映像製作会社・円谷プロダクション(以下、円谷プロ)、2022年4~12月におけるIP(知的財産)の商品化権許諾に伴う収益を示す中国MDライセンス収入は、前年同期比プラス313%と大幅な増加を見せた。

急成長する円谷プロの中国事業、その背景をチャイトピは探ってみたいと思います。

ウルトラマンが中国事業拡大のカギ

円谷プロの海外MDライセンス収入のうち、9割近くは中国市場が占めていた。まさに同社にとって中国は最大の海外市場である。

▲ 円谷フィールズホールディングスの決算を元にチャイトピより作成

特に昨年10~12月ではクリスマスや春節の商戦に備えた品揃えの拡充が功を奏し、「ウルトラマンカード」などウルトラマン関連の低価格帯商品の販売が大きく伸びていた。

ウルトラマン関連商品の販売が好調な理由について、以下の3つが考えられる。

①  ファン・ライセンシーの拡大

同社は中国市場で10年以上にわたり、ウルトラマンブランドの浸透に注力してきた。昨年7月には上海のオーシャンパーク「上海海昌海洋公園」で世界初のウルトラマンエリアがオープンし、現地で注目を集めていた。また、有名リゾート地の海南島で行われたウルトラマンのイベントでは、現場が多くの家族連れで埋め尽くされ、盛り上がりを見せていた。

こうした認知拡大に伴ってファンやライセンシーが拡大し、関連商品の販売につながっている。

②  現地流通網の構築・拡大

ウルトラマン関連商品の販売増加につながる二つ目の要素は流通網にある。円谷プロの中国事業が本格化した時期は2019年あたり、その頃から同社はトレーディングカード(以下トレカ)などの現地流通網構築に取りかかっていた。地域密着性にも重視し、玩具店や雑貨店、文具店など消費者との接点を増やした結果、流通拠点は中国全土約70万店にも及んだ。

▲ 上海にある文具店のレジ前に置かれている大量のウルトラマンカード(チャイトピより撮影)

ウルトラマンカードは特に現地の小学生らに大人気であり、実際に上海の小学校の近くにある文具店を訪れると、レジの前には種類様々なウルトラマンカードが目一杯置かれていた。昨年8月ごろには北京でウルトラマンカードに熱中する子どものために、200万元(約4000万円)を費やした北京の親も報道され、現地で話題になった。

ウルトラマンブランドの浸透が着々と進んでいる中で、こうした販売ネットワークの拡大は関連商品の販売増加にブーストをかけた。

③  中国IP市場の成長

近年の中国では企業・ブランドらが積極的にIPコラボを打ち出しており、IP市場全体に活気が見られる。特に現地でも多くのファンを有している日本IPとのコラボがメジャーであり、ウルトラマンも中国人気ケーキチェーン店「Holiland(好利来)」などの現地ブランドとのコラボを展開している。

中国市場で出回るIPライセンスを受けていない悪質な海賊版商品は企業・ブランドらにとって悩みの種だ。しかし、近年では中国当局による取り締まり強化、消費者の知的財産権保護に対する意識の高まりなどにより、そうした商品の生存空間は年々狭まっている。

これらの変化より中国市場におけるIPビジネスの環境が改善し、ウルトラマン関連商品の販売を後押しした。

今後について

円谷プロは今後も中国市場に注力し、ウルトラマンのポジションについては玩具以外にファッションや食品といった分野でも拡充していくと示した。

また、今年1月から上海の「ウルトラマンホテル」が試験営業を開始し、先日から映画「シン・ウルトラマン」も中国での配信がスタートした。ファンとライセンシーが増え続ける中国市場をとっかかりに、同社の海外事業のさらなる成長が期待できる。

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50年以上の歴史あるウルトラマンは、中国でも世代を超えて多くの人々から愛されており、人気に衰えは見えない。トレカにテーマエリア、イベント、ホテル、スマホゲームなどと現地でウルトラマン関連ビジネス展開の勢いもとどまるところを知らない。

いま、中国市場では「ウルトラマンブーム」が巻き起こっており、現地でウルトラマンビジネスがどのような変貌を遂げるかに注目していきたい。


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