2022年中国高級品市場がマイナス成長

ここ数年、中国の高級品市場は高い成長を維持しており、世界市場がコロナ禍で低迷に陥った2020年においても、中国は感染拡大を防げたことでプラス成長を果たしてきた。

しかし、そんな中国市場に異変が起きている。ベイン・アンド・カンパニーの報告書によると、中国高級品市場は過去5年間、絶えず成長していたが、ゼロコロナ政策や経済減速で消費市場が低迷。これにより、2022年の市場規模は前年比10%縮小した。

▲中国高級品市場における、カテゴリ別の前年比伸び率(出典:ベイン)

高級品の全カテゴリーが影響を受けたが、特に腕時計は20%~25%と、最も販売が減少。ファッション・ライフスタイルは15~20%、ジュエリー、革製品は10~15%減少した。また、ラグジュアリービューティーは6%減少したが、オンライン販売が普及していることもあり、最も減少幅の小さいカテゴリーとなった。

今後の見通しについて、同報告書では中国政府のゼロコロナ政策転換により、2023年は2021年の水準まで回復できる見通しだと分析している。

EC販売の割合が拡大

2022年はゼロコロナによる都市封鎖が起き、一部の実店舗はオンラインへの転換を余儀なくされた。この転換により、高級品市場全体はマイナス成長となっていたが、EC販売の成長は持続している。

▲中国高級品のオンラインの売上推移(出典:要客研究院)

中国高級消費市場を研究する「要客研究院」によると、2022年高級ブランド品の中国ECの売上は31%増加し、2,200億元に到達。EC販売が全体を占める割合は40%まで上昇した。

実際に中国ECプラットフォームもここ数年、高級品分野に注力し、国際ラグジュアリーブランドの出店を誘致。ブランド側も中国市場のポテンシャルに目をつけ、中国ECでの展開を拡大している。

最大のECサイトTmall(天猫)は2017年にLuxury Pavilion(天猫奢品)チャンネルを開設し、すでにBurberryやPrada、Giorgio Armaniなど、200以上の国際ラグジュアリーブランドが開店。

また、EC2位の京東(JD.com)での出店も増えており、2021年からLouis Vuitton、FENDI、Celineなどのブランドが店舗を開設。今年のバレンタインデー直前には、ティファニーも京東で旗艦店を開設した。

その他、これらラグジュアリーブランドがDouyin(中国版Tik Tok)やREDにも出店し、ライブコマースを積極的に展開するなど、新興プラットフォームへのリソース投入もトレンドとなっている。

中高収入層の増加による市場拡大が期待

▲2030年まで各国の中高収入層の増加数予測(出典:ベイン)

中国の中高収入層は2014年から2022年までで1.8億人増加しており、ベイン・アンド・カンパニーの予測では2030年までにさらに2.5億人増加する見込みである。インドの3,600万人や東南アジアの新興国家の2,700万と比べ、中国の富裕層の規模がどれだけ大きいか、一目瞭然である。

このデータを見る限り、人口減少に転じている中国よりも次の巨大市場となるインドや東南アジアの国に投資する傾向もあるが、富裕層の数に影響される高級品業界にとって中国は依然として魅力的な市場であると言えるだろう。

今後、国際高級品ブランドの中国市場での施策や、中国本土ブランドの成長による競争はどうなっていくのか。引き続き、注目していきたい。

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