近年、「日本製だから」売れる時代は過ぎ去ったという話を中国市場でよく耳にする。

改革開放後は、パナソニックをはじめとする日系ブランドが破竹の勢いで中国市場においてシェアを拡大してきた。当時の「日本製」は「高品質」の代名詞と言っても過言ではなかった。

しかし、中国が世界2位の経済大国となった現在、国産ブランドと海外ブランドの競争が白熱化し、以前のように「日本ブランドだから売れる」は通じなくなっている。

中国市場において現在人気のある日本製品は以前とだいぶ異なっている。今回、この市場への進出を考えている日系ブランドの参考になるよう、「日本ブランド」の全盛期に人気があった日本製品と現在人気のある日本製品を比較していく。

全盛期に中国市場で人気のあった日本製品

1.家電

中国の改革開放後、現地ブランドの発展が遅れている中、日本ブランドは家電製品を武器にこの市場を打開。1990~2000年にピーク期を迎え、中国の冷蔵庫、洗濯機、テレビ、エアコンなどの市場シェア上位には日系ブランドが名を連ねた(国泰君安証券より)。

しかし、2000年以後、美的(midea)やハイアールなど中国メーカーが技術、資金の課題を克服し、存在感を高めてきた。それにより日系メーカーのシェアが奪われ、2012年のテレビ、洗濯機、エアコン、冷蔵庫分野でのシェアはそれぞれ23%、20%、12%、4%まで減少した。(CICCより)


2.自動車

自動車分野においても日系自動車の優位性は低下しており、2022年日本車の販売台数は前年比10.3%減の409.2万台で、市場シェアは20%を下回っている。(中国乘聯会より)

これはコロナによる経済的な影響もあるが、中国のガソリン車市場の縮小も一つの要因である。ガソリン車の技術において遅れをとっていた中国メーカーが電気化を機に市場を拡大し、日系メーカーに大きな打撃を与える結果となった。

3.デジタルカメラ

デジタルカメラ分野においては、キヤノンなどの日系ブランドが中国市場で優位性を保ってきたが、スマホの台頭によりデジカメの出荷量は世界的に見ても急速に減少している。中国市場も例外ではなく、デジカメの市場規模は減少しつつあり、キヤノンは生産スタートから32年の歴史がある中国珠海工場を閉鎖した。

中国市場で現在人気のある日本製品

中国税関と日本財務省貿易統計のデータを見てみると、2010年は中国の消費市場の拡大を機に日本乗用車や映像機器など、完成品の輸出が大きく増加した。

2022年には、自動車と部品による対中輸出額の全体を占める割合が8.4%まで降下したが、化粧品類の割合が2.4%、真珠や貴石、貴金属製品が1.9%、石けんや洗剤などが1.1%と、割合を拡大してきた。

このように中国消費者の間で人気のある日本製品は、ここ10数年の間に変わっていることがわかる。

1.化粧品

JETROによると、化粧品の分野における日本から中国への輸出は毎年増加しており、この10年間で10倍以上増加。2020年に中国が日本から輸入した化粧品は前年比30%以上増加し、約43億ドルに達し、韓国やフランス、アメリカなどの他の主要な供給国を超えた。

2.食品

農林水産物・食品の分野では、2021年の日本から中国への輸出額は2,224億円となり、中国が初めて最大の輸出相手国となった。2022年は2,738億円にのぼり、さらに記録を塗り替えている。特にウィスキー、日本酒、お菓子、ホタテ貝などが人気だ。

理由として、2022年RCEP協定が発効して以降、日本酒やホタテ貝の関税が大幅に下がったことに加え、中国で日本酒の有効的なプロモーション等が人気上昇に繋がったと考えられる。

▲2023年3月Tmall globalで検索ランキングトップ10の日本製品

直近では、中国ゼロコロナの解除に伴い、日本旅行が再開したことで、越境ECサイトTmall globalの日本製品の人気が上昇している。

検索数ランキングでは、山崎ウィスキー、ニンテンドースイッチのほか、モーラステープ、龍角散、ファンケル30代などが上位にランクイン。中国SNSでも関連投稿が多く見られ、日本の薬やサプリメントが訪日中国人の中で必ず買うべき商品の一つになっている。

他にも、日本で流行している新製品や、日本版の製品も中国消費者に注目されている。Sarayaの自動手指洗浄消毒器や、MIRAIAIRの携帯型空気清浄機が人気である。

さらに、中国のアウトドアブームにより、SHOEIやYAMAHAを代表とするヘルメット、DAIWAを代表する釣り用品も人気となっている。

中国市場戦略のポイントは?

現在中国市場で人気のある日本製品は、以下3点の特徴があると考える。

  • RCEP協定を追い風、または日本政府機関とメーカーによる強力なプロモーション
  • 中国SNSの拡散による人気上昇
  • 現地メーカーが比較的に遅れている分野

中国の消費者が「日本製だから」という理由で商品を購入する時代は過ぎ去ったが、RCEP協定を追い風にウィスキーやお菓子、または現地メーカーが比較的遅れているアウトドア用品などに関しては、まだまだ日本企業にチャンスがある。

時代の変化に順応し、中国消費者の嗜好に合わせた製品こそがこの市場を制する鍵となるだろう。     

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