今、ChatGPTが世界中で話題になっている。もちろん、中国も例外ではない。

ただ、中国でChatGPTを利用するには、海外の電話番号による登録とVPNが必要なため、基本的には利用できない状態である。しかし、それでもタオバオなどのECサイトでアカウントを販売するビジネスが誕生するほど、「ChatGPT熱」がヒートアップしている。

この「ChatGPT熱」に対し、中国の一般人の間では、ChatGPTが学業や仕事の効率向上に利用できると歓迎する人もいれば、自分の生業である会計士、弁護士、メディアなどの仕事がいずれロボットに奪われると懸念する人もいる。

ここで、中国の関連企業はどう反応しているか見ていきたい。

中国テック企業が開発を急ぐ

まず、ChatGPTの誕生に最も脅威を感じているのは検索エンジンだろう。ユーザーの質問に対し、関連リンクを並べた検索結果を表示するだけなのに比べ、綺麗な回答をすぐにしてくれるChatGPTは、従来の検索エンジンに大きな変革をもたらす可能性が高い。

そのChatGPTへの対抗措置として、中国検索エンジン最大手のバイドゥは3月に文心一言(ERNIE Bot)という対話形ロボットをローンチする予定だと発表。同じく検索エンジンサービスを展開しているテック会社「360」も関連商品の開発を急いでいる。

▲ネットで公開されているアリババの対話型ロボットの会話キャプチャー(wechatより)

他にも、アリババによる対話型ロボットの内部テストや、ファーウェイ、テンセントのマン・マシン対話関連特許の公開。テック企業がこぞって動き出している状況だ。

振り返ると、中国は2010年前後からAIの風潮が蔓延し、コンピュータビジョン、音声認識、機械学習アルゴリズムの3つの分野において、センスタイム(商湯科技)、メグビー(旷世科技)、アイフライテック(科大讯飞)などの会社が成長してきた。

しかし、AI技術のビジネス展開という意味でいうと、中国ではまだまだ初期段階である。そのため、スタートアップ企業は生き残りをかけ必死にもがく必要があったが、このChatGPTブームで投資家からまた注目を浴びるようになった。

AIと関連する会社の株価が急騰、便乗する企業も

ChatGPTのブームにより、真っ先に変化が現れたのは株市場だ。AI開発会社の「汉王科技」、「云从科技」、「海天瑞声」は、どの企業も赤字経営や業績低迷など、暗雲が漂っていたが、株価が大幅急騰した。

他にも、中国高級品ECプラットフォームの寺库(SECOO)がChatGPT技術を利用して、高級品関連のコンテンツを豊富にすることを発表。その後、近年業績が低迷していた同社の株価は一時的に124%高騰した。

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ChatGPTの中国での反応は、まさにメタバースやNFTブームの時と同じような光景である。ただ、メタバースのような未来世界のコンセプトと比べ、ChatGPTはAIの無限の可能性を誰もが手が届くような形で見せ、さらにそのブームに火をつけたように思う。

また、AI分野は米中で競っている状態であったため、今回ChatGPTの誕生は中国のテック企業にとって、大きな刺激になったことに違いない。

実際にAI技術に止まらず、AI+EC、AI+工業などのAI活用も以前より現実味を帯びるようになり、すでに各分野における研究開発が開始されている。

これからAI分野はどう発展していくのか、今後の展開が楽しみである。

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