(中国のSNSより)

SNS上でもBGMなどの音楽やナレーションを排した「沉浸式视频(没入型動画)」が大きくバズった。中でも代表的なものは化粧系動画であり、シートマスクを広げる音や保湿クリームを顔に塗る繊細な音を通して、まるで自分も化粧しているかのような心地よさを感じるようだ。

踔厉奋发、勇毅前行(精神を奮い立たせ、勇ましく前進する)

当局のプロパガンダのスローガンとして、2022年では同フレーズが度々唱えられてきた。様々な文章やメディア報道でよく登場するフレーズであり、10月に開催された党大会でも再び強調された。

由来としては唐代の文人·韓愈が作った碑文からきたものとされている。

中国式现代化(中国式近代化)

2021年から当局が掲げてきた社会主義近代化のスローガン。中国の国情に沿った中国式な社会の近代化を主張しており、理念の中には2022年でも多くの企業が注目していた「共同富裕」などが含まれている。

 新赛道(ニューコース)

「赛道」はレースなどスピードを競うコースのことであり、「新赛道」とは先進的な技術をベースとした巨大な市場が見込まれている、細分化産業や業界分野を指している。主にテクノロジー関連で使われることが多いキーワード。

代表例としてEV(電気自動車)や5G、人工知能などがあり、これらの先端技術分野で他国よりも優位に立とうと中国は力を入れている。