2022年、中国の人口が61年ぶりに減少という衝撃的なデータが発表され、中国が本格的に人口減の時代に突入した。
また、総人口減少のほか、結婚率の低下も一つの社会問題になっている。2021年、中国の初婚人数は1985年以来、最も低い数値となり、独身者が2億人を超過。
家庭へのお金の負担がないことから、独身者の貯金意識は比較的低く、この独身者による巨大消費の新勢力が、一人ごはんや、一人旅、小型家電の購入といった、新しい消費を生み出している。

特に飲食業界では、以前から「一人ごはん」関連のサービスが次々と話題に上がっている。例えば、火鍋チェーン「海底撈」の1名で来店した方が寂しさを感じないよう、大きなぬいぐるみを目の前の空席に座らせるという「神サービス」や、1人用の席を設け、周囲と関わらずに食事ができる「おひとり様レストラン」などである。
こうした「おひとりさま」の風潮を受け、最近ではおひとりさま向けの旅行商品、不動産業界ではおひとりさま向けのコンパクトマンションが登場。中国EC大手のJD(京東)では、2021年「一人ごはん」関連の商品数が前年の2倍に。Tik Tok中国版のDouyinでは、一人用の小容量調味料や、火鍋の素が大人気となり、「一人ごはん」関連動画の再生回数も12億回を超えるほどだ。
しかし、一人ごはんが人気を見せる一方で、本来の量を「一人向け」として減らしたり、一人様食堂では複数人席の横にできた狭いスペースに一人用の席を設けたりするなど、サービスの質が問題視されているのも事実である。
加えて、中国の現状を見ると、ファストフードや中国で発達しているデリバリーによって、「一人ごはん」のニーズが満たされ、日本のような「おひとりさま食堂」が流行するには、まだ時間が必要だろう。
また、独身者の増加に伴い、小型家電の人気が増したことで、それに関連する新しい企業が登場し、その中で新興メーカー「小熊電器(Bear Electric)」はその代表といえるだろう。同社はコンパクトで機能的な製品を展開して市場シェアを伸ばし、2019年に上場を果たしただけでなく、中国家電市場は成長が鈍化しているにもかかわらず、同社の2022年の上半期では13%の増収を達成した。

世界各国の1世帯あたりの小型家電所有台数を見てみると、米国が31.5台で世界1位、イギリス、オーストラリア、ドイツ、フランスの保有台数は20~30台となっている。日本は16.5台で6位にランクイン。それに比べ、中国は9.5台と少ないため、まだまだ成長の余地があると言えるだろう。おひとりさま経済の成長を追い風に、小型家電分野のさらなる成長が期待できそうだ。
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少子高齢化、結婚率の低下が加速する中国では、「おひとりさま経済」が盛んな日本を参考にすることが多い。特に「一人ごはん」関連の商品・サービスが成熟している日本を手本として現地メディアが取り上げている。
サービスの質の問題など、まだまだ解決しなければならないこともあるが、中国の「おひとりさま経済」は今後も成長していき、おひとりさま需要がより多くの業界で拡大していくだろう。これからどんなサービスが登場するのか、業界の動向を引き続き追っていきたい。
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