昨年10~12月の中国EV市場ではテスラなどのメーカーによる値引き合戦が始まり、競争がさらに激化していた。一方で、日本にも進出しているBYDは高級ブランドを発表し、ハイエンド市場の展開に注力している。また、新興EVメーカーのNIO、Xpeng、Li Autoは新モデルの開発と海外市場への進出を加速させた。

以下、注目を集めている中国EVメーカー4社の2022年10~12月期決算をまとめました。

BYD

売上高:1,564億元(約3兆円) 前年比120%増加

純利益:73億元(約1,400億円) 前年比1114%増加

EV販売台数:683,440台 前年比157%増加

中国EVメーカー大手のBYD(比亜迪)は昨年3月からガソリン車の生産廃止を決行し、EV事業に専念してきた。今四半期では原材料価格の高騰によるコスト圧力が見られたものの、販売台数が急増したことで和らげられた。市場調査会社「カウンターポイント(Counterpoint)」によると、2022年10~12月における世界EV市場(PHEVを含む)シェアでは、BYDが競合のテスラを抑えて1位となった。

事業が好調を見せている中で、同社は昨年11月に高級車ブランド「仰望」を発表した。高級EV市場におけるシェアも拡大していくと思われる。

海外事業では、日本やドイツなどの市場に積極的に進出し、タイで初の海外工場を建設する予定。

新興EVメーカー3社

① NIO

売上高:161億元(約3,100億円) 前年比62%増加、市場予想を下回った

純損失:58億元(約1,100億円) 前年比168%拡大

納車台数:40,052台 前年比60%増加

売上高が競合のLi Autoに追い抜かれ、2022年では四半期ベースで初めて3社トップから転落した。また、車載電池コストや研究開発費などのコストが増加したことにより、赤字額は前年比で168%拡大した。

国内市場における競争が日々激しくなる中で、同社は新モデルの開発に力を入れ、海外市場での展開を加速させている。ヨーロッパ市場ではすでにノルウェーやドイツに進出しており、今年はさらに5カ国に進出する計画だ。

② Xpeng 

売上高:51億元(約970億円) 前年比40%減少、市場予想を下回った

純損失:24億元(約460億円) 前年より83%拡大

納車台数:22,204台 前年比47%減少

Xpengの売上高、納車台数はともに3社の中で最低となった。テスラなどEVメーカーにより繰り広げられる価格戦が背景にある。Xpengの主力モデル「P7」はテスラの「Model 3」に対抗する形で打ち出された製品のため、後者の値下げの影響を濃く受けた。

同社は新モデルの開発に注力しており、今年にはSUVの「G6」を打ち出す予定。今後について、同社は成長が見込める自動運転分野に注力すると示した。

③ Li Auto

売上高:177億元(約3,500億円) 前年比66%増加、市場予想を上回った

純利益:2.6億元(約50億円) 前年比13%減少

納車台数:46,319台 前年比32%増加

売上高では3社の中でトップの記録を残し、市場予想を上回る好成績を見せた。これを受けて、決算発表後に同社の株価は一時6%上昇した。一方で、コストの増加により純利益は前年比で減少した。

売上高の増加には同社の事業戦略が背景にある。これまではたった一つのモデルを武器に市場で成長を遂げてきたが、昨年下半期から「L9」「L8」「L7」と立て続けに三つのモデルを打ち出し、価格帯をさらに広げた。そうした拡充が功を奏したか、前四半期に比べて納車台数が大幅に増加した。